上司への適切な中間報告がない部下~報連相Q&A
2018年11月19日更新
部下からの中間報告が足りないため、情報共有で生産性を上げることができないというWEB制作マネージャーからの相談です。
【質問】
私の職場には、私の下に20代、30代の部下が4名おり、ホームページの作成とメンテナンスをメインとした業務をしています。各自、自分の担当する顧客先への営業からホームページの作成・メンテナンスまでを1人で対応をしているため、どうしても業務内容が「タコ壺化」しやすくなっています。
毎週、週明けの月曜日には朝一から各自の仕事状況を確認するための業務ミーティングを行っているのですが、それだけではどうしても報連相が足りません。
たとえば、先週の木曜日に部下であるAさんの担当する顧客先でちょっとしたシステム上でのトラブルがあり、Aさんが解決を図ったとします。
それを週明け月曜日の業務ミーティングで報告してくれるのですが、実はBさんの担当先ではAさんのトラブルの翌日金曜日に似たようなトラブルが発生しており、Bさんは週末を返上して作業をして解決していた、といった具合です。
専門性の高い能力を各自が有し、顧客の担当もはっきりと分かれているため、仕事を行う上で「一人親方」の集まりのような部分があるのは仕方がないとは思いますが、組織で仕事をしているメリットを十分に活かせていないのです。
先に述べたAさんとBさんの件もそうですが、一人で解決を図れることでも、ひと言中間報告を上げてくれれば、各自の生産性はもっと上がるのです。しかし、「業務ミーティング以外でも中間報告をするように」と呼び掛けても、あまり効果は上がりません。
部下たちも中間報告を軽視しているわけではないと思うのですが、私の考えるレベルで中間報告が行われないのは、私の方が部下に求めすぎているということなのでしょうか? 何か良い方法があれば、ご指導ください。
(Tさん・WEB制作業者 マネージャー)
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【解説】
報連相には「すべての報告は中間報告なり」という名言があるくらい、中間報告は仕事を進める上で重要な役割を担っていますが、これは報告に限らず連絡や相談にも同じことが言えます。部下に気の利いた中間報連相を行ってもらうためには、何が必要なのでしょうか。
中間報連相を行う意味や目的を理解できているか?
部下の中間報告についてご相談をいただきましたが、これは報告に限らず連絡や相談など仕事の進め方全般に共通することでもありますので、ここからは「中間報告→中間報連相」と言葉を変えて話を進めていきたいと思います。
Tさんのお話を聴いていると、部下の皆さんはけっして中間報連相をないがしろにしているわけではないということが分かります。なぜかというと、月曜日の業務ミーティングでは、本人たちにとってはちょっとしたトラブルであってもそれを流すことなく、この一週間での出来事として、しっかりと共有化しようという姿勢があるからです。
しかし部下の皆さんは、「何のために中間報連相を行うのか」や「普段どのようなときに中間報連相を行えばよいのか」といった、「チームとして中間報連相を行う意味や目的」と「手段」が不明確なままになっているのではないでしょうか。結果、リアルタイムの中間報告が少なく、週初めに行われる業務ミーティングでの結果報告がメインになってしまっているように思えます。中間報連相の基準がなく、判断ができないのです。
何のために中間報連相は必要か?
まず、Tさんが部下の皆さんと行っていただきたいのは「私たちは、何のために中間報連相を行うのか」という、中間報連相を行う目的を共有化することです。
おそらく現状、部下の皆さんに「あなたたちは何のために中間報連相が必要だと考えていますか?」と、中間報連相を行う意味目的について質問をしても答えることはできないと思います。「僕は……」とか「私は……」と、個人的な見解は言えるかとは思いますが、チームとしての共通目的には至らないでしょう。
たとえば報連相の第一の効能は、お互いに助け合える環境を築けることにありますが、AさんBさんのトラブルのケースにあるような、AさんもしくはBさんが自分から職場の仲間に自分お仕事の現状を中間報連相していれば、ちょっとした助け合いによってBさんの週末も返上せず、顧客に対しても迅速な対応ができたはずです。
上司としてのTさんも、Aさんのちょっとしたトラブルを把握できていれば、それはAさんの担当先で起こった独特のトラブルなのか、他の顧客先でも起こりうるトラブルなのかを判断し、各部下にも担当先に同様のトラブルが発生する種がないか確認するよう情報を発信することができたわけです。
「チームとしては何のために行うのか」は、部下である皆さんに考えてもらう機会を設けることが重要ですが、「上司としては何のために行ってほしいのか」はTさんの言葉で伝えることも重要です。
どんな時に中間報連相は必要か?
次に大切なのは、目的が共有化できたならば、「ではどのような状況のときに私たちは中間報連相を行うのか」という、手段の部分を考えることです。このように目的をしっかりと明確にし、次に手段を考える思考方法を『目的思考』と言います。逆に、何のためにを考えずに「ああしろ」「こうしろ」とやり方だけを求めるのは「手段思考」と言います。手段思考はあまりいい仕事に結びつきません。各自で考えること、判断することがなく、機械的に仕事を行うようになってしまうからです。
中間報連相が必要なケースは様々ですが、筆者が報連相研修などで「中間報連相はどのようなときに必要か?」と質問し、受講者に話し合いをしてもらうと、大きくは次の3つに大別できます。
【中間報連相が必要な3つの場合】
(1)状況が変わったとき
(2)長い期間を要する仕事の場合
(3)その仕事の終了のメドがついたとき
「(1)状況が変わったとき」「(3)その仕事の終了のメドがついたとき」は分かりやすいかと思いますが、「(2)長い期間を要する仕事の場合」は、個人差があります。
長い期間とは物理的な時間ではありません。その仕事の重要度、緊急度と、お客様や上司がその件をどのように考えているか、などによります。相手が急いでいると感知すれば、時間的には短い期間で終わる仕事でも、中間で報告する必要があります。また、長いか短いかは、相手のワークスタイルや性格にもよります。鈴木さんにとっては長い期間でなくても、田中さんにとっては長い期間と感じる場合もあります。これらも、ただ単に(1)~(3)を教えるだけでは、部下の中間報連相のレベルアップには繋がりにくいでしょう。
大切なことは(1)~(3)の項目を実際の自分たちの具体的な仕事の場面に置き換えて、「たとえば、以前あった○○のときのようなケースで考えて……」といったように、自分たちの仕事をふり返って考え、イメージをしてもらうことです。
中間報連相をしてくださいとだけ伝えても、言われた側は今一つイメージができていないといった場合はよくあります。人間の第一言語は言葉ではなくイメージです。実際の仕事で自分が具体的に中間報連相をしているケースをイメージでき、そして何のために私たちのチームが中間報連相を行うのかという共通の目的を持つことができれば、部下の中間報連相ももう一段レベルアップすることでしょう。
延堂溝壑(えんどう こうがく)
本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。
なお、本稿は糸藤正士氏に著作権のある『真・報連相』を、著作権者の承認を得て使用している。