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OJTは新入社員、若手社員の育成にどこまで有効なのか?

2017年7月 6日更新

OJTは新入社員、若手社員の育成にどこまで有効なのか?

新入社員、若手社員の育成は、かつてOJTが何よりも有効とされてきました。しかし、仕事を取り巻く環境の変化とともに、うまく機能しているとは言えない状況になってきています。そこで今回は、OJTの課題、問題点を整理し、どのように見直していくかを解説します。

OJTは、なぜうまくいかなくなった?

OJT(On the Job Training)は、皆さんご承知のように、仕事をしながら仕事の知識やスキルを教えること。かつては新入社員(新卒・中途入社)、若手社員の育成や離職防止にたいへん有効な手段でした。20年程前、終身雇用が崩れ始め、若手社員の早期離職が増加し始めた頃、OJTによって離職率を大幅に低下させた企業は数多くありました。私も、企業や各種の組織に導入を盛んに勧めました。
OJTの実施により、新入社員は入社時から身近な相談相手を持つことができますし、教える側の先輩にとっても、仕事スキル向上の良い機会になっていました。

しかし現在、OJTだけでは、新入社員を一人前に育てることが難しくなっています。一人前になる前に離職してしまったり、教える側と新入社員がうまく人間関係を結べず、双方が悩みを抱える状態が発生したりしています。

では、なぜOJTがうまくいかなくなったのでしょうか。
その主な理由を挙げてみます。

(1)今の新入社員は、「仕事」を教える以前の「取り組み姿勢」から教えなければならない。

(2)常識レベルの「しつけ指導」をする必要性がある。

(3)世の中の変化が急速に進み、上司や先輩が経験したことを教えても通用しないケースが増えた。

(4)仕事中はパソコン、休憩中はスマホと向き合う今、社員同士のコミュニケーションは激減している。OJTを実施したからといって、社員間の人間関係は構築できない。

(5)上司や先輩が業務終了後、飲食に誘う機会が減ったので、人間関係が構築されにくい。

(6)精神的に弱い若手社員に対する精神面のサポートが必要になった。

すなわち、新入・若手社員、社会、職場の人間関係、この3つがそれぞれ大きく変化し、人材育成手法としてのOJTが合わなくなってきたのです。
特に新入社員については、「しつけ」「社会人としての常識」といった部分から育成が始まります。そして、目指すところは、世の中の変化や顧客のニーズの変化・高度化に対応できる臨機応変な対応力を身に付け、自分で課題を解決していける「自立型社員」になることですから、長いスパンで人間としての成長を見守っていく必要があるわけです。そのためには、主に仕事の知識やスキルを教えるOJTでは解決できない部分が大きくなってきたといえるでしょう。

本人も指導者も成長! 注目される「メンタリング」

そこで、今「メンタリング」という方法が注目されています。
メンタリングとは、仕事を指導する以外に、メンター(指導する者)がメンティー(指導される者)と人間関係を結び、良き相談相手・支援者となり、惜しみないサポートで育成する方法です。メンターは、指示命令によらずメンティーに気づきを促し、やる気や積極性を伸ばし、人生やキャリア形成まで相談に乗って支援していきます。
中小企業では、上司や職場の先輩がメンターを兼ねるケースが多いようですが、その場合、次のようなメリットがあります。

(1)業務スキルが高くなる。

(2)教えるスキルが向上する。

(3)説明スキルが向上する。

(4)リーダーシップに磨きがかかる。

(5)部下に感謝される。

メンターにとっても、メンティーと共に学び、自分もキャリアや人生を考える良い機会になりますから、積極的に取り組んでもらえるよう、意識付けをしたいものです。

メンター・メンティーは、人事担当者がしっかりフォローする

人事担当者はメンター(指導する者)をしっかりフォローする必要があります。そうしないと、メンターが、メンティー(指導される者)とのジェネレーション・ギャップに悩んだり、責任感が強いメンターほど一人で問題を抱え込んだりしてしまうことがあります。
メンターとなる人には、メンタリングの方法をあらかじめ学習させるとともに、少なくとも半年に1回は、メンター(指導する者)、メンティー(指導される者)双方へのアンケートやヒアリングなどにより状況を把握しておくことが必要になってくるでしょう。

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阿部紀子(あべ・のりこ)
社員研修のハートリンク 代表。人材開発コンサルタント。
銀行、コンサルタント会社にて、営業企画、秘書業務、雑誌・書籍編集等を経験し独立。企業や各種団体の新入社員から管理者までの従業員研修や企業内マニュアル作成に携わる。指導実績企業は全国で約350社。1件1件カスタマイズして課題解決をしながら研修をするのが特徴。

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