今どきの若手社員はコミュニケーションが苦手？　関係を構築するためのポイントを紹介

「話しかけても答えが返ってこない」「表面的な関係に留まる」等、今どきの若手社員とのコミュニケーションや関係構築に苦労している管理職が増えています。どうすれば、良好な関係を築くことができるのか、そのポイントをOJTの観点から考察します。

若手社員のコミュニケーション能力

仕事柄、企業の人事担当の方とお話をする機会が多いですが、最近、よく話題に上がるのが、「いまどきの若手社員のコミュニケーション能力の未熟さ」です。若手社員が職場で周囲の人たちとうまくコミュニケーションを取れないので、上司や先輩が手を焼いているというのです。コロナ禍の影響で、大学（高校）生活の大半がオンラインに代替され、リアルなコミュニケーションの機会が少なかったことが、その原因かもしれません。

原因が何であれ、コミュニケーションがうまく取れない若手社員が増えているのは由々しき問題です。なぜならば、この問題を放置しておくと、組織としての業績の低下や、若手社員の離職者の増大など、さまざまな二次的な問題の発生につながりかねないからです。

参考記事：若手社員育成の課題～レベルに応じた育て方とは？│ＰＨＰ人材開発

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上司や先輩がとるべき3つの対策

では、若手社員を指導育成する立場の上司や先輩は、この問題にどう対処すればいいのでしょうか。考えられる対策は3つあります。

対策1：承認欲求を満たす

まずは、しっかり承認することです。具体的には、こまめに声をかける、名前を呼ぶ、目を見て挨拶する、相手の変化に気づいてあげる、頼りにする、感謝のことばをかける、等々の行為を実践するのです。
人は誰もが承認されたいという欲求をもっています。したがって、こまめに承認し続けることで若手社員の自己肯定感やモチベーションが高まり、承認してくれる人に対して少しずつ心を開いていくでしょう。

対策2：適切に問いかける

承認によって相手との距離感を縮めることができれば、次に実践するべきは問いかけです。問いかけには、相手の考えを整理したり、視座・視野・視点の転嫁を促がしたり、主体性を引き出すなどの教育的な効果が期待できます。
ただし、問いかける際に留意すべきことが2点あります。一つは、答えやすい問いを投げかけることです。いきなり答えにくい難しい問いを投げてしまうと思考がフリーズし、それ以降、問いかけられることに恐怖心を抱いてしまいます。二つめは、問いを連発し過ぎないことです。立て続けに問いかけると、尋問されているような印象を与え、せっかく開きかけた相手の心が再び閉ざされかねません。
こうした点を留意しながら適切な問いを若手社員に投げかけていけば、相手から返ってくる発言の量が少しずつ増えていくでしょう。

対策3：しっかり傾聴する

若手社員が心と口を開くようになったら、相手の話を傾聴することです。「ながら聞き」ではなく、「アイコンタクト」や「リアクション」を織り交ぜて、相手のことばをしっかり受け止めます。
ただ、傾聴しているつもりでも途中で雑念が生じ、別のことを考えながら聞いていることも往々にしてあります。ことほど左様に、傾聴は決して簡単な手法ではありませんが、日々の訓練によってそのレベルが上がると、ことばの奥にある心理状態や本音までもつかむことができるようになります。

若手社員との関係づくりは短期間の成果を求めない

ここまで、コミュニケーション能力が未熟な若手社員との関係づくりのポイントを解説してきましたが、これらを実践したからといって短期間に相手との関係性が変わるわけではありません。相手のコミュニケーションスタイルは長い年月を経て形成されたものなので、それを変えるためには相応の時間が必要になるのです。無理と焦りは禁物です。

相手の行動が変わる「臨界点」に向かって、一歩一歩前進していく、そんなスタンスに立ったほうが、肩の力が抜けて自然体で相手と向き合っていけるでしょう。

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的場正晃（まとば・まさあき）
ＰＨＰ研究所　人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年、ＰＨＰ研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年、神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。