若手社員育成の課題～レベルに応じた育て方とは？

若手社員の育成に問題意識をもつ管理職の方が増えています。育成がうまくいかないと、モチベーションの低下や離職率の上昇などを招き、結果として組織のパフォーマンスが下がってしまいます。そこで本稿では、若手社員を育成するために、現場レベルで上司や指導員が何をすればいいか、課題と具体的な育成法を考察したいと思います。

若手社員が会社を辞める理由とは？～育成上の課題

若手社員の離職に歯止めがかかりません。厚生労働省の調査 によると、入社4年未満で約30％もの新卒者が離職してしまうという事実が明らかにされています。労働力不足が常態化しつつある状況のもと、せっかく採用した人材が早期に離職してしまうことは、BCP（事業継続性）の観点から、看過できない問題といえます。

なぜ、若手社員が早期に離職するのでしょうか？　離職の原因はさまざまですが、成長実感（予感）を感じられないという理由で会社を辞めるケースが多いようです。離職という文脈からも、各企業の現場で若手社員を育成しきれていない現実が垣間見えてきます。

二極化する若手社員の育成

若手社員を育成する立場の方に、ぜひ理解しておいていただきたいことがあります。それは、最近の若手社員が二極化しているという事実です。つまり、大きな夢や高い目標をもって主体的に行動する、いわゆる「意識高い系」社員と、生きる上での目的意識が希薄で日和見的に日々を過ごしている「意識低い系」社員とに二分される傾向が強まっているのです。

したがって、若手社員を育成するにあたって、まず相手がどのようなレベルに位置しているか、正確な現状把握をすることが重要になります。その上で、相手のレベルに応じて関わり方を変えていくことで育成の精度が高まるのです。

「意識高い系」若手社員の育て方

意識が高い社員は、はっきりしたキャリアビジョンをもって仕事と人生に向き合っています。このような人材は主体的で仕事もできるので市場価値が高く、常に転職の脅威（企業から見ると）に晒されています。

意識が高い社員に対しては、個人の価値観を尊重すると同時に、会社の価値観（理念やミッション、パーパス等）との整合性を見いだすような対話が重要になります。

「意識低い系社員」の育て方

もう一方の意識が低い社員に対しては、上司や指導員が自己開示を行い、自らの仕事観や人生観を平易なことばで伝え続けることが育成のポイントになります。

現状で目的意識が希薄であるということは、これまでの人生で、生きる意味などを教えてくれる人との出会いや経験がなかったからであり、恵まれない環境で育ってきたとも言えます。したがって、上司や指導員がメンターとなって、人としてあるべき姿を教え込み、人間力を涵養する必要があります。また、自己肯定感が低い人が増えているので、こまめに承認（特に存在承認）を行って、自信をもたせることも重要です。

成功する若手社員育成のポイント

ここまで述べてきた通り、相手のレベルに応じて関わり方を変えることが、成功する若手社員育成のポイントです。相手によって、関わり方のファーストアプローチが異なっても、育成の最終ゴールが「主体的な思考と行動ができる人材」に成長させることであるのは共通しています。

そのカギは、仕事を通じて何をしたいのかという「キャリアアンカー」（キャリアを形成する上で、譲れない価値観や欲求のこと）を明らかにすることです。

より良い人生や仕事の方向性を示す「羅針盤」を発見する営みを個人任せにせず、伴走しながら共に考えていく姿勢が上司や指導員には求められるのです。

参考記事：若手社員が自ら成長するための4つの条件とは？│ＰＨＰ人材開発

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的場正晃（まとば・まさあき）
ＰＨＰ研究所　人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。