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リーダーに求められるナラティブ・アプローチとは? 意味や実践方法を解説

2024年2月 5日更新

リーダーに求められるナラティブ・アプローチとは? 意味や実践方法を解説

多様性の進展とともに、組織の一体感を維持することが難しい職場が増えてきました。本稿では、「ナラティブ・アプローチ」という観点から、多様性と一体感の両立について考察いたします。

INDEX

ナラティブ・アプローチとは

「ナラティブ・アプローチ(narrative approach)」とは、1980年代から提唱されてきた臨床心理学のアプローチで、相談相手や患者の語る内容をもとに、相談者の解釈を専門家との対話を通して問題解決に進め解決を見出す方法です。現在では、臨床心理や医療のほか、キャリアコンサルティング、人材育成などの分野でも応用されるようになっています。

ナラティブ・アプローチが求められる背景 ダイバシティとDEI&B

昨今、個人の働き方や、職場を構成する従業員の属性等の多様性が増し、わが国においても遅まきながらダイバシティ経営が進展した感があります。
ダイバシティ経営の必要性が叫ばれるのは、多様な価値観・意見のぶつかり合いが新たなアイデアの生成、イノベーションの創出につながり、事業活動に活力を与えるからです。一方で、ダイバシティ経営だけを推し進め過ぎると遠心力が働き、組織と個人がばらばらになってしまうリスクをはらんでいます。
そこで、ダイバシティ経営のポジティブな効果を引き出しつつネガティブな側面を抑え込むために、DEI&B(Diversity,Equity,Inclusion and Belonging:多様性、公平性、包摂性、帰属意識)という概念が注目されるようになってきました。DEI&Bは、つまるところ組織が空中分解しないよう、求心力を高める考え方です。 そして、Belonging(ビロンギング)、つまり帰属意識を高めるのが、リーダーによるナラティブ・アプローチなのです。

参考記事:ダイバーシティの推進~人的資本経営を実践する│PHP人材開発

 

リーダーが発することばの重要性

組織の一体感を高める求心力になるのは、その組織のリーダーの発することばの力です。リーダーが、人の心に火を点けるような力のあることば(言霊・ことだま)を発することで、人と人、人と組織が繋がっていくのです。
かなり古い話で恐縮ですが、松下幸之助が自社の事業の真の使命を悟ったエピソードをご紹介しましょう。

昭和7(1932)年、ある宗教団体本部の見学をきっかけに、組織には使命感が必要であることに気づいた幸之助は、自社(松下電器(現パナソニックグループ))の使命について考えます。そして、人びとの生活に役立つ製品を安価に社会に供給することで世の中から貧困を撲滅するのが松下電器の使命だと定め、それを伝えるために大阪某所に従業員を集めました。
集まった従業員は、幸之助の語る話に耳を傾けているうちに心に火がつき、会場全体が興奮のるつぼとなったのです。この体験は、幸之助の信念を強化しました。以後、幸之助はことあるごとに会社の使命について熱く語るようになり、その都度、社内の士気と一体感が高まっていきました。

ある経営者が、「マネジメントの最大の武器はことばである」という持論を展開していますが、上記エピソードはまさしくリーダーのことばの力の重要性を示していると言えるでしょう。

リーダーに求められるナラティブ・アプローチ

リーダーが組織の求心力を高めるような力のあることばを発するためには、どうすればいいのでしょうか。その答えを一言で表現すれば、「自分の物語(ナラティブ)」を語ることです。ナラティブを語りながら問題解決を図ることをナラティブ・アプローチと言います。

「なぜ自分は、この仕事をしているのか」
「どういう時に仕事のやりがいや喜びを感じるか」
「この事業(組織)を将来、どのような姿にしたいと思っているか。なぜ、そう考えているか」
「理想実現のために、従業員(部下)のみなさんに何を期待しているか」

自分の思いや本音がこもったことばは人の心を動かすものです。そして、自らのナラティブの解像度を上げるためには、日々の内省を通じて自分と向き合うこと、思索する営みが大切になります。良きリーダーは、よき思索者なのです。
リーダーが発する、思いがこもったことばは、人と組織を動かし、多様性を高めながらも一体感のあるチームをつくり上げていくでしょう。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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