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今どきの若手社員は何に幸せを感じるのか~部長の役割を考える

2018年3月20日更新

今どきの若手社員は何に幸せを感じるのか~部長の役割を考える

社員の満足や幸せに、最も影響を与える人は誰でしょう? 誰しも経営者・経営幹部・部長など「上司」と答えます。そこで今回は、今の若手社員は何に幸せを感じるのか、そして部長は部下の幸せを実現するために何をすべきなのかを考えてみます。

多くの会社で研修をしていますと、いい会社は社員の満足や幸せを重視していることが分かります。会社の売上や利益はもちろん追求しなければならないのですが、いつの時代も成長し続ける会社は社員を大切にしているものです。1日8時間働くとすると、1日の3分の1は仕事をする時間。この時間が充実していれば、人生もおのずと充実したものとなります。

若手社員の「幸せ」は変わってきている

そこでまず、理解しておかなければならないのが、人の幸せが大きく変化しているということです。
現在40歳以上の人は、20世紀、「物の時代」に育ってきました。ですので、物を所有することや成功に幸せを感じる人が多くいます。一方、30歳未満の平成生まれの人は「心の時代」に育ったため、絆や自分らしさ、成長に幸せを感じることが多いと言われています。
つまり、幸せの定義が「モノ」から「コト」へと変化しているのです。
あなたは上司として、部下は何に幸せを感じて、何をしたいのかを考えたことがありますか? 昭和世代と平成世代では、価値観が大きく違うと実感したことはありませんか? 世代間にみられる価値観の変化に気づかず、価値観が共有できないのは部下の問題と思っている上司も多いものです。

「やりがい」は部下によって異なるもの

21世紀は価値観の多様化の時代といわれ、同じ世代でも人によって幸せの定義が大きく異なります。職場でも、部下一人ひとりに、「やりがいを感じることは何か。何をしたいのか」を聴いてあげて、その実現をサポートしてあげることが大切です。
ただ、20歳代では、自分でも「何が幸せか、何をしたいのか」をわかっていないことも多いのです。そんな部下には、まず目の前のことに専念することを勧めてあげてください。仕事は慣れないうちや成果が出ない時は楽しくないものです。しかし、ある時点からコツをつかみ、仕事の成果が出始めます。成果を継続して出し始めると、上司やお客様からほめられます。そうすることで喜びややりがい、自己重要感を感じます。一つの仕事で3年くらい経つと、自分のスタイルを築き、自分の進むべき道が見えてきます。
やはり、人は楽しいこと、我を忘れて一生懸命になること、人よりも優れていること、人からほめられることに幸せを感じるものです。

仕事時間の充実が人生の充実につながる

1日8時間働くとすると、1日の3分の1は仕事をする時間。この時間が充実していれば、人生もおのずと充実したものとなります。人生で一番充実した時間を生きる20代から60代の40年間が充実するのです。逆に仕事が充実していなければ、人生の最も充実している40年間が、充実していないことになります。
仕事が充実すれば給料が増えていき、お金に余裕ができるのでプライベートでやりたいことができます。仕事以外の時間も充実してくるので、人生に幸せを感じます。つまり、仕事を充実することで、幸せになっていく善循環になります。
しかし、多くの社員はこのことに気づいていません。目の前の損得や好き嫌いを考えて、すぐに諦めて努力をしない部下が多いという声を、現場の管理職や経営者からよく聞きます。

周りへの感謝の心を教えるのは部長の仕事

部長は、厳しい競争を勝ち抜いてきた世代です。理不尽なことに耐えて、人よりも努力してきたからこそ部長になれたのです。その部長の世代から今の20代の部下を見ると、ふがいなく思えるのは当然です。
今一度、考えてみてください。部長まで登りつめたのは本人の努力もありますが、上司の指導や支援、周りや部下が頑張ってくれたおかげでもあります。上司にしてもらったことを今度は部下に返すことが大切です。そして周りや部下の努力に感謝する心も必要です。その気持ちがないまま、部下の足りないところに目を向けて指示命令ばかりすると、部下指導は失敗します。まずは感謝の心を持って、上司だけではなく部下に恩返しをすることです。また、新人の部下に、自分の努力だけではなく周りの支援があるからこそ仕事ができることに気づかせるのも、部長の仕事です。

アブラハム・マズローの唱えた「欲求5段階説」

アメリカの心理学者・アブラハム・マズローの唱えた「欲求5段階説」によると、人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するとされています。その5段階とは、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求、自尊欲求、自己実現欲求です。部下に、自分の目的、理想の実現に向けて努力し、成し遂げるために働くようにするためには、それ以前の欲求を満たすように環境を整えてあげることが求められます。それが部長の役割でもあるのです。

部長は、部下の幸せをどのように実現する?

仕事を通じて、部下の幸せをどのように実現していけばいいのでしょうか。研修ではよく、人生の幸せ曲線ともいえる「ライフライン」を書いてもらうワークをします。ライフラインとは、幸福感の度合いを縦軸に、年齢を横軸に設定し、1本の曲線でグラフを描く自己分析の手法です。そこでは、「人は皆、幸せな時があるのは、不幸を乗り越えてきた過去があるからで、その経験が成長のために必要だった」と気づきます。
もうひとつ気づくことは、人は誰しも「ライフラインが下がった時に、不幸だと感じる」ということです。そのため、私は、短期的に上がり下がりはあっても、長期的に「収入・責任・貢献などが右肩上がりに上がっていくこと」が幸せな人生だと考えています。一時の「プチ成功」は本当の幸せではありません。楽をして成功しようとか、自分だけ幸せになろうとかを考えてはいけません。
ですから、幸せを実現するためには、企業も、部長も、部下も、成長し続けなければなりません。成長をすることで自己実現の領域に入り、さらに幸せを実現していけるのです。
部下を幸せにすることができると、マネジメントスキルもどんどん身についていきます。そして、ある段階になると、育成に手間がかからない自立的に成長していく部下になってくれるものです。それができると部長は役員に昇格することができます。つまり、「部下を幸せにすることで、自分も幸せになる」のです。
そのために、まずは部下に関心をもって、部下の話に耳を傾け、部下一人ひとりの価値観をつかむことから始めるといいでしょう。

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【著者プロフィール】
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)

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