松下幸之助に学ぶ、社会人として成長し続けるための考え方
2022年11月17日更新
新入社員が仕事を通じて自分を成長させられるよう、導入教育を通して前向きな考え方を伝えていきたいものです。ここでは、松下幸之助の考えをもとに、充実した会社生活を送るための社会人としての考え方のヒントをご紹介します。
INDEX
社会人として知っておきたい考え方~社会における企業の役割
企業で働く社会人にとって、企業と社会との関わりを知ることは正しい考え方をするために重要です。社会における企業の役割について解説します。
利益が社会を発展させる
企業の目的とは、一つには「利益」をあげることです。企業があげた利益の約半分は、国の法人税または地方税として、国や地方自治体に収められています。そして、国や地方自治体に納められた税金は、さまざまな施策を通して国民の生活に還元されます。具体的には、医療や年金などの公的サービス、道路・港・空港・公園などの整備、学校、警察、消防、ごみ処理、防衛費などがあげられるでしょう。
つまり、国民の社会生活を維持・発展させていくには、個人が納める所得税や地方税などと合わせて、企業が得た利益の中から税を納め続ける必要があるわけです。その意味で、企業が利益をあげて税を納めることには、社会的に重要な意義があるということです。
企業は「公器」である
とはいっても、企業はただ利益をあげればいいというわけではありません。企業には、利益をあげると同時に、社会に対して何らかの貢献をしていく責任もあります。
また、企業は形式のうえではオーナーもしくは株主のものかもしれません。しかし、社会に存在する「人・もの・お金」などを経営資源として活用している事実から考えれば、企業は「社会のもの」であるともいえます。つまり企業は社会の「公器」であると位置づけられるのです。
「公器」である限り、たとえオーナーや株主であっても、会社を私物化することは許されません。「公器」であるという自覚をしっかりともち、社会に役立つ物資やサービスの提供に全力を傾ける責務があります。新入社員に対しても、「社会のために」という観点をもって仕事に取り組むよう教育していくことが重要だといえます。
仕事との出会いは「運命」である
誰でも自分の職業を選択するとき、通常は自分の判断で決めるものでしょう。自分で決めた以上は責任をもって頑張ろう、という考え方も大事ですが、その一方で、何か思わしくないことがあると、「自分はこの道を自分で選んだけれども、本当にこれでよかったのだろうか?」という迷いが生じることもあります。
しかし、単に自分で選んだだけでなく、その会社に出会って入社したのは「運命の力によるものだった」と考えることも大切です。それでかえって迷いが消え、「運命にしたがって最善を尽くそう」という気持ちが湧いてくることもあるはずです。
そもそも人間に生まれてきたことも、日本で生まれ育ったことも、自分や誰かの考えでそうなったのではなく、運命だと考えるしかありません。そう思って日本人としてよりよく生きようとすることで、人生は充実し、幸せも生まれてきます。同様に、自分が巡り合った仕事が「天職」であると考えて取り組めば、強い気持ちで働けるようになり、大きな成果も生まれるのではないでしょうか。
成功するまで続ける
せっかく自分で選択し、運命によって巡り合った職業についたのですから、少々うまくいかないことがあっても、あきらめずに挑み続けることが大切です。かつての小学校の修身の授業では、「平安時代の能書家である小野道風は、雨の日に蛙が柳の枝に飛びつこうとして何度も何度も飛び跳ね、ついに成功した姿を見て、書の道に精進した」という教訓が教えられていました。つまり「成功の秘訣」とは、「成功するまで続ける」ということなのです。例えば営業活動をしていて、一度断られてすぐにあきらめたり、何かを開発していて、実験や試作で一度失敗してすぐにあきらめたりするのではなく、粘り強く続けることで、やがて成功につながることも往々にしてあるはずです。そのような意気込みで仕事に打ち込む姿勢を身につけたいものです。
仕事とは「問題解決の連続」である
