ビジネスマナー研修とは? カリキュラムや種類、メリットについて
2021年10月26日更新
ビジネスマナー研修とは、ビジネスにふさわしい身だしなみや挨拶、電話などにおけるマナーを学ぶ研修です。内定者や新入社員などを対象とした研修や、外食産業や一般事務など、特定の業界・職種を対象とした研修などがあります。カリキュラムや種類、受講のメリットについて見ていきましょう。
INDEX
ビジネスマナー研修とは?
ビジネスマナー研修とは、周りから信頼されるために必要なビジネスマナーを学ぶ研修です。
仕事を円滑に進めるためには、お互いの立場を理解し、相手が安心・満足できる行動を取ることが求められます。その基本となるのが、ビジネスマナーです。
たとえ新入社員であっても、会社の外に一歩出れば「会社の代表者」となり、マナーの良し悪しによって会社のイメージを左右してしまいます。ビジネスマナーを知らなければ信頼は得られませんし、信頼を得られなければビジネスチャンスも巡ってきません。
学生時代は気の合う仲間との関係のなかで過ごせるかもしれませんが、社会人になると、年齢や考え方、性格、性別など多様な人との関係を築く必要が出てきます。社外だけでなく、職場においても、本人にビジネスマナーが備わっていれば、明るく快適に過ごすことができるでしょう。
PHP研究所創設者・松下幸之助は「ビジネスマンのもっとも重要な責務は何か」と問われたとき、「愛されること」「愛されるような仕事をすること」と答えています。「愛される」社会人になれば、職場の人間関係もよくなり、思わぬ助力を得て仕事の成果も上がります。これがまさにビジネスマナーの基本の考えです。相手の立場に立ち、相手を大切に思う気持ちがあって初めて相手との良好な人間関係がスタートするのです。
また、新入社員の場合は、ビジネスマナーをしっかりと学ぶことが、不安を軽減するのにも役立ちます。そのためにも、ビジネスマナー研修が必要といえるでしょう。
ビジネスマナーは時代と共に変わりますが、基本を習得することで、時代に合わせた形にアップデートすることも可能になります。
ターゲットや業種ごとに内容は異なる
ビジネスマナー研修は、新入社員や内定者など、誰をターゲット(受講対象者)にした研修かによってカリキュラムが変わってきます。また、外食産業や一般事務など、業種や職種によっても、実施内容は千差万別です。適切なカリキュラムを組むことで、研修効果を高める工夫が必要です。
ビジネスマナー研修のカリキュラムに含まれる内容
ここでは、実際のビジネスマナー研修で、どのような内容を組み込んでいるのかをご紹介します。PHP研究所の新入社員研修で用いられているテキストをもとに、カリキュラムに含まれる主な内容を見ていきましょう。
●基本のマナー
身だしなみ/表情づくりとアイコンタクト/日常動作の基本
●話し方・聞き方のマナー
話し方/聞き方/言葉遣い/敬語
●応対・訪問のマナー
来客応対のマナー/訪問のマナー
●電話のマナー
電話応対のマナー/電話のかけ方/電話の取り次ぎ方/携帯電話のマナー
●文書のマナー
手紙の書き方/ハガキの書き方/メールのマナー/ファックスのマナー
●仕事上のマナー
勤務中のマナー/会議のマナー
基本のマナー
まずは業種や立場に関係なく、社会人として必要とされる基本のマナーについて学びます。いずれも習得することで、好感を持たれる人材へとステップアップすることができるでしょう。
●身だしなみ
社会人の身だしなみは、清潔感があり上品であることが基本です。営業職などでスーツ着用が求められる場合には、スーツやシャツにしわがないこと、サイズが合った控えめなデザインのものを着ることに気を付けるといいでしょう。また、髪や爪などの細部まで清潔で汚れがないことを意識していきましょう。アクセサリーも控えめで、目を引かないものが好ましいとされています。
●表情づくりとアイコンタクト
目尻が下がり口角が上がった状態が、周囲に優しさと安心感を与える表情です。鏡を見ながら練習しましょう。また、控えめに視線を外すのはあまり印象がよくありません。要所要所でアイコンタクトを取り、あとは鼻から口元を見るようにしましょう。
