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部下育成がうまくいかないときに考えたい「フォロワー視点」

2022年5月16日更新

部下育成がうまくいかないときに考えたい「フォロワー視点」

部下育成がうまくいかない。部下にいろいろ要求するけれど、納得してもらえない。こちらの思いを部下が受け止めてくれない、等々。部下との関係性に悩みを抱える上司は案外多いのではないでしょうか。
そこで本稿では、そうした課題を解決するためのヒントとして「フォロワー視点」という考え方をご紹介します。

INDEX

部下育成のための「フィードバック」が機能しない原因

管理職に必要なスキルとして「フィードバック」に注目し、そのテーマの研修を実施する企業が増えています。ところが、研修で基本的な考え方と手法を学んでも、いざ実行となると思うようにフィードバックが機能しないというケースが少なくないようです。

なぜ、フィードバックが機能しないのでしょうか。現場の管理職の方がたの声に耳を傾けてみると、「腹落とし対話が難しい」という意見が数多く聞こえてきます。腹落とし対話とは、上司からのフィードバックを部下が納得して受け入れるような対話のことを言います。

つまり、上司からの指摘に対して、部下が「その通りだ」と腹落ちしていないことが、フィードバックが機能しない原因のように思われます。

参考記事:PHP人材開発「部下指導の最強の武器となる人材育成法 フィードバック」

「フォロワー視点」という発想

ではなぜ、部下が腹落ちしないのでしょうか。部下には部下の主義・主張があるのに、それを上司がくみ取らないまま自らの論理を押し通すので、相手の内面に不信感や反発、あきらめの感情を生み出してしまうのです。

そこで、大切になるのが、フォロワー視点を上司がもつということです。つまり、フィードバックを行った後、それに対して部下(=フォロワー)が、どのような受け止め方をしているか想像したり、相手の表情や振る舞いをしっかり観察して、内面の心理状態がどうなっているか、思いを致らせたりしてみるのです。そうすることで、部下がなぜ腹落ちしないのか、原因がつかみやすくなり、次の一手を打つアイデアがおのずと見えてくるでしょう。

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エンパシーとシンパシー

昨今、心理学の分野で注目を集める概念に「エンパシー」があります。それに似た概念に「シンパシー」がありますが、両者の定義は次のように異なります。

エンパシー
他者の感情や経験などを理解する能力

シンパシー
1.誰かをかわいそうだと思う感情、誰かの問題を理解して気にかけていることを示すこと
2.ある考え、理念、組織などへの支持や同意を示す行為
3.同じような意見や関心を持っている人々の間の友情や理解

(出典:oxfordlearnersdictionaries.com)

コラムニストのブレイディみかこ氏によると、「エンパシーのほうは能力だから身につけるものであり、シンパシーは感情とか行為とか友情とか理解とか、どちらかといえば人から出て来るもの、または内側から湧いてくるもの」と区別したうえで、エンパシーを「必ずしも同じ意見や考えを持っていない相手に対して、その人の立場だったら自分はどうだろうと想像してみる知的作業」(※1)と定義づけています。

ビジネスの現場においてフォロワー視点に立つとは、まさにエンパシーのことであり、そういう意識をもって行動することで身につけることができる能力なのです。

上司は「人の気持ちはわからない」という謙虚さを

とはいうものの、相手の内面の意味世界を100%理解することは簡単なことではありません。

私たちは、日常生活や仕事の場面で、「彼の考えを理解している」「彼女の気持ちがよくわかる」といった発言を安易にしがちですが、ほんとうは相手の気持ちの数%しかわかっていないのかもしれません。

したがって、上司にはフォロワー視点に立って、部下の内面の感情をくみ取ろうとする努力をしつつ、「まだまだ相手のことをわかっていない」という謙虚な姿勢をもつことが求められます。その地道な努力が、部下との関係を良好にし、上司-部下が共に成長する道が拓けてくるでしょう。

※1『他者の靴を履く アナ―キック・エンパシーのすすめ』(ブレイディみかこ著/文藝春秋刊)

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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