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部長の立場、機能、3つの役割

2023年4月17日更新

部長の立場、機能、3つの役割

複雑性・多様性を増す環境の中では、どんなに優秀な経営者であっても一人で組織を牽引することは困難です。したがって、各部門のリーダーたちが「部門経営者」意識をもって仕事を進め、その総和として全社の経営が前に進む状態が理想なのです。本稿では、部門経営を支える部長の立場、機能、役割について考えてみたいと思います。

INDEX

部長の立場

他の役職と比較して特徴的な、部長職固有の立場として以下のような項目があります。

社員(役員以外)の中で最高の地位・立場

部下を預かる責任と権限(指示命令権)は社員の中で最も重く、また、会社全体を視野に入れた発想、すなわち経営者意識に立った行動が求められる立場に立っています

経営トップの代行者、分身

経営理念やトップ方針を理解して実践すると同時に、全社目標の一部を分担し、その達成の責任の一端を負う立場とも言えます

部門の最高責任者、意思決定者

全社方針・部門方針を部内に徹底するとともに、マネジメントとリーダーシップを使い分け、業績向上と将来への布石を行う立場に立っています

部長職の主な仕事と機能

部長職の取り組むべき主な仕事を列挙すると以下のように非常に多岐にわたります。そして、それらを目的別に整理しカテゴライズすると、発揮すべき機能が明らかになります。

業務遂行機能

・部門の日常活動の統括管理
・業績管理
・管轄する経営資源(人、モノ、カネ、時間、情報、など)の有効活用

維持・管理機能

・全社方針、経営トップの意思(ミッション、目標、方針など)の部内徹底
・自らの意思としての部門のビジョン、方針の策定と徹底
・社内他部門、社外関係者との連携、調整
・コンプライアンスマネジメント
・部門の活性化、人材育成

変革・創造機能

・来期以降に向けての戦略、及び計画の立案
・変革、改善活動
・新しいアイデアの汲み上げ、創出

重要性を増す「部」の機能・役割

事業活動を行う上で、市場環境の変化に応じて素早く意思決定をし、臨機応変に対処することが求められています。そして、その活動を支える基本単位としての「部」と、その運営のすべての責任を負う部長の役割がかつてないほど重要性を増しています。

歴史の古い会社ほど事業領域が多岐にわたる傾向があります。同じ会社でも事業が違えば戦う市場が異なったり、求められる戦略やコアコンピテンシ―がまったく別のものになるケースがあります。
近年、ホールディングス制を導入する会社が増えていますが、その背景には、全社統一のマネジメントが困難になり、事業ごとに戦い方を変えなければいけないという事情があるようです。
そして、事業の特徴に合った的確な意思決定をしたり、市場環境の変化に柔軟に対応するためには、権限を現場に下ろす必要があります。その受け皿の一つになる組織単位が「部」なのです。

部長の影響力

部長が自分の立場を正しく認識せず、役割を理解していなかったり、役割遂行が不十分な状態であったりすると、どうなるでしょうか。まず、部を構成する組織とメンバーが方向性を見失い、ばらばらになって機能不全に陥るでしょう。そして、一つの部が「病気」になれば、その病状は必ず他の部にも伝播します。やがて会社全体が健康状態を損ね、事業活動を推進する力が低下してしまいます。この状況が続けば、いずれ組織の生存が危ぶまれるのは明らかです。
ことほどさように、全社的な観点に立てば、部門経営者である部長の影響力はとても大きいことがわかります。

部長の役割

部長が果たすべき役割とはどのようなものでしょうか。「部」を効果的・効率的に機能させるには、部長が自らに求められる役割を理解したうえで、それを果たし切る必要があります。
具体的に列挙すればたくさんの項目が出てきますが、それらを大別すると以下の3つに集約されるでしょう。

(1)成果を上げること

会社を存続させる大前提は、活動資金となる利益を確保することです。従って各部においても、利益創出につながる成果を上げることが大命題であり、その責務を果たすのが部長の役割です。
ただし、ここでいう成果とは、短期的視点のものではなく、中長期の視点に立った成果のことです。つまり、3~5年先を見据え、将来の成果につながるような仕掛けや仕込みを行うのが部長の仕事なのです。「今月の成果をどうする」「今期の対策をどうする」といった、目先のマネジメントは課長以下のメンバーに任せるべきです。

(2)組織を強化すること

安全でおいしい農作物を収穫するためには、良質な土壌をつくり、不断の手入れを通じてその状態を維持しなければなりません。同じように経営活動で成果を獲得するためには、それを生み出す土壌ともいえる組織を強くする必要があります。
強い組織とは、メンバーのやる気と主体性が高く、日々の仕事を通じて成長が図られ、共通の目的に向かって前進し続けているような組織を指します。組織を強くするために、部長はビジョンを語り、メンバーを巻き込むとともに、密な対話を通じて関係の質を高めなければいけません。時間と労力がかかりますが、これこそが部長の仕事なのだと覚悟を決めてやり続けることが大切です。

(3)新しい価値を生み出すこと

「人の手によるものはすべて陳腐化する」というドラッカーのことばがありますが、変化の激しい時代、そのことばの重みが増しています。現状で、最善の仕組みや商品をつくったとしても、数カ月も経てば陳腐化していることが往々にしてあります。したがって、部長は「多・長・根」(=多角的、長期的、根本的)の視点から、現状の組織や仕事の仕方を見直し、新しい価値を生み出すために必要な改革の手を打たなければいけません。それは、目先の業務処理に追われている課長職以下のメンバーにはできない仕事、つまり部長がやらないといけない仕事なのです。

部長、課長、係長 役割の違い

実は上記3つの役割は、部長だけではなく、すべての管理職に共通して求められるものなのです。ただ、その役割はポジションに応じてレベル・内容が大きく異なります。

管理職に求められる役割の比較

管理職の役割

他の管理職との比較でわかるように、部長の仕事は、未来をイメージし、そこからバックキャスト(未来のありたい姿を実現する道筋を考えること)して、今やるべき課題を明確にし、人と組織を動かしてそれを実行することなのです。

参考記事:
管理職はどこから? 求められる役割や必要なスキルを解説│PHP人材開発
部長と課長はどう違うのか――3つのマネジメント力│PHP人材開発

「部門管理者」から「部門経営者」へ

そのような役割を担う部長のあるべき姿を一言集約するなら、「部門経営者」という表現が当てはまるでしょう。部門経営とは、部門を一つの独立した経営体と捉え、部門長が責任を持ってその経営のすべてを遂行することを意味します。
そして、その対比的な意味をもつのが、部門管理という概念です。部門管理とは、他から与えられた課題に取り組むことです。とかく、自分の担当領域のことだけを考え、低い視座、狭い視野、偏った視点に陥りがちです。
本来重責を担うはずの部長が部門管理者になってしまうと、全社的な経営上のパフォーマンスに重大な悪影響が及びます。したがって、部長が自らの役割を正しく理解すると同時に、それを遂行できているか否かを客観視することが重要になります。

その際に使える便利なツールが、
「自分は、部門経営者か? それとも部門管理者か?」
という問いです。
部長の方がたには、定期的にこのような問いに向き合って、その時々の自分の現状をチェックし、課題があれば軌道修正をしていく、そのような地道な取り組みを重ねていただきたいものです。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 経営共創事業本部 本部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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