係長に求められるマネジメント力~4つのポイントとは?
2023年10月 7日更新
係長職に求められるマネジメントのポイントとなるのが「目標伝達」「進捗管理」「問題解決」「率先垂範」の4つの項目です。順に解説していきましょう。
INDEX
目標伝達
「目標伝達」とは、係長が自らの言葉でチームの目標をメンバー(部下)に伝えることです。そのために、まず係長自身が目標を定量的・定性的に理解・認識することが肝要です。掲げている目標は、どうなったら「達成した」と言えるのか、それはいつまでに達成すべき目標なのか、などを確実に評価できる必要があります。
部門の性格によって目標を定量化しやすい、しにくいはありますが、定量化しにくい仕事内容であっても、例えば、「〇月中に企画書の附議を完了する」、「〇月末までに、全事業部長の合意を得る」、「今期末までに、全部門への説明会を終える」などの指標を加えることで、達成度を測定できるようにします。
また、目標に向かって取り組む中で、忘れてはならないのが、「何のための目標か」ということです。言い換えると「仕事の意義」そのものです。目標を達成し続けた時に私たちが手に入れるものは何なのか。自分自身やチームは? お客様はどうなっている? など、明確にイメージできればできるほど、推進力が強化されます。さらには、それをリーダー自身の言葉で周囲のメンバーに語っているか、がポイントになると言えるでしょう。
進捗管理
目標がセットされたら、次にそれをどのように進めていくのかを考えます。現場を預かる係長としてまず取り組むべきことは、メンバー(部下)それぞれの仕事の進み具合をチェックし、現場が円滑かつ計画どおりに動いているかどうかを把握することです。進捗状況が計画とずれていたり、何らかの支障が生じたりした場合は、すぐに対策を立てて修正行動を指示し、その後で原因究明・再発防止策の検討・実施という手を打つことが重要です。常にターゲット(目標)を意識したPDCAサイクルの進め方、例えば、指示命令や報連相のポイントなどを検討します。
問題解決
係長として問題解決に取り組むためには、まず以下のような傾向が自身や自身の職場にないかどうかを検討することです。
- 問題の本質が漠然としたまま、あるいは反射的に、いつもワンパターンの反応をする
- 根本的な原因をつきとめることなしに、表面的に対策を考えて問題解決にあたる
- 責任は他にあるとし、そのことを指摘すればそれで任務完了と思ってしまう
- 問題に気づきながら、深く考えることなく放置してしまう
「素直な心」で、思考を柔軟にしてものごとの本質を見ること、「衆知を集める」ために価値観の違う人とも積極的にふれあい視点を変えることなどから、そもそも問題意識を高めておくことが重要です。さらに、問題かのように見える事実(状況)は誰がみても同じですが、その事実の何が問題か、つまり、そもそも何を解決したいのか、といった論点、着眼点は人によって変わってきます。
「○○が確保できない」「では、どうやってそれを確保しようか」といった表面的な打ち手だけでは、係長クラスの問題解決能力としては物足りないことに気づくことも大切です。「そもそも○○に依存しない事業体制の構築」のように本質的な解決策にも手をつけることの大切さも伝えていくべきでしょう。これは、仕事の段取り、優先順位付けにも関連するため、そのあたりを整理しながら丁寧に指導することが求められます。
率先垂範
「率先垂範」とは、リーダーが自ら先頭に立って、模範を示すことです。ただし、気を付けなければならないのは、リーダーが単に先頭に立って行動するだけでは「孤軍奮闘」になってしまうことです。「率先垂範」と「孤軍奮闘」とは何が違うのか。「率先垂範」になるためにリーダーはどうすべきか、「率先垂範」のポイントは何なのか、係長自身にじっくりと考えてもらうとよいでしょう。
時間の流れが現在より緩やかだった時代であれば、リーダーの振る舞いが「孤軍奮闘」だったとしても、結果的にうまくいくこともありました。それは、上司先輩の側も部下後輩もお互いに仕事のスペースを持って、余裕を持って取り組めた、したがって、上司先輩も"行間"を語ることができた、さらには、部下後輩も「この人の背中をみて学ぼう」「どのようにやっているのかよく見て参考にできることは、どんどん盗もう」という意識の高い人が多かった。現在でもこうしたケースが皆無とは言いませんが、これらの背景から、たまたま「率先垂範」になっていただけなのです。
最近はどうかと言えば、やるべきことが山積みで自分のことで精いっぱい、あるいは、仕事に対する価値観も多様化しているため、リーダーが黙って取り組むだけでは、率先垂範になりにくい時代と言えます。率先垂範になるためには「今からこういうことをやるからね」とあらかじめ宣言をする、「次からはあなたにやってほしいから......なぜならば、将来的にはこのような役割を担ってほしいから」と相手への期待を伝える、取り組むプロセスの節目節目でともに振り返る、などの関わりを積み重ねることが求められるのです。
まとめ:現代のリーダーに求められるマネジメント
変化の激しい現代の経営環境のもとでは、過去のデータを分析しても将来を見通すことが難しくなってきました。今必要なのは、現場で起きている事象から、事業を伸長させる知恵を生み出すことです。直接的な付加価値を生み出す現場を預かるリーダーとして、係長職への期待はますます大きくなっています。係長職には、ここに挙げたような初級管理職としてのマネジメント力を身につけ、熱意をもって現場を率いるリーダーとして活躍してもらいたいものです。
北川智章 (きたがわ・ともあき)
人材育成コンサルタント。
1989年、キヤノン販売株式会社(現キヤノンマーケティングジャパン株式会社)に入社。エリアセールスを経て、民間大手企業のアカウント営業を担当。顧客の取引先満足度調査第1位を獲得したことをはじめ、多くの大型案件を獲得。1996年から人材育成事業に携わる。研修トレーナー、コンテンツ開発リーダー、研修企画プランナーを歴任し、その後、人材開発コンサルティング業務に従事。2009年、ビジネスソリューションカンパニーの人材育成事業責任者に就任。カンパニー人材像の策定、若手中長期育成計画、世代別・階層別プログラム、メンター制度などを企画・推進する。2013年、人材育成コンサルタントとして独立。現在、PHPゼミナール講師、パフォーマンスデザイン・コンサルティング合同会社 代表。