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上司が必要としている情報を判断してもらうには?~報連相Q&A

2019年1月15日更新

上司が必要としている情報を判断してもらうには?~報連相Q&A

上司が必要としている情報を、部下にきちんと報連相してもらうための方法を知りたい、という質問です。

【質問】

部下に報連相をしっかりと行ってもらうために、一番効果的な方法は何でしょうか。

私の組織は全国に工場のある製造業で、各地の工場の規模にもよりますが、工場当たりの従業員数は数十名から数百名です。私のもとには15名ほど部下がいますが、その部下たちの報連相のスキルにはかなりの差があって難儀しています。

たとえば、「ちょっとしたイレギュラーがあって、現場で解決に至った内容を、報告に来てくれない → 私としては、そのような情報が必要」「良い情報の報連相は早いのに、悪い情報の報連相は遅い → 私はその逆、良い情報は後でもよいが悪い情報はなるべく早く報連相してほしい」「各自のモチベーションや仕事の悩みといった、働く人の人間的な必要情報が退職などで表面化するまで得られない → 悩んでいる間や噂になっている間に一言報連相をしてほしい」といった具合です。

何も私の思い通りに報連相をしてくれ、と思っているわけではありません。ですが、それら(上記の課題)を統一して行えるよう呼びかけてもルール化しても、いまいち効果を感じ取れません。できる人はできているのですが......。何かよい方法はないでしょうか?

(Nさん・製造業 課長)

*   *   *

【解説】

質問者のNさんと同様に、部下の報連相のやり方に課題を抱える上司の方々は多くいます。部下に報連相をしっかりと行ってもらうためには何が必要なのでしょうか。

上司は「自分が求める報連相」の意味を、具体的に伝えているか

部下の報連相に課題を抱える上司がよく口にする言葉のひとつに、「必要な情報を報連相してもらえない」という言葉があります。

ところで、部下には「上司は、どのような情報を、なぜ、何のために必要としているのか」、その意味がしっかりと伝わっているでしょうか。伝えているか、ではありません。伝わっているか、です。

部下が必要な情報を報連相してくれないということの原因の一つには、「部下が上司の必要とする情報を、本質的に理解していない」ということがあげられます。たとえば、あるちょっとしたイレギュラーが現場で起こり、即時解決したとします。その報告を上司にしたところ、「そんなことをいちいち報連相するな」と言われたとします。しばらくして似たようなイレギュラーが起こり、解決し、部下が今度は報連相をしないでいたところ、上司からは「なぜ、そのような情報を報連相してくれないのか」と叱責を受けるのです。現場のちょっとしたイレギュラーであっても、上司にとっては現場で解決を図るべきケースもあれば、関連部署や会社全体、時には顧客にも影響が及ぶ重要な問題を抱えるケースもあります。ですが、部下の目線からすると「同じ現場のちょっとしたイレギュラー」としか映っていない場合もあるのです。

そのような状況で、上司の側が「そんなことをいちいち報連相するな!」や「なぜ、そのような情報を報連相してくれないのか!」と、報連相の「する・しない」をその都度言ってみても、部下としては「する・しない」の基準が分からないため、混乱するだけなのです。部下の側からは、「上司の指示は朝令暮改だ!」と思われているかもしれません。

大切なのは「なぜ、今回のケースでは報連相をする必要がないのか」または「なぜ、今回のケースでは報連相を必要としているのか」その理由を部下に理解してもらうことです。

やり方だけではなく、報連相の意味を話し合う

では、どうすれば「上司が必要とする報連相の基準」を部下に理解してもらえるのでしょうか。一番効果的な方法は、「過去に上司(Nさん)がしてもらえて助かった、部下からの報連相の具体的実例」と「過去に上司がされて困った、部下からの報連相の具体的実例」を部下たちに伝え、「なぜ、助かったのか」「なぜ、困ったのか」を考えてもらうことです。

表面的な「する・しない」の話ではなく、その報連相が「上司として何のために必要なのか」を考えてもらうことが大切です。

部下同士でいろいろと意見交換(注意:出てきた意見を、評価したり取りまとめる必要はありません。あくまで意見交換だけに留めておきましょう)をしてもらい、そのうえで上司としてのNさんの考えや理由も伝えるとよいでしょう。

部下の視点のバラつきを減らし「考えて動く人」を育てる

Nさんの質問にも「できる人はできているのですが......」とあるように、報連相がしっかりできる人もいれば、できていない人もいるのが現状ですが、おそらく話し合いをすることで、部下の皆さんがそれぞれ仕事のときに何を考えて普段仕事を進めているのか、上司への報連相の基準を考えているのかなどが明確になり、職場の報連相のあり方を話し合う中で「できる人の視点」が「できていない人」にも伝わることでしょう。

ただ単に「する・しない」の基準を上司から部下に話すだけでは、部下は自分で考えることをしませんので、実際の現場では自分なりの(部下なりの)工夫や応用があまりできません。

変化の速いこの時代では、やり方や手段を単に教えるだけでは部下は上手に仕事を進めることができない人間になってしまいます。そうではなく、「なぜ相手はこの情報が必要なのだろうか?」と考え工夫する姿勢が必要です。報連相では、報告をする相手(または受ける相手)やその状況によって、同じ報告でも是非が別れてしまう場合がありますので、Nさんの職場でも「過去の具体的な実例」をもとに、職場の報連相の意味について話し合ってみてください。

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延堂溝壑(えんどう こうがく)

本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。

なお、本稿は糸藤正士氏に著作権のある『真・報連相』を、著作権者の承認を得て使用している。

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