職場の不平不満を若手のリーダーシップ開発につなげる方法
2019年7月 4日更新

職場で何か不満を感じたら、それを提案という形に変え、リーダーシップを発揮して組織を改善していく。若手社員がそうした力を身につけるには、どういうトレーニングが必要でしょうか。
INDEX
組織への不満はリーダーシップを発揮するチャンス
お客様からのクレームが改善のヒントになるのと同様に、職場内で感じる不満が改善のきっかけになることも多いものです。この不満の改善は、実はリーダーシップ行動と密接な関係にあります。
リーダーシップ研究を専門としている舘野泰一氏(立教大学経営学部准教授)は、通信ゼミナール「若手社員のためのリーダーシップコース」 のテキストで次のように解説しています。
あなたには、職場で不満に感じていることはないでしょうか? 「少し不便だからどうにかしたい」「どうしてこの手続きが必要なんだろう?」などの不満は、どこの職場にもあるでしょう。たいていの場合、「とは言うものの、しかたないよね」とあきらめてしまいがちですが、実は「何かを不満に感じた瞬間」がリーダーシップ発揮のタイミングです。日本のリーダーシップ教育の第一人者である日向野幹也氏は「不満を提案に変えるのがリーダーシップ」と述べています。
不満と改善は裏表のような存在で、たとえば「不満があるから改善をする」「改善をしたから不満が解消された」と表現できます。そして、改善は自然にはなされません。だれかのリーダーシップ行動がかならず伴います。
ここに指摘されている通り、不満を不満のまま終わらせず、具体的な提案に転化して現実的な改善を行うには、グループの誰かがリーダーシップを発揮して組織を動かす必要があります。こうしたリーダーシップ行動がとれる社員を育てていくことが、人材開発の要といえるのではないでしょうか。
若手社員には不満を提案に変換するトレーニングを
「不満」を「提案」に変える習慣を身につける方法として、次のトレーニングが紹介されています。まず、職場で感じている大小さまざまな不満を、できるだけたくさん書き出します。次に、書き出した一つひとつの不満を、どうすれば提案事項に変換できるかを考えさせるのです。これを繰り返すことで、不満を提案に変えられるセンスが身につきます。
【不満】メンバー同士の情報共有ができていない
→【提案】スマホを活用し、全員で瞬時に情報を共有
【不満】書類の作成と整理に時間がかかり過ぎる
→【提案】不要な書類を省き、ペーパーレス化を図る
このように、不満に思っていたことも、角度を変えれば有意義な提案に早変わりします。気づいたメンバーがリーダーシップを発揮し、改善が実施されれば、より強い職場へと進化できるのです。
提案を受け入れてもらうための3つのポイント
せっかくよい提案が浮かんでも、それを上司や他のメンバーが受け入れてくれなければ、実際の改善には結びつきません。また、単に会議やミーティングで正論を主張しても、それだけで周りが変わってくれるわけでもありません。同書では、提案を受け入れてもらうためには、次の3つのポイントに留意する必要があると説明されています。
(1)自分が責任をもって関わる姿勢をもつ
提案する限りは、提案者がまず責任をもって行動するという姿勢を表さなければなりません。担当している業務を完全にこなしたうえで、事前調査や提案書の作成、現場の声を聞いて回るなど、改善に向けて、提案した本人が積極的に動くことが大切です。
(2)周囲の人に対して批判をしない
不満を提案に変えて訴えるのは、誰かの責任を追及するためではなく、グループや組織を成長させるために他なりません。組織の問題はメンバー全員の問題であり、誰か一人が問題を起こしているわけでもありません。敵をつくらず、全員で取り組む姿勢が重要です。
(3)上司の立場で考えてみる
若手社員が改善提案をする際、どうしても見落としがちなのが「上司の立場からの視点」です。上司は常に組織全体を見渡しているため、「その若手社員の提案を受け入れたら、その面ではよくなるかもしれないが、新たに別の問題が生まれる」ことに気づく可能性があります。提案が受け入れられないと、その上司に不満が向かう可能性がありますが、そこで踏みとどまり、冷静に「上司の立場になって考えてみる」必要があるのです。どうしてもわからなければ、時間をつくって上司と話し合えばいいでしょう。
リーダーシップを身につけた若手社員がイノベーションをもたらす
何かよい提案をしたからといって、すべてが受け入れられるわけではありません。むしろ受け入れられ、しっかりと組織が改善されるケースのほうが少ないともいえます。あるいは一時的に改善されても、時間が経つとまた元に戻ってしまうこともあるでしょう。だからといって、不満を提案に変え、改善に結びつけるための努力を怠ったら、組織の成長はストップしてしまいます。それよりも、若手社員のうちから「率先垂範」を心がけ、周囲や上司のこともよく考えながら積極的に「提案」を行い、自ら責任をもって取り組む「リーダーシップ」を身につけていくこと自体に重きを置くべきです。
こうして「リーダーシップ」を持つ若手社員がぐんぐん育ち、やがて経験という武器を備え、高いスキルを身につけた暁には、素晴らしい「イノベーション」を組織にもたらしてくれるのではないでしょうか。そのような観点で、5年後10年後の会社の成長のために、若手社員のリーダーシップ教育に取り組むことをお勧めしたいと思います。
※本記事はPHP通信ゼミナール『若手社員のためのリーダーシップコース』を抜粋・編集して制作しました。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。




































































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