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人をつくること~松下幸之助『実践経営哲学』に学ぶ

2023年6月10日更新

人をつくること~松下幸之助『実践経営哲学』に学ぶ

「いい人材が採れない」という悩みを経営者の方からお聞きすることがあります。松下幸之助も創業当初はそのような悩みを抱えていましたが、人づくりに力を入れることで多くの社員が立派に成長し、会社の発展に大きく貢献しました。この記事では松下幸之助の著書『実践経営哲学』から、松下幸之助の人づくりに対する考え方について解説します。

INDEX

物をつくる前に、人をつくる

組織づくりや新手法導入を考えるのも大切ですが、そもそもそれを生かす人がいなければ成果はあがらず、ひいては企業の使命を果たすことができません。

"事業は人なり"といわれるが、これはまったくそのとおりである。(中略)経営の組織とか手法とかももちろん大切であるが、それを生かすのはやはり人である。どんなに完備した組織をつくり、新しい手法を導入してみても、それを生かす人を得なければ、成果もあがらず、したがって企業の使命も果たしていくことができない。(中略)
私はまだ会社が小さいころ、従業員の人に、「お得意先に行って、『君のところは何をつくっているのか』と尋ねられたら、『松下電器は人をつくっています。電気製品もつくっていますが、その前にまず人をつくっているのです』と答えなさい」ということをよく言ったものである。(中略)いい製品をつくることが会社の使命ではあるけれども、そのためにはそれにふさわしい人をつくらなければならない。(中略)この考え方は私の経営に一貫しているものである。

理念に即して人を育てる

人を育てるには、まず正しい経営理念・使命観を確立し、一人ひとりに繰り返し訴えること。そしてその使命観に立って、ときには厳しい叱責を厭わないことも大切です。

どのようにすれば人が育つかということだが、(中略)いちばん大切なことは、"この企業は何のためにあるのか、またどのように経営していくのか"という基本の考え方、いいかえれば(中略)正しい経営理念、使命観というものを、その企業としてしっかりともつことである。
そうした会社としての基本の考え、方針がはっきりしていれば、経営者なり管理監督者としても、それにもとづいた力強い指導ができるし、またそれぞれの人も、それに従って是非の判断ができるから、人も育ちやすい。(中略)
さらに、従業員に対しては常にそのことを訴え、それを浸透させていくことである。
経営理念というものは、単に紙に書かれた文章であっては何にもならないのであって、それが一人ひとりの血肉となってはじめて生かされてくるのである。だから、あらゆる機会にくり返しくり返し訴えなければならない。
そしてまた、(中略)見すごせない、許せないということに対しては、言うべきを言い、叱るべきを叱らなくてはならない。決して私の感情によってそれをするのではなく、使命観に立っての注意であり、叱責である。そういう厳しいものによって、叱られた人もはじめて目覚め、成長していくのである。

任せることで経営の分かる人を育てる

基本的な方針を明示して仕事を任せれば、任せられた人に自主性が育ち、経営感覚が養われます。さらに、仕事能力だけでなく、社会人としても立派な人間を育てることを心すべきです。

それとともに大事なのは、思い切って仕事を任せ、自分の責任と権限において自主性をもった仕事ができるようにしていくことである。(中略)人を育てるというのは、結局、経営の分かる人、どんな小さな仕事でも経営的な感覚をもってできる人を育てることである。(中略)もちろん、大幅に仕事を任せるといっても、基本の方針というものはピシッと押さえておかなくてはいけない。(中略)ここでもやはり、その会社としての基本の考え、経営理念というものがきわめて大切になってくるわけである。
また、人を育てるということについて、特に心しなくてはならないのは、単に仕事ができ、技術がすぐれていればいいというものではないということである。(中略)仕事はよくできるが、社会人としては欠陥があるというのでは、やはり今日の時代における産業人としては好ましくない。(中略)人を育てる場合には、職業人としても社会人としても立派な人間を育てることを強く心しなくてはならないと思うのである。

松下幸之助は人間を「ダイヤモンドの原石」にたとえました。人には皆、磨けば光り輝く可能性が必ずあるという信念に立って、人材育成に取り組みたいものです。

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