課長と係長、いちばんの違いは?
2015年9月18日更新
課長と係長では、その役割にどのような違いがあるのでしょうか。課長に求められる能力や、課長になるまでに開発・強化すべきスキルもあわせて考えてみましょう。
課長の役割とは?
課長研修のご依頼を受ける際に、経営者に「課長に期待する役割は何ですか?」とお訊ねすると、必ず共通して出てくる重要な役割があります。
●組織目標を達成すること
●部下を育成し、強い組織をつくること
●職場の問題を解決すること
つまり、企業の規模や業種が違っても、課長の役割に根本的な違いはないということです。
課長の役割を一言でいうなら、リーダーとしてビジョンや組織目標を示し、部下の力を最大限に引き出し、チームワークをよくすることで、組織の成果を上げることです。
係長から課長になると何が変わるのか?
係長から課長に昇進すると役割が大きく変わります。課長になった人が実感するのは、次のようなことではないでしょうか。
●指示・命令・評価される立場から、指示・命令・評価する立場になる
●プレイヤー中心の仕事から、プレイヤーの仕事をしながら組織をマネジメントする仕事になる
●自分の成果だけではなく、組織全体の成果に責任を持つ
●処遇面では「管理職手当」がつくが、残業代はもらえなくなる
一般的に、多くの課長はプレイヤーとしての仕事を引き続きやりながら、組織のマネジメントも課せられる「プレイングマネジャー」です。
係長は、自分の仕事で結果を出すことを求められますが、組織をマネジメントする立場ではありません。課長になると求められる「組織をマネジメントする」とは、管理職として組織の中で権限を持ち、組織を管理するということを意味します。
また権限が与えられるということは、同時に、責任を負うことも意味します。自分の仕事に関して責任を問われるのに加えて、組織としての結果や部下が失敗をしたときや結果を出せないときにも責任を問われます。
課長に求められる能力とは
課長研修の際に受講者から悩みを聞くと、異口同音に「忙しい」「時間がない」「疲れる」と言います。多くの課長は、プレイヤー業務も抱えているため、マネジメントをする時間がないようです。ただ時間がないだけではなく、リーダーシップやマネジメント能力が身についていないことも大きな問題です。
ほとんどの課長は、リーダーシップやマネジメント能力があるから課長になったわけではありません。プレイヤーとして優秀だから課長になったのです。しかも、課長になるための教育も受けずに、必要な能力・スキルを身につけず、自覚もないまま課長に昇進した人がほとんどです。
課長の能力開発を考える際に最も重要なことは、リーダーシップとマネジメントという2つの能力を養成することです。これらの能力は大きく以下のように定義することができます。
●リーダーシップ
どちらの方向に向かって進むのかという方向を指し示すこと。
組織のビジョンを明示して、経営方針をブレイクダウンし、組織の目標を掲げること。
●マネジメント
ビジョンに向かって、経営資源(人・もの・金・情報など)を効率よく管理して目標を達成すること。
課長は、リーダーでありマネジャーですが、リーダーとマネジャーは求められる機能が明らかに違います。これら2つの能力を身につけることで、はじめてその職責を果たすことができるといえるでしょう。
課長になるまでに開発・強化すべきスキル
課長がリーダーシップを発揮してマネジメントを実践するためには、課長になるまでにビジネスの基本として3つのスキルを開発・強化しておく必要があります。その3つのスキルとは、「タイムマネジメント」「プレゼンテーション」「コーチング」のことです。
課長がマネジメントの仕事をするためには、時間に対する生産性を上げることです。「忙しい」「時間がない」「仕事の優先順位がわからない」ということではマネジメントに時間を割けませんし、組織の成果を出すこともできません。仕事の生産性を高めるタイムマネジメント研修を受講しておくことをお勧めします。
また、プレゼンテーションが苦手というビジネスパーソンは少なくありません。課長になれば、組織のビジョンや経営方針をわかりやすく伝えることが求められますから、わかりやすく伝えるプレゼンテーションを学んでおくことも必要です。
さらに、組織のビジョンやミッションを指し示した次に重要なことは、組織の人間関係を良くして部下に主体的に動いてもらうこと。そのため、コーチングも必須のスキルであるといえます。
課長は、経営者の方針の具現化、組織のビジョン設定、職場の問題解決、部下育成と強い組織づくりなど、実に多岐にわたる役割を期待されます。新任課長研修が重視されるのは、この役割を果たすためにリーダーシップとマネジメントを学ぶ第一歩という位置づけがあるからといえるでしょう。
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)