いまどきの新入社員 4つの特徴と効果的な教育のポイント
2022年1月17日更新
最近の若い世代の傾向を整理すると同時に、効果的な新入社員教育(研修 & OJT)のあり方について考えてみたいと思います。
新入社員教育は見直しが必要
新入社員を迎える時期を控え、各社とも導入研修やその後の現場でのOJTの仕組みづくりの準備が本格化してきたのではないでしょうか。新入社員教育は年中行事的なものだから、毎年同じ取り組みをしているという企業も多いでしょう。
しかし、新入社員の気質は、毎年少しずつ変化しています。特に、コロナ禍を契機に人々の意識やライフスタイルが変化する中で、若い世代の仕事観も変わってきましたので、それをふまえて教育のあり方を見直す必要があるかもしれません。
最近の若い世代の4つの特徴
最近の若者たちの特徴や傾向について、さまざまな論者によって多様な指摘がなされています。教育研修の場で得た体験や情報をもとに、最近の若い世代の特徴について筆者が感じているのは以下の4点です。
1.コミュニケーションが苦手
対面でのリアルなコミュニケーションに苦手意識を感じる人が増えてきました。特に、年齢や価値観等で大きなギャップのある人とは関わり方がわからないので、自分から近づこうとしない傾向があります。子どもの頃から、SNSやゲームを通じたバーチャルなコミュニケーションに慣れ親しんできたことが影響していると思われます。
2.納得しないと動かない
何のためにやるのか、やることにどんな意味があるのか、納得しないと動かない人が多くなってきた印象があります。「仕事だからやれ」「上司の指示に従え」だけでは、若い世代の社員を本気にさせることは難しいでしょう。
3.主体性に欠ける
「そういう指示は受けていません」「それは上の人が考えてください」
平気で、このような発言をする若手社員がいます。キャリアの早い段階で、自分で考える癖をつけないと、成長が止まってしまう恐れがあります。
4.「シュガー社員」
自らの非や欠点を認めず、うまくいかない理由を他に求める、自分に甘い人が増えてきました。また、こうした人たちは、ちょっとしたことでへこんでしまうなど、精神的にもろい側面ももっています。自己肯定感の低さがその原因となっているのかもしれません。これらの特徴をとらえて、最近の若手社員を「シュガー社員(※1)」(砂糖のように甘い、すぐ溶ける)と表現することもあります。
※1 社会保険労務士の田北百樹子氏による造語
効果的な新入社員教育(研修・OJT)4つのポイント
前述の、最近の若い世代の特徴をふまえた上で、どのような新入社員教育が求められるのか、そのポイントをご紹介します。
1.お互いに自己開示をする
自己開示によって、周囲との関係が良好になり、日々の職場生活が楽しくなるような体験を積ませることです。ベイビーステップのごとく、少しずつでいいので自己開示を実践させることが、コミュニケーション力強化の訓練にもなります。もちろん、その前提は上司、先輩、指導員が率先して自己開示をすることです。
2.説得ではなく納得させる
前述のとおり、意味にこだわる若手社員が増えているので、研修や日々の仕事にお いても、WhatやHowだけでなくWhyを伝える必要があります。それでも動かない場合は、「動かない理由」があるのです。その場合は、相手の言い分に耳を傾け、「君の考えはよくわかった」と主張を受容したうえで、「でもね、ここはみんなと一緒にやってくれないかな」と相談調で切り返すことで納得感を高めます。
3.問いかける
主体性をはぐくむためには、安易に答えを与えないことです。松下幸之助の口癖の一つは、「君、どない思う(どう思う)?」でした。常に問いかけられるので、幸之助の周囲にいる人たちは考える癖がついて、思考力が鍛えられました。新入社員を教育する上でも、できるだけ問いかけ調のコミュニケーションを取っていくことが大切です。
4.フィードバックを与える
自己認知と人の成長は相関関係にあると言われています。他者からのフィードバックは、自分を客観視させ、自己認知を促進するきっかけになります。問題を指摘するネガティブフィードバックは痛みを伴いますが、自らの過ちや今後の課題に気づかせることができますし、良いところを認めるポジティブフィードバックは、自己肯定感の向上につながります。
まとめ:人づくりの場としての企業内教育
人事部門や管理職・上司のみなさんは、新入社員を教育する際に、「こんなことも知らないのか」と嘆きたい気持ちになることもあるでしょう。でも、彼らに「こんなこと」を教えてくれる人が今までいなかったので、企業における新入社員教育という場で教えてあげることが必要なのです。
そして指導する立場の方には、「適切に教えて納得させられたら、だれでも実践できるものだ」という、肯定的な人間観をもって新入社員と向き合っていただきたいと思います。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。