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「人間力」とは? リーダーが人間力を高めるための方法や研修を紹介

2022年3月24日更新

「人間力」とは? リーダーが人間力を高めるための方法や研修を紹介

人間力の強化が、人材開発のテーマとして重要性を増しています。人間力の高いリーダーになるためには、具体的に何をすればいいのか。高め方や企業研修の事例をご紹介します。

INDEX

リーダーに求められる「人間力」とは?

最近、「人間力強化」をテーマにした研修のご相談が増えています。人間力という抽象度の高い概念については、これまでもさまざまな定義がなされてきました(※1)が、本稿では、「人や組織を惹きつけ、動かす、対人影響力や行動力、発想力の総称」と定義づけたいと思います。

なぜ「人間力」が重要なのか。背景と理由

人間力強化が重要性を増すようになった背景には、次の3つの理由があるように思われます。

1.リーダーに求められる資質の変化

これまでは、経営成果を持続的に上げるために、MBAに代表されるような知識・理論を習得することが重視されてきました。ところが、変化の激しい環境下では、欧米流の分析主義的なアプローチが機能不全に陥ることが増えてきました。そこで、過去の成功体験や常識に捕らわれることなく現実を直視する「素直な心」や、人間の心の動きを理解しようという「肯定的な人間観」など、東洋思想的な概念が注目を集めるようになったのです。

2.人の心を動かす原動力

上司の指示命令は絶対という時代は終わりました。今や、地位や肩書からもたらされる権限だけで人を動かすことはできません。でも、そのことに気づかず「ボス型マネジメント」を続けているリーダーが少なくありません。メンバーが「あの人のためなら」という内発的動機で行動するためには、リーダーがもっている「使命感」や「人間的魅力」「思いやり」などがその力の源泉になるのです。

3.日本的経営の特長を見直す機運

企業のコンプライアンス違反や不祥事の続発など、倫理観の欠如が問題視される中、かつての日本的経営の良さが見直されるようになってきました。つまり、「何が正しいのか」「私たちの使命は何か」という一人ひとりの生き方・考え方が問われるようになってきたのです。

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「人間力」を構成する要素、キーワード

「人間力」を構成する要素、キーワード

人間力は、「人徳」と「熱意」の2つの要素で構成されています。人徳は、人を惹きつける人間的魅力のことで、静的なものです。一方の熱意は、人と組織を動かす人間的な迫力、底力であり、動的なものです。

人徳と熱意について、松下幸之助は以下のように述べています。

「人から慕われる徳があってこそ、その人のもつさまざまな力が十分に生き、人も喜んで動いてくれる」(※2)
「指導者は、こと熱意に関してはだれにも負けないものをもたなくてはならない。知識なり、才能なりにおいては、人に劣ってもよいが、熱意に関しては最高でなければならない」(※3)

ここでは、「人間力」のキーワードともいえる人徳と熱意についてご紹介していきましょう。

人徳~内発的動機で人が動くには?

松下幸之助は、徳の重要性について次のようにも述べています。

人間が人間を動かすのは、実際はなかなか容易なことではないのです。もちろん命令で動かすことはできますよ。たとえば、会社であれば、社長の命令、部長の命令といえばたいていの人はやるでしょうな。しかし、もしいやいややるのであれば何ごとでもうまくいくはずはありません。いつか破綻がきます。(中略)人から慕われる徳があってこそ、その人のもつさまざまな力が十分に生き、人も喜んで動いてくれるということではないでしょうか

『人生談義』(PHP研究所)

外側からの強制力で人を動かすのではなく、内側から湧き出る「内発的動機」で人を動かすためには、「この人のためなら」と思わせるような徳がリーダーには求められるのです。

では徳を高めるためには具体的にどうすればいいのでしょうか? その答えを中国古典に求めてみると、5つの観点からの自己研鑽が必要であるとされています。

  • 「謙」...謙虚さを保つ。人を見下さない。感謝の念をもつ
  • 「寛」...大きな度量をもつ。小さなことに目くじらをたてない
  • 「仁」...思いやりの心をもつ。相手の立場に立って発想する
  • 「信」...ウソをつかない。約束を守る。正しさに立脚した行動をとる
  • 「勤」...率先垂範。仕事を一所懸命やる。

