新入社員の育成計画を立てる5ステップ。教育効果を高めるポイントも紹介
2021年11月10日更新
新年度、新入社員を迎え入れる準備はおすすみですか? 新入社員の育成は計画的に行うことが重要です。今回は、育成計画を立案する手順について解説します。また、計画を進めていくうえで注意すべきポイントや新人の指導担当者の悩み、その対応策についても説明します。
INDEX
新入社員の育成計画が必要な理由
新入社員の育成は人事部や現場にすべてを任せてしまうのではなく、会社全体で実施していく必要があります。会社全体で育成計画を立て、計画に沿って新入社員を育てていくことで、会社のビジョンに合う人材を育成していけるでしょう。
また、育成計画を立てることには、新入社員の離職を防ぐ効果も期待できます。計画に沿って会社が一丸となって新入社員をバックアップし、育成する風土があれば、新入社員のモチベーション、エンゲージメントを高める効果も期待できますし、何か悩みや課題を抱えているようであれば適切なサポートを施すこともできます。
計画通りに育成できないこともあるでしょう。その場合も、「期待外れ」「使えない」などと考える前に、現場と人事部、経営陣が、どこに問題があるのかを検討することが大切です。
新入社員の育成計画を立てる5つのステップ
新入社員の育成計画は、以下の5つのステップで立てていきます。
1. 目指す人物像を明確にする
2. フェーズごとに育成目標を立てる
3. 目標達成に必要な要素を書き出す
4. 適切な研修・教育方法を検討する
5. 育成のPDCAを回す
それぞれのステップについて詳しく解説します。
1.目指す人物像を明確にする
育成計画を立てる前に、どのような社員に育てたいのか、目指す人物像を明確にします。目指すところが明らかになることで、指導・育成側の努力の方向性を定めやすくなるでしょう。もちろん職能資格(等級)制度、人事評価(考課)制度との整合も不可欠です。
また、目指す人物像に近づくためには、どのようなスキルが必要なのか、どのような意識を持って仕事に取り組んで欲しいのかなど、できる限り具体的に決めていきます。これにより人事評価も単なる「査定」ではない、「育成」を重視した運用が期待できます。
社員に求めていること、例えば即戦力になって欲しいのか、5年後、10年後に会社の中心となって活躍して欲しいのかによって、新入社員の教育の内容、育成スピードも変わってくるでしょう。
2.フェーズごとに育成目標を立てる
目指す人物像と全体的な目標を立てた後で、入社前(内定者)研修と導入研修、フォローアップ研修、現場配属(OJT)など、それぞれのフェーズにおける育成目標を立てます。
育成目標を具体的に定めることで、上司のOJT、コミュニケーションの取り方も変わってくるでしょう。また、育成目標が明らかになることで、新入社員も明確な意思を持って研修に参加したり、日々の業務に取り組めるようになります。
3.目標到達に必要な要素(内容)を書き出す
フェーズごとの目標に到達するために、必要な要素を書き出します。例えば入社後3ヶ月までに書類作成の基本を習得するという目標を定めるのであれば、書類作成のスキルに必要な研修を重点的に実施することができるでしょう。
あらかじめ目標到達に必要な要素を書き出しておくことで、教育内容が絞り込まれ、育成者も指導しやすくなります。
これは主に現場の上司や先輩が担う作業ではありますが、人事としても導入研修をしたらおしまい、というのではなく、新入社員の定着と育成のためにも、できるだけ関与したいものです。
4.適切な研修・教育方法を決定する
各フェーズの目標到達に必要な要素を書き出していくと、どのような研修・教育施策を用いるのかも明らかになります。
例えば、学生から社会人への意識転換を図るというのであれば、入社式における訓示だけで終わらせず、経験豊富な外部講師を招く、公開型研修に参加させるのもよいでしょう。
会社の業種・職種特有の知識、スキルであれば、上司や先輩が直接指導講師することになるでしょう。ワードやエクセル、パワーポイントなどの一般的な使い方を教えるのであれば、eラーニングによる自己啓発を助成するということも考えられます。
研修・教育手段はひとつではないので、習得したい内容に合わせて適切に選んでいきましょう。
5.育成のPDCAを回す
新入社員の教育でもPDCAを回すことは大切です。育成計画を立て、その通りに研修を実施したり、教育機会を設けていても、新入社員が期待通りに育つとは限りません。やはり現場の管理職はもちろん、人事部としても、育成目標と現状のギャップや能力開発における課題を把握し、対処するための仕組みが求められるでしょう。
目標管理(MBO)制度や1on1ミーティングなどは、そのための現状把握、フィードバックの機会といえるでしょう。
新入社員育成計画の実施に際して注意したい5つのポイント
導入研修など一斉に実施する研修とは異なり、現場配属の後は新入社員の育成は現場の管理職やメンター任せになるケースが多いでしょう。人事担当者はそのための環境や仕組み作りを通して、適宜適切なOff-JTを準備するなど、現場のOJTを支援することで、リテンションと早期戦力化をすすめていくことになります。
新入社員の育成計画を実行する際には、以下の5つの点に注意が必要です。
1. 企業理念や行動指針を反映した指導を行うこと
2. 社員の個性に合わせた教育を提供すること
3. 段階を経てスキルを習得できること
4. 目標を一目で分かるようにキャリアマップを作成
5. チェックシートを使って到達度をチェック
それぞれの点について確認していきましょう。
1.企業理念や行動指針を反映した指導を行うこと