●日常動作の基本
首と背中を意識的に上に伸ばして肩先は落とし、骨盤で体を支えるように意識すると、美しい立ち方と座り方が完成します。また、歩くときには目線は斜め前にし、かかとに力が入りすぎないようにすると、足音が強くなりません。
お辞儀の仕方には3つの種類があります。15度ほど体を前傾させる会釈と30度前傾させる敬礼、45度ほど前傾させる最敬礼です。通り過ぎるときは会釈、お見送りのときは最敬礼、それ以外の場面では敬礼を使いましょう。
話し方・聞き方のマナー
話し方や聞き方にもマナーがあります。ビジネスマナー研修では、好印象を獲得するための方法について紹介するといいでしょう。
●話し方
「あー」「えーっと」という言葉を挟むと、だらしない印象を与えることがあります。また、語尾を伸ばさないこともビジネスマナーのひとつです。
●聞き方
話を聞くときは、膝の方向を相手に向けて、全身で聞くようにしましょう。座って聞くときはやや前傾になるように意識すると、相手に真剣に聞いている様子が伝わります。
●言葉遣い
原則として「です」「ます」の丁寧な話し方で話しましょう。初対面の人であれば、相手の年齢によらず敬語で話します。自分のことは「わたくし」、自社は「弊社」「当社」が基本です。
●敬語
相手が使う言葉には「尊敬語」、自分が使う言葉には「謙譲語」を用いて正しく使い分けましょう。例えば相手が話すときには「おっしゃる」、自分が話すときは「申し上げる」となります。
応対・訪問のマナー
来客に応対するとき、また、取引先やクライアントを訪問するときにも、シチュエーションに応じたマナーが求められます。自信を持って社外と人と接するためにも、応対・訪問時のビジネスマナーを習得しておく必要があります。
●来客応対のマナー
アポイントのある来客に対しては、「お待ちしておりました、〇〇様」と笑顔で迎えるのが原則です。応接室に案内し、「お先に失礼します」と断りつつ先に入ってドアを抑えましょう。入口から遠い上座に案内し、「おかけになってください」と椅子を勧めます。
その後、お茶を出し、話が終わってからお見送りです。最敬礼でお辞儀をするのはもちろんのこと、社内で別の来客が帰られるときに居合わせた場合も、立ち上がってお見送りをします。
一方、アポイントがないときは「ただいま確認いたします。少々お待ちください」と相手に伝えたうえで、要件に応じた担当者に引き継ぎましょう。
●訪問のマナー
取引先などを訪問するときは、遅れることがないよう万全に交通手段を決定します。車で向かうときは渋滞に巻き込まれることもあり、電車は遅延することもあるので、早めに出発するのが原則です。
コートを着ているときは建物に入る前に脱ぎ、携帯電話はマナーモードに切り替えます。受付で名乗り、アポイントを取っている担当者の名前を告げましょう。応接室に案内されたら下座に行き、上座を勧められた場合のみ「失礼します」と断ってから上座に移動します。
また、担当者に名刺を渡していない場合には、なるべく相手よりも先に渡しましょう。相手の名刺は「頂戴いたします」と言ってから両手で受け取ります。その後、名刺を名刺入れの上に置きますが、2人以上から名刺を受け取ったときは役職順に並べて置きましょう。
電話のマナー
電話応対に苦手意識を持つ新入社員は少なくありません。基本のマナーを押さえておくことで、電話応対がスムーズになります。
●電話応対のマナー
原則として3コール内に応対するようにします。相手が話し出すより前に「お電話ありがとうございます。株式会社〇〇の〇です」と社名と氏名を名乗りましょう。相手が社名と氏名を名乗るので、必ず復唱してメモをします。名乗らないときは「恐れ入りますが、御社名とお名前をうかがってもよろしいでしょうか」と尋ねましょう。
●電話のかけ方
電話をかけるときは、できる限りシンプルに伝えるように意識します。用件をメモしてから電話をかけるとスムーズに話せるでしょう。電話をかけたら「株式会社〇〇の〇と申します。いつも大変お世話になっております。営業二課の〇様はいらっしゃいますでしょうか」と話します。