中国古典では、こうした地道な取り組みを継続する努力によって、その人自身の内面が磨かれ、徳が高まると教えています。

熱意~リーダーの熱意が人の心に火をつける

熱意については、多くの経営者・学者がその重要性を強調しています。
京セラ・名誉会長の稲盛和夫氏は、かつてPHPゼミナール・特別講話において、指導者の条件について「はっきりした目的意識にもとづく『情熱、熱意、願望、夢、希望、意思』をもっていること」と明快に示していただきました。さらに、熱意とは「何としても俺はこうありたいという魂から自分を駆り立てるようなもの」であるとも述べられました。
また、米国のコンサルティング会社『ロア・インターナショナル』の創業者テリー・ベーコンは、リーダーの影響力に関する調査を行い、「熱意に満ちたリーダーは平均的なリーダーより十倍も影響力がある」ことを明らかにしました。
多くの有識者が異口同音に述べているように、リーダーの熱意が、人の心に火をつけ、組織を動かすエネルギーとなるのです。

熱意を高めるためには

熱意を高めるためには、自分自身の使命・願望・可能性について、深く考え抜く営みが欠かせません。

「自分は何のために生まれてきたのか?」
「リーダーとして何をすべきなのか?」
「仕事を通じて何を成し遂げたいのか?」
「自分にしかない強みは何なのか?」

こうした問いに向き合い続け、自分なりの観(人生観、仕事観、人間観、等)を形成していくことが、熱意あふれるリーダーへ近づく第一歩となるのです。

人材は熱意の観点から4種類に分類できる

熱意という観点から、人材を4種類に分類する考え方をご紹介しましょう。

  • タイプ1:自ら点火して熱意を高める人材
  • タイプ2:他人から点火してもらって熱意を高める人材
  • タイプ3:他人から点火してもらっても熱意が高まらない人材
  • タイプ4:他人に水をかけ、熱意をうばう人材

言うまでもなく、リーダーは「タイプ1」の人材を目指して日々精進しなければなりません。そのためにも、節目の管理職研修は、「人間力」の重要性に気づき、人徳と熱意について自身の現状を振り返り、それらを高めるためのアクションを起こすきっかけにしたいものです。

「人間力」を涵養し「勉強する組織風土」をつくる【研修事例】はこちら

「人間力」を高める方法。12のアイデア

「人間力」を高めるための12のアイデア

人徳も熱意も、いずれも先天的な遺伝情報(素質)と、後天的な環境(親の躾、学校教育、地域社会、職場風土、文化、厳しい修練、等)によって形成されます。つまり、人徳と熱意から成る人間力は後天的に学習することが可能なのです。

そこで、PHP研究所では松下幸之助のリーダー論を参考にして、以下のような「人間力を高めるための12カ条」をまとめました。

1.自覚する...リーダーとしての役割と責任を自覚する
2.学ぶ...異質の世界や、考え方の異なる人との出会いを通じて学び、自己成長   を図る
3.尽くす...利他の精神で世のため、人のために最善を尽くす
4.考え抜く...人生や人間、自然・宇宙などについて考え、自分なりの「観」を確 立する
5.守る...約束を守る、うそをつかない
6.勇気をもつ...公の利益のために自己犠牲を払う勇気をもつ
7.定める...自組織および自分のビジョンを定める
8.聴く...人の話に耳を傾け、衆知を集める
9.やりきる...成功するまであきらめない
10.振り返る...日々、自分と向き合い内省を行う
11.素直な心...何ものにもとらわれない柔軟な心をもつ
12.愛嬌...奉仕の精神をもって人に尽くすことで、愛される人材になる

いずれも実践したからといってすぐに人間力が高まるわけではありません。でも、自らの人間力を高めようと決意し、日々地道な取り組みを重ねる態度が重要なのです。そして、そういう意欲と努力を続けるリーダーの存在が、人と組織を活性化させるエネルギーとなって、企業活動を力強く前進させるでしょう。

リーダーの「人間力」を高めるリベラル・アーツ

リーダーの「人間力」を高めるリベラル・アーツ

リーダーの「人間力」を高めるための実践方法として、リベラル・アーツの学習をご紹介します。
変化が激しく将来予測が難しい経営環境において、リーダーには決断を下すうえでの拠りどころをもつことが求められています。経営活動の究極の目的が人間を幸せにすることであるとするならば、正しい意思決定を行うためには「人間とはどういう存在であるか」を追求し続ける努力が必要になるでしょう。