教育の内容は、企業理念や行動指針を反映していることが前提となります。「言っていることとやっていることが違う」となれば、当然、新入社員の不信感は高まります。
例えば行動指針で「自立性があり自分で考えて行動する社員」を掲げているケースについて考えてみます。マイクロマネジメントばかりしたり、新人のアイデアをつぶすようなことが続いて、新入社員が自身で考えることができないようにしてしまうのでは、行動指針を反映した指導とはいえません。
じつは、新入社員はこいうした点にきわめて敏感なことが多いものです。「理想と現実は違う」などといって胡麻化しているようでは、早期離職につながりかねません。現場指導が企業理念や行動指針を反映した形で行われているのか、人事部として今一度、確認してみましょう。
2.社員の個性に合わせた教育を提供すること
フェーズごとに期間を定め、綿密な教育計画を立てたとしても、その計画がすべての新入社員に適しているとは限りません。社員一人ひとりの持ち味や成長速度は異なります。一人ひとりの個性に合わせた教育をプランニングするようにしましょう。
育成計画を立てる際に、期間と到達目標を厳密に決め過ぎてしまうと、社員の個性に合わせた育成がしづらくなることがあります。期間と到達目標を定めつつも、ゆとりを持たせ、臨機応変に調整できるようにしておきましょう。
大切なことは「個性」をつぶさないこと。このあたりは管理職の人材育成観にも左右されますので、「人を育てる」ということに対して、会社としての共通の価値観を現場と共有しておくようにしましょう。
3.段階を経てスキルを習得できること
スキル系の教育では、その到達目標があまりに大雑把にならないようにすることも大事です。到達目標に対して段階を設け、社員それぞれが自分のペースに合わせて、少しずつでも成長実感をもちながらスキルを習得できるように設計しましょう。人を育てるのには時間がかかるものです。丁寧に、根気よく育成することで、大きく育てるということを心がけましょう。
4.目的を一目で分かるようにキャリアマップを作成
育成目標が一目で分かるようにキャリアマップを作成します。どこまで到達したのかが可視化されることで、新入社員が目標を持って学べるようになるでしょう。入社から1年目、3年目など、成長のベクトルをわかりやすくすることも大切なポイントです。
5.チェックシートを使って到達度をチェック
目標に到達したかどうかを、チェックシートを使ってチェックするのもよいでしょう。教育を実施する側が主観的に「彼は使えない」などと、ざっくりとした人物評価をするようでは、評価にばらつきもでますし、新入社員が獲得する知識やスキルにも差が生じてしまうかもしれません。
チェックシートを利用して新入社員の不足する部分が何かを理解すれば、その不足点に注目して重点的に教育しやすくなるでしょう。
また、チェックシートを作成しておくと、新入社員も自分自身でどこまで目標に到達したのか確認できるようになり、自分の不足点が理解しやすくなります。
新入社員の指導係が抱えがちな悩みと人事としてのフォロー
会社全体で新入社員の育成計画を立てますが、実際に教育を担当するのは現場の上司や指導係となる先輩社員ということになります。とくに先輩社員はまだまだキャリアや経験も十分とは言えず、さまざまな悩みを抱えるものです。そこで、新入社員の指導係が抱えがちな課題と、人事部ができるフォローについてまとめました。ぜひ参考にしてください。
1. 新入社員に手がかかり自分の仕事ができない
2. 新入社員とのコミュニケーションが取りづらい
3. 教育する内容が多すぎる
悩み1.新入社員に手がかかり自分の仕事ができない
新入社員の指導には時間も手間もかかります。指導を担当するからといって、その分、自分の仕事が大幅に少なくなるわけではないため、思うようにはかどらないと、残業が増えることにもなるでしょう。
自分の仕事をする時間を確保するためにも、ある程度の指導をしたら、思い切って新入社員に任せる、ということも大切です。このとき、教える内容をマニュアルとしてまとめ、新入社員に渡す方法もおすすめです。
それでも時間がかかり過ぎるときは、周囲に相談しましょう。あくまでも新入社員の教育は会社全体で行うものなので、遠慮をせずに周囲の力を借りることが大切です。
悩み2.新入社員とのコミュニケーションが取りづらい
新入社員とコミュニケーションが取りづらいと感じるときもあるかもしれません。相性があまりよくないときは、指導の進度に影響が及ぶことがあります。
コミュニケーションを取りづらいと感じるときは、席の配置を変えることもひとつの方法です。新入社員が指導係以外ともコミュニケーションを取れるようにすることで、指導係だけに負担が集中しないようになり、ストレスも軽減されます。
悩み3.教育する内容が多すぎる
教育する内容が多すぎることも、指導係にとっては負担です。教える内容をマニュアルにまとめて新入社員に渡すことで、教育にかかる時間を短縮できるでしょう。
人事部としては、指導係の研修や情報交換会を設けることも、ぜひ検討すべきでしょう。指導力やコミュニケーション力が高まれば、短時間で効果的な教育が行えるようになり、なにより、その人自身の成長、リーダーシップの開発につながります。
まとめ
新入社員の育成は会社全体で行う必要があります。育成計画も会社全体で立て、現場ごと、あるいは指導担当者ごとに教育する内容や水準に差が出ないようにすることが大切です。
また、指導担当者だけに負担が集中しないように、適度に周囲がフォローすることも大切といえます。会社の戦力となる新入社員を適切に育てていくためにも、社内一丸となって育成に取り組んでいきましょう。