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コーチングに関する3つの誤解~機能するための課題とは?

2020年5月19日更新

コーチングに関する3つの誤解~機能するための課題とは?

コーチングを使っているのに部下が育たない――そこには3つの誤解があるようです。人材育成においてコーチングを機能させるための課題を考えます。

コーチングの可能性と限界

コーチングが、日本の産業界に紹介され20年以上の年月が経過しました。コーチングの普及とともに人材育成のあり方が、答えや指示を「与える」スタイルから、問いかけを通じて「引き出す」スタイルへと変化し、「自律型人材」の育成に一定の成果が上がりました。一方で、コーチングに関する理解が不十分なため、職場のコミュニケーションや部下指導の場面において間違ったやり方が横行し、人材育成機能が低下したという弊害も増えています。
本稿ではコーチングの普及とともに垣間見えてきた、その可能性と限界の両面に言及しつつ、コーチングがさらに機能するための課題について考えてみたいと思います。

コーチングに対する誤った解釈と使い方

上司がコーチングを使っている(使っているつもり)にもかかわらず、人材育成の機能が充分に発揮されないという意見をよく耳にします。その原因は、コーチングに対する誤った解釈と使い方があるように思われます。コーチングを学びたての初心者が、陥りやすい誤解には次のようなものがあります。

誤解1:相手の話をさえぎってはいけない

相手の話はさえぎることなく、最後まで聴き切らなくてはいけない。相手の話がどんな内容であっても、話の腰を折るようなことは断じてやってはいけない。傾聴の姿勢があれば、部下はどんどん意見具申や提案をしてくれるようになる。

誤解2:常に相手を受容し、承認しなければいけない

相手の言い分やあり方に対して、異論・反論があったとしても、それをぶつけることなくあるがままに受容・承認しなければならない。受容と承認があれば、どんな相手でもやる気に火を点けることができる。

誤解3:教えてはいけない

教えることによって相手の主体性が育まれなくなる。したがって、質問に  よって相手に考えさせ、答えを引き出さなければいけない。質問すれば、相手は自ら気づくので正しい方向へ歩みを進めることができる。

コーチングの考え方とスキルは、人間の本質に立脚して体系化されたものなので奥が深く、正しい理解と習得のためには相応の時間と実践が求められます。しかしながら、企業において管理・監督職の方がたに対して実施されるコーチング研修は1日ないし2日の短時間型が主流なので、その本質に迫ることは難しく、いきおいこのように間違った解釈をしてしまう管理・監督職が大量に培養されてしまったのではないでしょうか。

部下を叱らない上司・先輩が増えている

コーチングに対する誤解や、職場を取り巻く環境の変化(パワハラ予防、メンタルヘルス対策、離職予防、等々)もあって、世の中の管理・監督職の多くは、すっかり聞き分けのいい、優しい上司になってしまいました。
ある調査(レジェンダ・コーポレーション実施『若手社員の意識/実態調査』(2015年))で、若手社員に「上司・先輩に叱られることがあるか」と質問したところ、「よくある」あるいは「時々ある」と、回答した割合は 41.4%となり、前回(2012年実施)49.6%に対し 8.2ポイント減少しました。さらに「よくある」と答えた割合は 16.4%から 10.5%に減少した半面、「全くない」と答えた割合は、9.7%から 16.3%と、6.6ポイント増加するなど、部下を叱らない上司・先輩が増えているという傾向が明らかになりました。
一方で、叱られることに対する若手社員の受け止め方としては、「厳しい指導への抵抗感をさほど感じない人が多い」という事実が明らかになっています。前出の調査によると、入社6年目までの若手社員の7割以上が「正当な理由があれば、上司・先輩に叱ってほしい」と考えており、その理由として「自分の成長につながる」「改善点を把握できる」など、叱る行為を前向きに受け止めている人が多いという結果が導き出されています。

上司は言うべきことを言わなければいけない

こうした実態を鑑みると、上司はもっと自信をもって部下に言うべきことは言わないといけないでしょう。仕事で失敗したり、成果が出ない理由を他責の姿勢で受け止め、延々と言い訳を続ける部下に対しては、傾聴だけではなく、途中で介入してフィードバックをするべきです。また、間違った考え方や行動を取る部下には、「承認」ではなく「叱責」をしないといけません。
リモートワークが今後も普及するという前提に立つならば、コミュニケーションの質と量が低下した状況のもとで、上司と部下の関係が“なあなあ状態“になってしまうと、組織はバラバラになる恐れがあります。また、労働環境の変化と若手社員の意識の多様化は、企業の現場の人材育成をより難しくしていくでしょう。だからこそ、上司の方がたにはコーチングの本質を正しく理解したうえで、厳しくも愛情に満ちた部下指導を行う覚悟を固めていただきたいと思います。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部部長
1990年慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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