昨今、企業内教育において注目を集めるリベラル・アーツとは、人間の叡智の結集とも言える歴史、哲学、芸術、古典などを総称したものです。これらは、人間の本質を学ぶには最高の教材であり、また意思決定を行う際にはたくさんのヒントを提供してくれる拠りどころにもなる"優れもの"です。

『重職心得箇条』に学ぶ、リーダーの条件

なかでも、リーダーの方には『重職心得箇条』の一読をお奨めしたいと思います。これは、幕府教学の儒学者であった佐藤一斎が、美濃岩村藩からの要請で作った「重職のあるべき姿」を十七カ条で示した憲法です。その一節をご紹介いたします。

第八条
重職たるもの、勤向繁多と云ふ口上は恥べき事なり。仮令世話敷とも世話敷と云はぬが能きなり、随分手のすき、心に有余あるに非れば、大事に心付かぬもの也。重職小事を自らし、諸役に任使する事能はざる故に、諸役自然ともたれる所ありて、重職多事になる勢あり。

(口語訳)
重役たる者、仕事が多い、忙しいという言葉を口に出すことを恥ずべきである。たとえ忙しくとも忙しいといわない方が良い。随分、手をすかせたりして、心の余祐がなければ、大事なことに気付かず、手抜かりが出るものである。重役が小さな事まで自分でやり、部下に任せるという事が出来ないから、部下が自然ともたれかかって来て、重役のくせに仕事が多くなるのである。

参考文献:『佐藤一斎「重職心得箇条」を読む』安岡正篤著(致知出版)

リーダーが率先して学習する習慣をつける

「人間力」を高めるための実践方法として、リベラル・アーツの学習、中でも『重職心得箇条』の一読をお奨めしましたが、学ぶ素材はそれ以外にもたくさんありますので、自分の問題意識に合ったテーマで素材を選んでください。
大切なことはリーダー自らが学び続けること。「共育」ということばがあるように、リーダーが育った分だけ社員も共に育つことができ、[社員の成長→仕事の質の向上→顧客満足度向上→業績向上→社員の満足度向上・さらなる成長→ ...]という好循環が生まれるのです。

「人間力」を育てる~立山科学グループの事例はこちら」

立山科学グループ様~次のステップへの「人間力」を育てる

「人間力」を鍛える企業の取り組み~実践事例

先進企業では、リーダーの人間力を鍛えるために、さまざまな取り組みが行われています。その実践事例をご紹介しましょう。

ネッツトヨタ南国「お遍路研修」の事例

高知市に本社を置き、圧倒的な業績を誇る「ネッツトヨタ南国」。同社で実施されている人間教育の一つに、目の不自由な方や高齢者のお遍路参りの同行・介添えをする「お遍路研修」があります。
5日間の研修中、自分では良かれと思ってやったことが相手の迷惑になったり、不快な思いをさせたり、予期せぬ出来事に研修生は困惑させられます。しかし、こうした体験を通じて、相手の状況や気持ちを察しながら行動することの重要性を学べるのです。
独自の人間教育を通じて、商売の基本である「相手に寄り添う」スタンスを社員が体得できていることが、同社の強みの源泉になっているのです。

秋山木工「徒弟制度」の事例

高級家具を作る「秋山木工」は、一流の人材を育てる企業として注目されています。代表の秋山利輝さんは、一流の人材に必要な心と技術は集団生活の中で育まれるとの考えから、入社後5年間は「秋山学校」という全寮制の学校で、職人の基本を叩き込んで教えています。
秋山学校では家具作りの技術を教えるだけでなく、目上の人を敬い、ルールを守り、困ったときは助け合う、といった躾しつけがなされます。技術の習得はたやすいが、心を育てることは難しい。だから24時間一緒に過ごし、職人としてのあり方を後ろ姿で見せ、語り合うことで人間性を磨こうとしているのです。心が一流なら、技術も必ず一流になれる――。秋山さんはこう信じて、日々若者たちと真剣に向き合っています。

人間力を高める3つの原則――「体験」「振り返り」「面授」

二つの実践事例から私たちが学ぶべきポイントは何でしょうか?
ネッツトヨタ南国の事例が示唆していることは、「体験」の重要性です。「塩の辛さはなめてみないとわからない」ということばの通り、体験しなければ得られないものがたくさんあります。しかし、体験さえすれば人が育つというわけではありません。
松下幸之助が「今日一日を振り返り、失敗や成功を見出し、その味をかみしめる。これが体験である。反省することなしにポカンと暮らしてしまえば、これは体験にならない」と述べているように、体験から気づきを引き出すためには、「振り返り」という行為が欠かせません。体験と振り返りはワンセットなのです。