相手に取り次いでもらったときは、再度「〇様でいらっしゃいますでしょうか」と確認してから「株式会社〇〇の〇です。いつもお世話になっております」と伝えて、用件を簡潔に話しましょう。
●電話の取り次ぎ方
「〇さんをお願いします」と相手が取り次ぎを希望したときは、「〇ですね。少々お待ちください」と伝えてから保留にし、内線などで電話の相手を呼び出します。「株式会社〇〇の〇様からお電話です」と伝えれば完了です。
電話の相手が不在のときは、「申し訳ございません。ただいま〇は不在にしております。差し支えなければご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか」と用件を聞いておきましょう。
●携帯電話のマナー
携帯電話を使用するときは、騒がしい場所や歩きながら、電話をかけてはいけない場所を避けます。また、重要な用件は、情報漏洩のリスクがあるので外出先で話してはいけません。可能な限り就業時間以外と昼休みは避け、通常の電話と同様、社名と氏名を名乗ってかけましょう。
文書のマナー
文書を作成するときも、相手への敬意が伝わるようにすることが第一義です。手書きのときは楷書で、相手の名前や社名は中央よりも上に配置しましょう。
●手紙の書き方
縦書きの場合は「拝啓」などの頭語のあとに時候の挨拶、主文、末文を書きます。最後に日付を記し、自社の社名と名前が中央よりも下に来るように、その後、相手の社名と名前が中央よりも上に来るように記しましょう。
●ハガキの書き方
ハガキの裏書きと表書きの方向(縦書き・横書き)は合わせましょう。表書きの中央に相手の氏名が来るように配置し、小さな文字で役職名、大きな文字で氏名と様を記載します。
●メールのマナー
件名には自社名と用件をシンプルに記し、本文には相手の社名と氏名を最初に、その後、挨拶文と用件、締めの挨拶文を記載しましょう。最後に自社名と氏名を記載します。
●ファックスのマナー
ファックスを送信するときは、電話で一度相手方に連絡し、送信枚数を伝えます。その後、最初に相手の名前と送信者、日付、用件を記した「送信状」を送ってから、要件を伝える内容を送りましょう。
仕事上のマナー
仕事の上で押さえておきたいマナーを学びます。特に勤務中の姿勢と会議には注意が必要です。
●勤務中のマナー
なるべくおしゃべりは避け、正しい姿勢で椅子に座ります。他の人に用事があるときは「少しよろしいでしょうか」と断ってから話しましょう。
●会議のマナー
会議に参加するときは、自分の立ち位置を把握します。意見を求められているのか、傾聴だけで良いのか理解してから参加しましょう。また、事前に会議に必要な資料等をそろえておきます。時間よりも早く会議室に入り、出入口を下座として、適切な場所に座りましょう。
【ターゲット別】ビジネスマナー研修の種類
ビジネスマナー研修は、主に内定者向けと新入社員向け、2つのターゲットを対象に実施されます。それぞれの実施ポイントを見ていきましょう。
内定者向け
内定者を対象に何度か研修を実施することがありますが、その中にビジネスマナー研修を含めることがあります。入社前にビジネスマナーを学ぶことで、内定者の不安を軽減することにもつながるでしょう。また、会社としては即戦力を育成することにもなります。
新入社員向け
新入社員向けの研修の中にも、ビジネスマナー研修を含めます。入社後すぐにビジネスマナーを学ぶことで、自信を持って社内外の人と接することができるでしょう。なお、新入社員向けのビジネスマナー研修の内容は、場合によっては内定者研修として実施することも可能です。
【業種別】ビジネスマナー研修の種類
業種や業界に特化したビジネスマナー研修もあります。業種や業界に特有のマナーを理解しておくことで、知識を深めることができます。いくつかの業界・業種を例にとって研修内容を見ていきましょう。
金融機関向け
金融機関で働く新入社員や内定者向けに、身だしなみや名刺交換、言葉遣い、電話応対などの社会人としてのベースとなるビジネスマナーに加え、金融機関特有の業務やマナーについても学んでいきます。例えば窓口業務におけるお客様との接し方、融資担当者や渉外担当者としてのクライアントとの接し方については、ロールプレイを通して習得します。
