時代の変化に適応すること~松下幸之助『実践経営哲学』に学ぶ
2024年4月10日更新
今日、多くの業界で経営環境が加速度的に変化し、業種によっては技術革新により消滅の危機にあるともいわれます。昔ながらのやり方を十年一日のごとく守っているようでは、いずれ経営に行きづまると松下幸之助は警告しています。この記事では松下幸之助の著書『実践経営哲学』から、時代の変化への適応について解説します。
理念は不変、方策を変える
正しい経営理念は不変であるけれど、その理念を現実の経営の上に表わす方針や方策は時代によって変わるべきものです。つまり"日に新た"でなくてはいけません。
正しい経営理念というものは、基本的にはいつの時代にも通ずるものである。経営というのは、結局、人間が人間自身の幸せをめざして行うものなのだから、人間の本質がいつの時代においても変わらないものである以上、正しい経営理念も基本的に不変であると考えられる。だからこそ、それだけ正しい経営理念をもつことが大切なのである。
しかし、その経営理念を現実の経営の上に表わすその時々の方針なり方策というものは、これは決して一定不変のものではない。というよりも、その時代時代によって変わっていくのでなければならない。いいかえれば"日に新た"でなくてはならない。この社会はあらゆる面で絶えず変化し、移り変わっていく。だから、その中で発展していくには、企業も社会の変化に適応し、むしろ一歩先んじていかなくてはならない。
それには、きのうよりきょう、きょうよりあすと、常によりよきものを生み出していくことである。きのうは是とされたことが、きょうそのままで通用するかどうかは分からない。情勢の変化によって、それはもう好ましくないということが往々にしてあるわけである。
時代に合わせたやり方ができているか
立派な理念をもつ老舗の経営が傾いてしまうのは、旧来のやり方に固執していることが一因といえるでしょう。時代とともに改めるべきは改めていかなくてはなりません。
よく、長い歴史と伝統をもった"老舗"といわれるところが、経営の行きづまりに陥ることがある。そういうところは、正しい経営理念をもたないかというと決してそうではない。むしろ、どこにも負けないような創業以来の立派な経営理念が明確に存在しているのである。しかし、せっかくそうしたものをもちながら、それを実際に適用していく方針なりやり方に、今日の時代にそぐわないものがあるわけである。かつて成功した昔ながらのやり方を十年一日のごとく守っているというような場合も少なくない。もちろん、旧来のやり方でも好ましいものはそのまま続ければいいわけだが、やはり時代とともに改めるべきは次々に改めていかなくてはならない。
たとえば、宗教というものを考えてみても、そういうことが分かる。非常に偉大な宗祖とか祖師といわれる人々が説いた教えは、本質においてはいつの時代にも通用するきわめて立派なものが多い。けれども、その表現については、ずっと昔に説かれたままに今日話をしても、それではなかなか多くの人に受け入れられにくいものである。だからその立派な教えを、今の時代に合わせて説くことによってはじめて人々に広く受け入れられるのである。現実に、そのようにして祖師の教えを現代的な表現に直して説いている教団は、今日にあっても多くの共感を得、信仰を集めている。
"日に新た"な経営を実践する
今日は次々と新しいものが求められる時代です。正しい経営理念にもとづく具体的な方針や方策が"日に新た"であってこそ、その理念は真に永遠の生命をもつのです。
それと同じことで、いかに立派な経営理念があっても、実際の経営をただ十年一日のごとく、過去のままにやっていたのでは成果はあがらない。製品一つとっても、今日では次々と新しいものが求められる時代である。だから正しい経営理念をもつと同時に、それにもとづく具体的な方針、方策がその時々にふさわしい日に新たなものでなくてはならない。この"日に新た"ということがあってこそ、正しい経営理念もほんとうに永遠の生命をもって生きてくるのである。
時代を超えて繁栄を続ける老舗の多くは「伝統と革新」をモットーにしているといわれます。常に時代の流れを読み、それに適応する努力を欠かさぬよう心がけたいものです。
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