そもそも仕事をしていくうえで、何か一つ問題を解決したら、すぐに新たな問題が起きて、いつも何かしら問題を抱えているのが当たり前だともいえます。むしろ問題の起こらない仕事などあり得ません。つまり仕事とは、「次々と発生する問題を一つひとつ解決しながら成果をあげていくこと」ではないでしょうか。「仕事とは問題解決の連続である」という前提に立ち、多少の問題や困難にくじけず、あきらめずに取り組んでいくことが肝要です。
長所を生かし、短所を補う
企業においては、通常、一つの「課」に課長さんがいて、数名の課員とともに仕事を分担して行っています。この「課全体」で力を合わせ、最大限の成果をあげていくために重要なのは、お互いの「長所」と「短所」をよく知り、お互いの「持ち味」をしっかりと生かしていくということです。
完全無欠な人間はまず存在しません。必ず長所も短所も併せ持っているのが人間だといえます。だとするならば、課のメンバーそれぞれの長所を生かしながら、誰かが誰かの短所を補えるような協力関係をつくっていくことが大切です。完璧とまではいかなくても、ある程度までこれができれば、素晴らしい成果があげられるようになるでしょう。
自分を鍛え続けよう
人間の能力は、訓練を積み、鍛え続けることによって、いくらでも伸ばしていくことができます。スポーツにしても、何らかの技芸にしても、はじめはほとんどできなかったことが、指導を受けながら練習していくうちにだんだん上達した、といったことは、多くの人が経験しているのではないでしょうか。仕事も同様に、たえず勉強し、自分を鍛えることで潜在能力が引き出され、実力が高まっていくものです。
人間の大脳の表面には140億もの神経細胞があるそうですが、どんな天才的な人でも、そのすべてを利用できていないとのことです。ということは、私たちが常に頭を働かせ、脳神経細胞をこれまで以上に使い切るよう努めれば、天才に負けない仕事をすることも不可能ではありません。日々コツコツと自分を鍛え、あきらめずに継続していくところに、成功のカギがあるといえるでしょう。
使命感をもって働く
どんな仕事でも、それが社会で成り立っているのは、原則として、その仕事が人々の生活を高め、社会生活を向上させるうえで役に立っているからです。言い換えれば、社会に有用だからこそ、その仕事は存在を許されているということになります。
そう考えると、自分の仕事に対する「使命感」がふつふつと湧いてくるのではないでしょうか。「自分の仕事は人々の生活を豊かにして、幸せを高めるためにあるんだ」「自分が仕事をすることによって、直接的にも間接的にも社会の役に立っているんだ」「日々の一つひとつの仕事を決して怠ってはいけない。誠心誠意、最善を尽くしていかなければいけない」といった気持ちになり、仕事への真剣味が生まれてくるはずです。
新入社員の方々には、ただ生活のために働くのではなく、どんな仕事も「世のため人のためにやっているのだ」ということを知っていただくことが重要です。その使命感が、困難を乗り越え、自分を成長させるエネルギーになることでしょう。
健康管理も仕事のうちである
使命感をもって日々一生懸命に仕事をし、社会の一翼を担って質の高い物やサービスを提供していくためには、まず「心身の健康」を保つことが必要不可欠です。どんなに才能や高い技術があっても、健康が損なわれた状態では、その才能も技術も十分に発揮できません。そのためどんな人も、自分の健康の維持増進について十分に配慮し、日々の生活の中で工夫していくことが大切です。「健康管理も仕事のうち」だと自覚し、体調を保ちながら働き続けることも、社会人としての責任の一つであるといえるでしょう。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『社会人・企業人として大切なこと』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
PHP通信ゼミナール
『社会人・企業人として大切なこと』
松下幸之助の考えをもとに、今後の社会人生活を送るうえで、若いビジネスパーソンに知っておいてもらいたい大切な項目を取り上げています。社会人・企業人の役割、社会と仕事の関わりなど、社会人としてのあり方・考え方をしっかりと学んでいただけます。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。