マネジャーの仕事と5つの役割
2020年8月21日更新
マネジメントとはどういう仕事なのか、どんな役割を果たしていくのか、プレイヤーとの違いは? マネジャー育成にあたって、まずはその定義を整理して考えてみましょう。
「マネジメント」を定義する
マネジメントという言葉は「管理」という意味ですが、本稿ではもちろん「経営の世界での管理」について考察してまいります。PHP通信ゼミナール『プレイングマネジャーの仕事術』によれば、マネジメントとは次のように定義されています。
マネジメント=マネジャーのリーダーシップとメンバーの結束により、リソース(組織の資源)を有効活用して、目的を達成するため継続的に行動すること
この定義を見れば、個別の仕事を担当するプレイヤーと、チーム全体を率いるマネジャーの役割の違いがよくわかると思います。企業の人材育成においては、こうした基本的な考え方から教育し、意識改革を進めていくことが不可欠です。
ちなみに「リソース」とは、「有効活用することで、組織の目的達成に役立つもの」のことです。具体的には、「時間、情報、ブランド、企業文化、チームワーク、業務ノウハウ、社内の他のチームのもつリソース」などがあげられています。
マネジメントサイクルとは
上記の定義の中に、マネジメントは「継続的に活動すること」と書かれています。「継続」するための具体的な方法としては、よく知られている「マネジメントサイクル」を活用します。マネジメントサイクルにはいくつかの種類がありますが、ここでは最も一般的な「PDCAサイクル」を紹介しておきたいと思います。マネジャーは、この「PDCAサイクル」を使って、チーム全体の動きをマネジメントしていくのです。そしてこのサイクルを日々繰り返していくことによって、チームの目的を一つひとつ達成し、会社の発展に寄与していくわけです。
Plan:計画を立案
Do:計画に基づき実行
Check:実行した結果を検証する
Action:検証結果をもとに改善案を実施し、改善策を盛り込んで再び計画を立案し、サイクルを回す
マネジャーの役割とは
昨今、一般的になってきた「プレイングマネジャー」は、プレイヤーとしての仕事をこなしながら、同時にマネジャーとしての役割も果たしていかなければなりません。マネジャーの役割について、先述の通信教育では、著名な経営学者のドラッカーが提唱した考え方をアレンジして次のように紹介しています。
1)「目的・目標」を設定する
マネジャーはチームの目的や目標を明確にして、チームとして「何をしなければならないか(=業務)」を決める。
2)メンバーと業務とリソースを「組織化」する
決められた業務に対して、マネジャーは「人員」「機材・資材」「予算」などのリソースを割り当ててチームを編成し、メンバーの役割分担を行う。
3)メンバーを「動機づける」とともに「コミュニケーション」を図る
チームとして高いパフォーマンスを発揮していくために、マネジャーはメンバーとコミュニケーションをとりながら動機づけを行う。ともに働くメンバーは当然「人」であり、マネジメントにおいても「人」という観点を持たなければならない。
4)メンバーの「業績評価」を行う
マネジャーは、自分たちが手がける仕事を分析し、評価基準を決定し、その基準に基づいてメンバーの業績を評価する。これは人事考課の意味合いもあるが、同時にメンバーの仕事ぶりを確認し、よいところ、改善すべきところをフィードバックしていく目的もある。
5)メンバーと自分の「能力開発」を行う
マネジャーもメンバーも、経験値を積むことで能力は日に日に高まっていく。しかし同時に、世の中の変化にともなって事業環境は変化し続け、各種の技術もどんどん進化していく。そのためあらゆるビジネスパーソンは、常に勉強を重ねてスキルアップを図っていかなければならない。マネジャーは、さまざまな機会を利用して、自分自身とメンバーの「能力開発」を行っていくべきである。マネジャーとメンバーの能力が向上すれば、その相乗効果でチームの実力も大きく伸びていくはずだ。
こうした要素は、節目研修などの機会に新任マネジャーに学んでもらうといいでしょう。特にプレイングマネジャーの場合、人事教育の担当者が主導して意識変革を促し、うまく立ち回れるように教育していくことが大切です。目の前の仕事に追われ、自分がマネジャーとして何をすべきかを見失う前に、役割認識を促すことが不可欠といえるでしょう。
チームのビジョンを示す
チーム全体でより大きな力を生み出していくには、メンバー全員がひとつの方向を向いて努力していくことが不可欠です。しかし、メンバーは一人ひとり属性が異なり、個性も異なり、物の見方や考え方も異なっており、全員がそろって同じ方向を向くのは非常に困難だといえます。そこで重要なのは、リーダーであるマネジャーが「チームのビジョン」を示すことです。このビジョンを旗標に、すべてのメンバーが力を結集していくのです。
チームのビジョンづくりには、それぞれの会社が示している大きなビジョンをもとにしながら、それをより具体的な言葉に「翻訳」する方法があります。例えば次のように考えることができます。
(例1)
企業のビジョン「技術開発で世界に貢献する」
↓
チームのビジョン「社内で技術力一番のチームになる」
(例2)
企業のビジョン「顧客満足は従業員満足から」
↓
チームのビジョン「定時で帰って結果が出せるチーム」
(例1)(例2)の企業のビジョンは、会社の目的としてはよく理解できますが、やや抽象的ともいえます。それをもとに、各部署で実際に何をすればいいのかを考えることで、チームのビジョンがより明確になります。マネジャーがビジョンを示すことで、各メンバーは「何をどのように努力すればいいのか」がわかり、具体的な行動に結びついていくはずです。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『プレイングマネジャーの仕事術』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。