研修講師は必見! 新入社員の自主性を引き出すポイント
2018年10月29日更新
新入社員研修を担当する講師が必ずおさえておきたい「イエスセット」の技法や、新入社員の自主性を引き出す仕組みなどをご紹介します。
新入社員研修が始まる前に講師が心がけたいこと
研修講師にとって、最初の3分間をどういうふうに演じるか、ある意味、「演じる」ということになると思うのですが、それがとても重要な要素になります。そこで、新入社員研修が始まる前にぜひ心がけたいことがあります。
研修講師は、多くの場合、早めに研修会場に入ります。そして、新入社員が一人、二人と集まってきます。何人か集まると、雑談が始まります。そのときに覚えておきたいのが、最初に会場に来たのが誰か、あるいは誰が雑談の中心になっているか、どんな話題で盛り上がっているかということ。研修が始まった時に、そういう中心になりそうな人に話題を投げかけたりしながら、グループのなかに入っていくことができます。
また、新入社員の名前と顔を一致させ、研修が始まったときに名前で呼びかけることも重要です。「名前をもう知っているよ」というところから始めていくと、新入社員はとても安心をしてくれます。
時間があれば、相手の名前を呼びながら問いかけをしていく時間を、もちろん全員はできないかもしれませんが、数名にしても設けることで、新入社員の気持ちが前向きになる可能性があります。
導入部分は「イエスセット(Yes-set)」で関係性をつくる
そして、いよいよ新入社員研修が始まりますが、その導入部分では、「イエスセット」という技法を使うことがあります。
「イエスセット」というのは、わかりやすく言いますと、テレビのバラエティ番組の司会者が、客席との間で、「〇〇ですね」「そうですね」、「△△ですよね」「そうですね」というように「イエス」を求める投げかけをする、まさしくその手法です。「はい、そうです」、「はい、そうです」と言ってもらえるような投げかけをしていきます。
「イエスセット」は、心理学でいう「一貫性の法則」を応用した手法といわれます。営業などでも使われますが、「イエス」「イエス」と言い続けているうちに、何となく「ノー」が言いにくくなるということです。もちろん反論してはいけない、ということではないのですが、何となく打ち解けていく雰囲気になるのを利用しているのです。
「いいえ、違います」「いいえ、違います」と言い続けると、敵対的な感じになってしまうのですが、相手に興味をもって「そうなんです」「そうなんですよ」というやりとりを繰り返すことによって、「この講師は分かってくれているな」「この人、大丈夫だな」っていうような関係性を築いていくのに有効ですから、ぜひとり入れていただきたいものです。
会場後方の受講生とコミュニケーション
研修中には、講師が教室内をまんべんなく動くことをお勧めします。全員に聞こえるように前に立って話すことも必要ですが、特に新入社員研修の場合は、会場の前方の座席の受講生と後ろの方とで、多少の温度差が出てしまいがちです。後ろのほうは意外と聞いていないとか、聞いているけれども自分たちには関係ないという態度になってしまう可能性があります。ですので、研修の最初の段階から、後ろのほうにも声をかけ、講師が後方まで歩いて行ってコミュニケーションをとり、参加意識を高めます。
新入社員の自主性を引き出す仕組み
また、新入社員研修では「研修は受講生である皆さんがつくっていくもの」「新入社員が主役」ということを、繰り返し伝えます。
たとえば、「プログラムや教材は事務局や研修講師が用意しますが、研修を受ける新入社員の皆さんがそれに応える行動をとることによって、皆さん自身が成長し、実りのある時間を過ごすことができます。自分たちでやるべきことを考えてください」と呼びかけることで、参加者の意識を変えていきます。
「自分たちが、どう参加するか」について、しばらく話し合ってもらうと、例えば「研修終了後にホワイトボードを消す」「休憩時間が終わる少し前に皆に声をかける」「消極的で発言しない人に発言を促す」といった具合に、新入社員なりにいろいろなアイデアを出してくれるはずです。新入社員を「お客様」にしない仕組みが、新入社員の自主性を引き出すことにつながるのです。
(PHP研究所 研修企画部)