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どうすれば成長哲学が持てるのか

2018年9月14日更新

どうすれば成長哲学が持てるのか

組織の成長とは、社員一人ひとりの成長の総和です。そして、社員一人ひとりの成長のためには、各自が「成長哲学」を持つことが大切です。

どうすれば成長哲学が持てるのか

私がとある場所で成長哲学の講話を行ったときのことです。講話のあとの質疑応答で20代後半くらいの女性が、「私には、まだ成長哲学がありません。どうすれば成長哲学を持つことができるでしょうか」と緊張した面持ちで質問をしてくれました。

あなたなら、この質問にどのように答えるでしょうか。私がこの質問に実際にどのように答えたのかというと、「あなたは、もうすでに自分なりの成長哲学を持っていますよ」と、お答えました。

これは皆さんにも知っておいて欲しいことなのですが、成長哲学というものは、これから持つものではありません。成長哲学は皆さんもうすでに持っているものなのです。

例に挙げたその女性は、自分は成長哲学を持っていないと言いましたが、それは本当にそうでしょうか。彼女は質疑応答の場で、自分の分からないことに対して、勇気を出して、声に出して、皆の前で質問をしようと考えました。そしてそれを実行に移しています。彼女はとても素晴らしい成長哲学を持っているのです。

人は誰しも成長哲学を持っている

彼女に限らず、人は誰しも学びたい成長したいという欲求があり、そしてもうすでに成長哲学を持っています。ただ、自分の持っている成長哲学というものは、自分では意外と気づかなかったり、ぼんやりとして不明確だったりするものです。

彼女の場合も、「分からないことは、勇気を出して、質問してみる」という、自分なりの成長哲学を持ち、行動に移していました。しかし、本人はそこにまったく気がついていませんでした。

つまり、多くの人々は自分の成長についてぼんやりとしたものを持ってはいるのですが、明確な指針や方針として持てていないということです。そして、ぼんやりと持った成長哲学によって実践したりしなかったりしているわけです。

まずは組織の成長哲学を明確にする

上記の話は一個人の話でしたが、これはなにも個人に限った話ではありません。会社組織にも、同じことが言えます。

多くの組織もすでに成長哲学を持っています。ただ、明文化されていなかったり、明文化されていても文章が抽象的過ぎて、組織の成長哲学が組織の人材育成方針として活きていないことが多々あります。

成長哲学とは、そもそも「自己成長について真剣に考え、自分なりの成長の道筋や心構えをつくっていく」ということです。

この言葉の主語を一個人から組織に置き換えると、組織の成長哲学が見えてきます。つまり「私たちは組織の成長について真剣に考え、組織としての成長の道筋や心構えをつくっていく」ということになります。

社員一人ひとりの成長哲学を明確にし磨いていくためには、まずは組織としての成長哲学を明確にすることが重要です。そのためには、以下の3つのポイントを意識するとよいでしょう。

【組織の成長哲学を明確にするための3つのポイント】

1.組織にとっての成長とは何かを明確にする

2.組織として、社員にどのような人間的成長を望んでいるかを明確にする

3.組織として、社員の人間的成長に対してどのような姿勢でいるかを明確にする

組織にとっての成長とは何かを明確にする

「組織の成長哲学を明確にするための3つのポイント」について、順番に解説をしていきましょう。まずは1番目の「組織にとっての成長とは何かを明確にする」についてです。

前回の記事で、私は「組織の成長とは、社員一人ひとりの成長の総和である」とお伝えしました。これも言わば、「組織にとっての成長とは何かを明確にする」ことの一つです。

「組織にとっての成長とは......」を明確にできている組織はとても強いですね。明確になっている組織には、組織と人の成長に対するブレがありません。

そのような考えが明確になっていない組織は、長期的な視点のない、短期的で場当たり的な人材育成を行いがちです。

また、「組織にとっての成長とは......」の中に社員一人ひとりの人間性向上の視点が抜けてしまっている組織は、拡大志向で人を育てることをしません。

典型的な例で言えば、ブラック企業や不正不祥事を繰り返す企業、それからハラスメント問題や社内の人間関係に問題を抱えている組織がそうですね。

松下幸之助の、「組織と人の成長哲学」

「組織の成長哲学を明確にするための3つのポイント」を考える上でのよきヒントとして、経営の神様と言われた松下幸之助さんの言葉を紹介します。幸之助さんは、組織と人の成長について次のような言葉を残されています。

「松下電器は何をつくるところかと尋ねられたら、松下電器は人をつくるところです。併せて電気器具もつくっております。こうお答えしなさい」

まだ創業間もないころから、松下幸之助は、事あるごとに、従業員にそう話していた。そのあたりの心境を、後年、次のように語っている。

「当時、私の心境は"事業は人にあり"、つまり人がまず養成されなければ、人として成長しない人をもってして事業は成功するものではないという感じがいたしました。したがいまして、電気器具そのものをつくることは、まことにきわめて重大な使命ではございまするが、それをなすにはそれに先んじて人を養成するということでなくてはならない、という感じをしたのであります。

それで日常の製作の仕事をするかたわら、そういうことを感じまして、そういう話をさせたのであります。それで、そういう空気はやはりその当時の社員に浸透いたしまして、社員の大部分は松下電器は電気器具をつくるけれども、それ以上に大事なものをつくっているんだ、それは人そのものを成長さすんだ、という心意気に生きておったと思うのであります。それが、技術、資力、信用の貧弱な姿にして、どこよりも力強く進展せしめた大きな原動力になっていると思うのであります」

『松下幸之助 物をつくる前にまず人をつくる』より

上記の文中、「社員の大部分は松下電器は電気器具をつくるけれども、それ以上に大事なものをつくっているんだ、それは人そのものを成長さすんだ」という思いが社員に浸透していたとあります。

これは組織の成長哲学が、浸透していたことの現れです。幸之助さんが組織と人の成長に対してどのような成長哲学を持って経営に臨んでおられたのか、そして同時に、幸之助さんご自身がいかに磨き抜かれた成長哲学を持ち生きておられたのか、それが本当によくわかる言葉ではないでしょうか。

次回は、【組織の成長哲学を明確にするための3つのポイント】について続きの解説いたします。


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延堂溝壑(えんどう こうがく)

本名、延堂良実(えんどう りょうま)。溝壑は雅号・ペンネーム。一般社団法人日本報連相センター代表。ブライトフィート代表。成長哲学創唱者。主な著書に『成長哲学講話集(1~3巻)』『成長哲学随感録』『成長哲学対談録』(すべてブライトフィート)、『真・報連相で職場が変わる』(共著・新生出版)、通信講座『仕事ができる人の「報連相」実践コース』(PHP研究所) など。

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