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トヨタ式人づくり~製造現場リーダーの役割とは?

2019年9月12日更新

トヨタ式人づくり~製造現場リーダーの役割とは?

トヨタ式人づくりで、製造現場のリーダーはどのような役割を担うのでしょうか? 部下の育て方、一人ひとりの知恵の引き出し方を解説します。

製造現場のリーダーと人事の役割

トヨタ式の人づくりの大前提は、「人間はすごい」「人間の知恵には限界がない」という考え方です。これをベースに人材育成の方法を組み立てていくのです。しかし、知恵を出そうと思って、ただ座して考えても、そう簡単に役に立つ知恵が思い浮かぶものではありません。そこでヒントになるのが、トヨタ式の「困らなければ知恵は出ない」というキーワードです。PHP通信ゼミナール『「トヨタ式人づくり」の基本がわかるコース』には、次のように説明されています。

知恵というのは何もせずに自然と出てくるものではなく、少し難しい課題や問題、目標を前にして、「何とかしなければ」と必死になって考えるから生まれるものなのです。人の知恵に限界はありません。知恵は全員にあります。ただし、知恵を出すことができるのは、知恵を出す努力を怠らなかった人のみだといえるでしょう。

例えば「従来の半分の時間でつくれるようにする」とか、「製造コストを2割カットする」といった課題や目標を与えることで、部下はそれを解決するために努力し、知恵を絞り出すようになります。そのように導くのが製造現場のリーダーの役割であり、それができるリーダーを育てるのが会社(人事部門)の役割なのです。

人の知恵が機械の働きを向上させる

製造現場で求められる「知恵」とは、具体的にはどういうものを指すのでしょうか。これについても、トヨタ式人づくりには非常によいヒントがあります。それは、「機械に人間の知恵をつける」という考え方です。製造現場に導入される「工具」類や「機械」類について、カタログの説明通りの使い方をしているだけでは、同じ工具・機械を導入した同業他社と同じことしかできません。人間の知恵によって、カタログ以上の働きをさせることで、他社を上回る品質の製品を、他社よりも低いコストでつくれるようになるのです。
トヨタ式では、機械でも工具でもすべて現場の人たちがより良い使い方ができるようにさまざまな改善を行ないます。そうすることでより効率の良いモノづくりが可能になります。これが「機械に人間の知恵をつける」ということであり、こうした「知恵」が多ければ多いほど、その現場では「良いモノをより早くより安く」つくることができるようになります。
モノづくり企業の人事部が主導して、こうした風土づくりにつながる人材育成を行っていけば、「ライバル他社に差をつける」ことが可能となるのではないでしょうか。

教えすぎるリーダーVS部下に考えさせるリーダー

モノづくりの会社が現場のリーダーを育てていくうえで、気をつけなければいけないのは、「教えすぎるリーダー」に対して、「教えすぎないように指導する」ことです。「教えすぎるリーダー」は、一見親切で、指導が行き届いているように思われます。しかし、その状態が続くと、「教えられすぎた部下」たちは、やがて「自分の頭で考えない」ようになってしまいます。そして、常にリーダーの指示を待ち、指示がないことはやらないようになるでしょう。これでは「考える力」が伸びません。つまり、「知恵」が出てこなくなるということです。
このあたりに人づくりの難しさがあります。例えば、部下がムダな作業を行っていて、それにすぐに気づかなかったとしても、リーダーは焦って答えを教えるべきではありません。もちろん大きな危険や損失が目に見えていたら、緊急の改善を命じることはあるでしょう。しかしそれ以外の場面では、部下が自分でムダを見つけるまで、忍耐強く待つことが肝要です。リーダーに求められるのは、まさにこの「忍耐力」であるといえます。課題に対して、部下に考える時間を与え、部下が自分で答えを見つけるまで我慢し続けられるリーダーを育てていきましょう。
自分で答えを見つけるというのは簡単なことではありません。しかし、答えを自分で見つける力は確実に仕事の質を高め、自分を成長させてくれます。仕事における答えは教わるものではなく、考え出すものなのです。

工夫を促しながら部下の成長を見守る

人を育てる立場にあるリーダーは、育てられる側の視点も持っておかなければいけません。そもそも人はそれほど早く成長できません。この前提に立って、我慢強く指導を行っていくことが大切です。また、誰もが同じペースで成長するわけでもありません。それぞれ伸び悩む時期があります。しかしその人が努力を続けていけば、ある日突然開眼して、大きく成長することもあります。子どもの頃、なかなかできなかった逆上がりが、毎日練習しているうちに、ある日突然できるようになるのとよく似ています。
努力といっても、漫然と同じことを繰り返しているだけでは、なかなか成長することはできません。何らかの課題に取り組む過程において、常に「小さな工夫を積み重ねていく」ことがポイントです。工夫を積み重ね、繰り返し努力することで、「できない」が「できる」に変わるのです。工夫を促しながら、部下の成長を見守るのがリーダーの役割です。
このようなリーダーを育て、各現場に配置すれば、各現場のスタッフたちは大きく成長し、考える力を身につけ、知恵を出すようになります。その努力の集積が、会社に成長をもたらすのです。
ぜひトヨタ式の人づくりの「知恵」を導入し、応用し、貴社の人材育成に役立てていただきたいと思います。

※本記事はPHP通信ゼミナール『「トヨタ式人づくり」の基本がわかるコース』を抜粋・編集して制作しました。

通信教育『「トヨタ式人づくり」の基本がわかるコース』

森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。

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