非常事態の新入社員教育。オンラインや自己啓発など、いつ、どういう方法で実施する?
2020年4月 7日更新
新型コロナウイルスの影響で、入社式や導入研修を取りやめる(あるいは延期する)企業が増えてきました。新入社員教育については、いつ、どういう方法で実施すればいいのでしょうか。
これまで体験したことのない状況に直面すると、「そもそも導入教育は、何のためにやるのか?」「どんなゴールに向かってどんなアウトプットを出せばいいのか?」といった本質的な疑問に意識が向かいます。これまで、慣例行事のように新入社員の導入教育を実施してきた企業が多いと思いますが、今回の一連の騒動がその意義を問い直し、教育のあり方を大きく変える契機となるかもしれません。
新入社員の組織社会化という概念
近年、新規学卒者(新入社員)の組織社会化に関する研究が盛んになってきました。組織社会化とは、組織構成員として参加するのに必要な態度、行動、知識を個人が獲得していく過程と定義されます(Van Maanen & Schein,1979 ※1)。そして、最近の研究(Chao et al,1994 ※2)によると、新入社員が入社後、組織に適応するうえで獲得すべき態度や行動、知識の内容として、以下の6つが指摘されています。
1)歴史(企業の沿革や職場のなりたち)
2)言語(仕事上、使われる具体的な専門用語や通用語)
3)政治(企業内の力関係を含めた政治状況)
4)人間(職場内の人々との良好な関係の構築)
5)組織目標と価値観(起業の目標や規範、価値観の理解と受容)
6)熟練(仕事の効率的なやり方や必要な技能の獲得)
こうした態度、行動、知識を入社直後の時期に獲得することで、その後の組織適応がスムーズに行われ、結果として定着率の向上につながるとされています。これが、冒頭の本質的な疑問「導入教育は何のためにやるのか?」に対する解であり、最終ゴールやアウトプットもここを目指すべきなのです。
導入教育(集合研修、オンライン活用研修、自己啓発)の手法
では、それらをどのようにして学習するかという方法論について考えてみましょう。大別すると、集合型の教育と、オンラインを活用した教育、自己啓発の3種類に分類されますが、それぞれのメリット・デメリットを比較してみます。
いずれも一長一短がありますが、非常事態ともいえる今年に関しては、4~5月は(感染症拡大防止の観点から)eラーニングや通信教育を活用した自己啓発で必要最低限の知識を習得し、6月以降に集合研修で企業人に必要な態度、行動を身につける学習を実施することをお奨めしたいと思います。
入社直後は、社会人としてのスタートを切る新入社員にとって大事な時期です。したがって、企業の人事部門にはこれまでの常識にとらわれない新しい発想で、「組織社会化がスムーズに行われる導入教育」をデザインし、提供することが求められています。
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※1 Van Maanen.J,&Shein.E.H.(1979) Toward a theory of organizational socialization
※2 Chao,G.T,OLeary-kelly,A.M.Wolf,S,Klein,H.J,& Gardner,P.D.(1994) Organizational socialization
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。