クライアントとの面談では、金融情勢や社会情勢が話題になることがあるでしょう。たとえば、少子高齢化や公的年金など金融とは切り離せないテーマについての基礎知識を、ビジネスマナー研修の内容に含めることもあります。
外食産業向け
外食産業で働く新入社員や内定者向けに、電話応対の基礎から言葉遣い、発声や滑舌、傾聴するスキル、お客様の状況を把握するための質問スキルを習得する内容です。外食産業向けの研修でも、ロールプレイを実施することが珍しくありません。ロールプレイを通して、研修受講者一人ひとりが自信を持ってお客様に応対できる状態を目指します。
サービス業以外の一般事務
一般事務職では、事務作業をするだけでなく、電話応対や来客対応などの幅広い業務に対応することが求められます。ビジネスマナー研修では、言葉遣いや席次などの基本ルールから、第一印象を良くする身だしなみや挨拶、お辞儀などについて学び、一人ひとりが会社の顔としての自覚を持って行動できるように育成します。
ビジネスマナー研修を実施することで得られる受講者の3つのメリット
ビジネスマナー研修を実施することで、受講者は次の3つのメリットを得られます。
1.マナーの意味を理解して適切に活用できる
2. 実践的なマナーを覚えられる
3.苦手分野をなくすことができる
1.マナーの意味を理解して適切に活用できる
ビジネスマナー研修では、単に「こうしなければいけない」というハウツーだけを教えられるのではなく、「なぜ、こうするのか」という意味や背景とともに学習し、理解を深めることができます。マナーを単に知識として身につけるのではなく、その背景を含めた生きた情報として理解できるので、状況に合わせて適切に応用することができるようになります。
2.実践的なマナーを覚えられる
ビジネスマナー研修では、具体的な状況・場面におけるマナーを、ロールプレイなどで学んでいきます。実際の業務を想定しながら「このような状況では、このような言葉遣いがふさわしい」などのように、より実践的に習得することが可能です。
3.苦手分野をなくすことができる
新入社員には「敬語には自信があるけれど、電話が苦手」「メールが苦手」など、それぞれ苦手分野があるものです。ビジネスマナー研修ではマナーを包括的に学ぶので、苦手分野をなくすことができます。
ビジネスマナー研修を効果的に進めるには?
ビジネスマナー研修を効果的に進めていくためのコツをいくつか紹介します。
・ロールプレイなどの演習に重きを置く
・「なぜそうするのか」というマナーの理由・背景を知る
・優れた講師を選ぶ
・ワークシートを活用する
・フォローアップ研修を実施する
研修を単に知識を増やす機会にしないためにも、ロールプレイなどの演習をとりいれることが大切です。演習と講義をバランスよく行うことで、生きた知識として身につけることができます。
「なぜ、こうするのか」といったビジネスマナーの理由・背景についても説明すること、優れた講師を選ぶことも、ビジネスマナー研修を効果的に実施するポイントです。また、講義や研修用のビデオ(動画)視聴の際には、ワークシートに記入するのを課題とすることで、学習を深めることができます。
さらに、数カ月~1年後を目安にフォローアップ研修を実施し、ビジネスマナーをおさらいすることも、知識の定着と研修転移において不可欠なポイントといえるでしょう。
まとめ:ビジネスマナー研修ではマナーとともに社会人としての考え方を学ぶ
ビジネスマナー研修を通して、社会人に必要な「相手目線」という考え方を学ぶことができます。職場で愛され、お客様に信頼されるためには、相手の立場になって考える癖や、行動する習慣が大切です。研修では、こうした考え方を教えることがポイントになります。
また、ビジネスマナーを身につけることによって、自信を持って社内外の人と接することができるようになります。立場や業界などを検討し、研修のターゲットに適した研修内容で、内定者や新入社員を育成していきましょう。
また、数カ月~1年後を目安にフォローアップ研修を実施することで、ビジネスマナー研修の効果を高めることができます。ぜひセットで検討していきましょう。