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人を活かす上で必要な人間観とは?

2024年6月18日更新

人を活かす上で必要な人間観とは?

人的資本経営がブームのような状態になり、人を活かすテクニックやノウハウを紹介するセミナーや書籍が花盛りです。やり方ももちろん大切ですが、それ以上に大切なのは、人をどのように見るかという人間観の中身です。そこで本稿では、さまざまな人間観を紹介しながら、リーダーはどのような人間観をもつべきか、考察したいと思います。

INDEX

部下に見透かされる「上司の人間観」

人は誰しも、独自の価値観や、ものの見方・考え方をもっています。それらのうち、人に対する見方である「人間観」が、組織のパフォーマンスに大きな影響をもたらします。特に組織責任者や、指導的立場にある方は、自らの人間観の内容を点検しておく必要があります。
もし、上司がネガティブな人間観をもって部下を見ていると、相手はそれを敏感に感じ取り、やる気やチャレンジ意欲、責任感などを瞬時に低下させてしまいます。その状況で、いくらコーチングやフィードバックなどの人材育成スキルを行使したとしても、うまくいかないでしょう。

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さまざまな人間観

では、リーダーはどんな人間観をもつべきなのでしょうか。人間観には古今東西さまざまな考え方があって、唯一絶対の考え方があるというわけではありません。

「X理論-Y理論」 米国の心理学者・経営学者D・マグレガーが提唱
・X理論 ⇒ 人間は怠け者で放っておくと仕事をしなくなる
・Y理論 ⇒ 人間は自己実現のためにみずから進んで問題解決をする

「性善説」 孟子(もうし)の説いた人間観
・人間は善を行うべき道徳的本性を先天的に具有している

「性悪説」 荀子(じゅんし)の説いた人間観
・人間の本性は利己的欲望であり、善の行為は後天的習得によってのみ可能

このように、人間観についてはさまざまな議論がなされ、上記以外にも多種多様な考え方が存在していますが、大別すると人間の本質をポジティブに捉える見方とネガティブに捉える見方の2つに集約されます。どちらが正しく、どちらが間違いという判定ができるほど単純ではないものの、マネジメントの観点に立つならば、ポジティブな人間観にたったほうが、個人と組織のパフォーマンスは上がるでしょう。なぜなら、ポジティブな人間観をもてば、おのずと人と組織の可能性に意識が向かい、それらを引き出そうという行動をとる確率が高くなって生産性が上がるからです。

松下幸之助のエピソード~人のいいところを活かして使う

ここで松下幸之助の人の活かし方に関するエピソードをご紹介しましょう。
松下電器(現・パナソニックホールディングス)元常務の高畑敬一氏(故人)は、労働組合の委員長を務めていた時、人間性の面で問題の多かった、ある役員の解任を松下幸之助に直言したことがありました。そのときの幸之助とのやりとりについて、次のように語っています。

名前はあげられませんが、かなり(松下幸之助)相談役に信頼されている役員さんがおられました。その方は、労使関係について全然わかっていないし、組合に対しても理解がなく、従業員に対する温かさ、思いやりがない。自分の好みで人を使う、非常に人使いの荒い役員がいました。私どもは「絶対困る」ということで、「そんな人は辞めさせてもらいたい」ということを相談役にずいぶん言ったことがあるんです。
そのときでも相談役は「あいつはそういう欠点はあるけれど、ものを作らせたらあいつにかなうものはいない。いくら組合や従業員に理解がないと言っても、ものづくりがなければ、仕事がなければ、会社が成り立たんだろ。だから欠点に目をつぶって、あいつを使わせてくれ」と言われるんですよ。
このように、"人間のいいところ"を活かして使っていくというのが、相談役の経営の進め方でした

「PHPゼミナール」での特別講話(1979.2.7)より

松下幸之助の人間観

前述のエピソードから垣間見えるのは、人の長所にフォーカスを当てる、松下幸之助の人間観です。幸之助は、著作の中で、リーダーがもつべき人間観についてたびたび言及しています。

人間はだれもが、磨けばそれぞれに光る、さまざまなすばらしい素質をもっている。だから、人を育て、活かすにあたっても、まずそういう人間の本質というものをよく認識して、それぞれの人がもっているすぐれた素質が生きるような配慮をしていく。もしそういう認識がなければ、いくらよき人材がそこにあっても、その人を人材として活かすことはむずかしいと思う

『人を活かす経営』PHP研究所

幸之助は、このような人間観に立脚しつつ、人は誰もが長所と短所を併(あわ)せもっている存在だと考え、相手の長所に目を向け、それを引き出そうとしていたのです。

改めて自身の人間観の再点検を

ダイバシティの進展や、一人ひとりの就労観の変化などの要因によって、部下を育て組織の一体感を維持することが、今後、より一層困難になるでしょう。そのような状況になると、ついついテクニックに走って対処療法的な対応をしがちです。
しかし、くり返しになりますが、大事なことは人の心を動かして、やる気や主体性を引き出すことです。そして、人の心はテクニックだけで動かせるほど単純なものではありません。リーダーが「彼(彼女)ならきっとできる」という肯定的な見方をしたとき、それがメンバーに伝わってその人の心に火が点くのです。
だからこそ、リーダーの立場にある方々には、どうすれば個と組織が活かされるか、そのためにはどんな人間観をもつべきか、立ち止まって考えることをお奨めしたいと思います。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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