秋山木工の事例は、「面授」(面と向かって教育すること)の重要性を教えてくれます。人間力は暗黙知の集合体なので体得させるためには、面授によってあるべき姿を見せ、語り合い、同じ体験を共有するしかないのです。

体験と振り返りと面授。時間と手間がかかる作業ですが、社員の人間力を高め、業績を上げ続けている企業の多くが、そこにこだわっている事実を見ると、軽視できないことを感じます。

「人間力」を磨く感謝の心

「人間力」を磨く感謝の心

2021年の東京オリンピック・パラリンピックでは、さまざまなドラマが展開されました。その中でも印象的であったのが、競技を終えたアスリートの多くがインタビュー等で、感謝の思いを口にしていることでした。スポーツであれ、ビジネスであれ、その他の分野であれ、一流と言われる人たちに共通しているのは、感謝の念をもっているということです。

感謝に関しては、精神性の観点からも、科学的な見地からも多くの有識者によって、その重要性が説かれてきました。例えば、「感謝が感謝を生み、不平が不平をよぶ」ということばがあるように、心のもちかたが幸不幸を左右するという哲学的な教えがあります。一方、脳科学の分野では「感謝の気持ちをもち続けている人は成長志向になり自制心が高まる」という研究結果(※4)があります。

2種類の感謝

このように感謝することの重要性は誰も否定することのない、普遍の真理と位置付けられていますが、ここで理解しておきたいのは感謝にも種類があるということです。

カリフォルニア大学リバーサイド校 アルメンタ博士らによると、感謝には2種類あるとされています。(※5)。

(1)恩恵的感謝(Doingの感謝)...良いことがあった時に感謝すること
(2)普遍的感謝(Beingの感謝)...平凡なことにも感謝すること

恩恵的感謝は、良いことがあれば感謝するけれど、なければ感謝しないので一種の取引のような状態です。自分を取り巻く外部環境の状況に応じて精神状態が変動しやすく、長期的には鬱(うつ)傾向を強くするという研究結果が出ています。

それに対して普遍的感謝は、「生きていることがありがたい」「仕事があるのがありがたい」「家族がいてくれてありがたい」というように、一見すると「当たり前」ととらえがちなことにも感謝の気持ちを向けます。この感謝を続けていると、「自分は恵まれている」「運がある」「何とかなる」「できる」という前向きなマインドセットにつながり自己肯定感が高まります。

人間力豊かなリーダーになるために

私たちが目指すべきは言うまでもなく、普遍的感謝のほうです。日々、何げない当たり前のことにも感謝の思いをもち、それをことばにすることで気持ちが明るくなり、表情や言動に力強さが表れてきます。そこから発揮されるオーラが周囲にプラスのエネルギーを与え、自然とその人の周りに人が集まってくるでしょう。

そして、そのような人間力豊かな人がいる職場は活性化しますし、仕事の生産性も上がり、イノベーティブなアイデアも生まれやすくなります。当然、ES(従業員満足度)とCS(顧客満足度)が上がるので、結果的に業績も向上するはずです。したがって、組織を率いるリーダーには豊かな人間力が求められるのですが、そのための第一歩が普遍的感謝を心がけることです。
とはいうものの、人間力は一朝一夕に磨き高められるものではありません。焦らず、一歩一歩地道に自身を高める、そんな心構えをもちたいものです。

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※1 たとえば、内閣府に設置された『人間力戦略研究会』が、2003年に発表した報告書の中では、「人間力に関する確立された定義は必ずしもないが、本報告では、社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力と定義したい」と記述されています。
※2 出典:『人生談義』松下幸之助著(PHP研究所)
※3 出典:『指導者の条件』松下幸之助著(PHP研究所)
※4 Dickens,L.,&DeSteno,D.(2016) The grateful are patient:heightened daily gratitude is associated with attenuated temporal discounting.Emotion.16(4),421-425
※5 Armenta,C.N,Fritz,M.M.,& Lyubomirsky,S.(2017)Function of positive emotions:Gratitude as a motivator of self-improvement and positive change.Emotion Review 9.183-190.

的場正晃 (まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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