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部下のリーダーシップを育てるには?

2020年7月23日更新

部下のリーダーシップを育てるには?

上司は部下のリーダーシップを育てていく必要があります。具体的な育成方法をご紹介します。

部下を育てられる上司を育成する

変化の激しい経営環境のなかでは、管理職だけでなく、誰もが学習によってリーダーシップを身につけ、よい影響を与え合うことが重要です。リーダーシップ研究の第一人者である舘野 泰一氏(立教大学経営学部 准教授)は、そんな新しいリーダーシップを「職場やチームの目標を達成するために他のメンバーに及ぼす影響力」と定義づけています。
このような「全員発揮のリーダーシップ」を実現していくため、上司には、部下がリーダーシップを発揮できるように導いていくことが求められます。つまり、会社の人材育成の一環として、「部下のリーダーシップを高められる上司の育成」も重要な課題となるのです。上司自身にとっても、「部下に教える」ことを通して、リーダーシップに対する理解をより深めることができるはずです。
部下の指導においては、以前の記事「全員発揮の「新しいリーダーシップ」が組織を変える!」でご紹介したリーダーシップに必要な4つの要素、「リーダーシップの基礎理解」「自己理解」「倫理性・市民性」「専門知識・スキル」を、次のように応用するといいでしょう。

1)部下に「リーダーシップの基礎を理解」してもらう

通信ゼミナール『「新しいリーダーシップ」入門』で示されている、以下のリーダーシップの基礎を部下に伝え、理解してもらうことから始めます。

「リーダーシップは権限に関係なく全員が発揮できる」
「一人のカリスマ的リーダーに依存せず、全員がリーダーシップを発揮したほうが、現代社会の激しい変化に対応しやすい」
「目標を達成するために、周囲によい影響を与えることがリーダーシップ行動である」
「自分らしさを活かしてリーダーシップを発揮する」

2)部下に「自己理解」をしてもらう

部下育成においては、上司から「(その部下が)周りの人からどう見えているか」を伝えることが大切です。こうした情報を伝えることを「フィードバック」といいます。
これは部下にとって「成長の糧」になりますが、同時に「耳が痛い」と感じられる場合もあります。そのため、あまりに一方通行だと人間関係がぎくしゃくしてしまうことも考えられます。これを防ぐためにも、上司は、「部下から自分に対してフィードバック」をしてもらうように促し、職場全体で「相互フィードバックができる文化」を育てていくことが重要です。これにより、職場全員の「自己理解」が進みやすくなるでしょう。

3)部下の「倫理性・市民性」を育む

倫理性とは、「自分よりも周囲の人の利益を優先し、社会全体をよくする視点をもつこと」だといえます。また市民性とは、「所属するコミュニティのために行動しようとすること」と考えられます。社会を改善し、コミュニティをよりよい状態にしていくためには、「今そこにある不満を提案に変えて、具体的に問題解決に取り組むこと」が求められます。また、「不満を提案に変えることがリーダーシップである」というとらえ方もあります。こうした考え方を部下に伝えて、価値観を共有していくことが重要です。

4)部下の「専門知識・スキル」を伸ばす

部下の専門知識やスキルを伸ばしていくためには、まず上司自身が「率先垂範」して学んでいかなければなりません。上司が努力して成長していく姿を見せることで、部下によい影響を与えていくのです。さらに、部下が努力して専門知識やスキルが高まってきたら、それを現在の仕事に生かせるように導いてあげるのも、上司の大事な役割です。部下は、身につけた知識やスキルが直接仕事で役に立つことでやりがいを感じ、さらに努力するようになるでしょう。

「リーダーシップを学ぶサイクル」を支援する

部下がリーダーシップに必要な要素を理解し、スキルを伸ばし始めたら、次の段階では、実際に「リーダーシップ行動」を経験してもらいつつ、上司は側面から支援をしていきます。次のサイクルに従って実際に「経験」することで、部下はリーダーシップを少しずつ身につけていけるはずです。

1)リーダーシップ行動の目標を設定する

最初にリーダーシップ行動の目標を部下自身に設定してもらいます。そして部下が決めた目標を、上司はあらかじめ共有しておきます。目標を共有しておけば、それを念頭に置いて部下の行動が観察できるので、より的確なフィードバックを行うことができます。

2)経験をサポートする

部下がリーダーシップ行動に挑戦している間、上司はほどよい距離感でこれをサポートしていきます。もちろん本人が自分で行動して経験しないと意味がありませんから、あまり頻繁に手を差し伸べるべきではありません。少々危なっかしく見えても、ある程度我慢をして、部下の経験値を高めていくのです。その際、あまりにも放置し過ぎないように、時折11でコミュニケーションをとり、必要に応じてアドバイスをします。

3)フィードバックする

上司は部下のリーダーシップ行動を観察し、「事実に基づいた情報」を収集しておくようにします。新しいチャレンジをしているとき、部下は気持ちに余裕がなくなり、自分を客観視できていないことが多いものです。そこで上司が事実に基づいて助言し、周囲からどう評価されているかなどをフィードバックしていきます。こうした対応により、部下は自分の行動について自己理解しやすくなるはずです。

4)振り返りの機会をつくる

部下がある程度「リーダーシップ行動」の経験を積んだら、自分の行動を振り返り、どう感じたかなどについて、部下自身にノートなどに書き留めてもらいます。改めて書くことによって、部下は自分の頭の中を整理することができます。その後、また「1on1」の対話の時間を設けて、うまくいったことについては「なぜうまくできたのかわかりますか?」、うまくいかなかったことについては「なぜうまくできなかったのかわかりますか?」といった質問を投げかけて、部下自身によく振り返ってもらうようにします。


リーダー研修などを通して、このような形で部下の育成ができる上司を育てていけば、組織の全員がリーダーシップを発揮できる理想の状態に近づいていくのではないでしょうか。


※本記事は、PHP通信ゼミナール『「新しいリーダーシップ」入門』のテキストを抜粋・編集して制作しました。

通信ゼミナール『「新しいリーダーシップ」入門』


森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。

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