岩田松雄氏に学ぶテレワーク時代の「自分のミッション」の見つけ方
2022年2月 1日更新
テレワークが普及する今、新入社員や若手社員は、仕事のなかから、どのように「自分のミッション」を見出していけばいいのでしょうか。スターバックスなど数々の企業のトップを歴任し、数多くの企業の人材開発にかかわってこられた岩田松雄氏に学びます。
INDEX
テレワークのテクニックを習得する前に
テレワークが導入された。テレワークのテクニックを学ばなければ――。
ビジネスシーンが新しい局面を迎えている今、このように考える人は多いと思います。
実際、テレワークに関する仕事の進め方やコミュニケーション術、マネジメント方法など、スキルやテクニックをまとめた書籍やインターネットの記事をたくさん見かけます。それらをどんどん取り入れていこうというニーズがあることの証左といえます。
たしかに、スキルやテクニックは仕事の成果に直結するため重要です。しかし、それらの習得以前に、身につけ、育むべき「社会人としての土台」があります。地盤がしっかりしていないと家が傾いてしまうのと同様に、土台がなければ仕事の成果、社会人としての成長は望ません。
では、社会人としての土台とはどのようなものでしょうか。また、どうすればしっかりとした土台を作ることができるのでしょうか。
本稿では、PHP研究所刊・社員教育DVD『[テレワーク時代の]社会人やっていいこと・悪いこと』の監修者である元スターバックスCEO・岩田松雄氏の話をもとに、社会人教育、とくに新入社員や若手社員たちの教育について考えてきたいと思います。
岩田松雄氏に学ぶ「不易流行」の考え方
岩田松雄氏は、社員教育で重要な考え方として次のように言及しています。
「物事には不易流行というものがある。人として、社会人として、どうあるべきかということは、いつの時代も変わっていない」
不易流行とは俳聖・松尾芭蕉が「奥の細道」の旅の中で見出した蕉風俳諧の理念の一つで、わかりやすくいうと「変わらないものと、変化していくものがある」という意味です。芭蕉の俳論を弟子がまとめた書物『去来抄』では、不易流行について、以下のように書かれています。(※1)
「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」
良い俳句を作るためには、普遍的な俳句の基礎をまず学ぶべきである。しかし、新しいものも取り入れていかなければ、おもしろい俳句はできないという意味です。そして、『去来抄』は次のように続きます。
「千歳不易の句、一時流行の句といふあり。是を二つに分けて教え給へる、其の元は一つなり」
千年変わらない句、流行の句と二種類あるが、その根本は一つだというのが芭蕉の教えだというのです。
これは社員教育も同じです。岩田氏の言葉を借りると、次のように考えることができるでしょう。
●不易:社会人としてどうあるべきか
●流行:最新のスキル・テクニック
すなわち、社員教育でまず重要なのは「社会人としてどうあるべきか」を形成してもらうということです。これがないままにスキルやテクニックを教えても、一時的な成果は出るかもしれませんが、継続的な成果、そして成長は望めないといえるのではないでしょうか。
※1 参考:日本俳句研究会ホームページ
ミッション発見のポイント~まずは「好きなこと」を見つける
岩田氏は、「社会人としてどうあるべきか」を「ミッション」というワードに置き換えて、その重要性を主張しています。
「自分は何のために存在しているのか」「自分は何でこの会社で働いているのか」「自分は何でこの仕事をしているのか」ということの「答え」にあたるのがミッションです。これが、社会人としての成長、あるいは社会人人生に不可欠だというのです。
そこで、個々人がミッションを見つけるアクションを起こさなければなりません。岩田氏は「好きで、得意で、人のためになること」を見つけることがミッション発見のポイントだといいます。
とはいえ、最初の「好きなこと」を見つけるのも簡単ではありません。自分が希望した会社に就職し、希望した部署に配属されたのならともかく、希望とは違う仕事についている人のほうが多いでしょう。そういう状況の場合、「仕事を好きになれ」と言っても難しいものがあります。
そこで、「好きなこと」を見つけるために、次の流れを意識することをおすすめします。
【ミッション発見の流れ】
もちろん、仕事ではたくさんの紆余曲折が待ち受けているため、スムーズにはいきません。しかし、今置かれている場所で、まずは一生懸命にかんばってみるということが重要なのです。その一歩を踏み出し、毎日の仕事を積み重ねていけば、今の仕事はかならず「好きなこと」に変化します。そして、自分のミッションを見つけられるでしょう。
テレワークによって会社の求心力が低下
多くの会社で導入されたテレワークは、柔軟な働き方を実現した一方で、会社の求心力を低下させたといわれています。会社(あるいは仕事)に対して矢印が向きにくくなるため、働くモチベーションを保てない人が増えているのです。このことは社員教育をより一層難しくしているといえます。
「社会人として幸せな状態は、会社のミッションと個人のミッションが重なった時。そのために、若いうちから個人のミッションを見つける模索が大切」
岩田氏はこのように述べています。
新入社員、若手社員を教育する際は、ぜひミッションを意識できるような働きかけをしていただきたいと思います。
ケースドラマで「社会人としてのあり方」を考えるDVD教材を発刊!
PHP研究所が2022年2月に発刊する社員教育DVD『[テレワーク時代の]社会人やっていいこと・悪いこと』は、「社会人としての当たり前を学ぶ」をコンセプトに、新入社員や若手社員がやってしまいがちな「やって悪いこと」のドラマを通して、視聴者に「やっていいこと」を考えてもらうものです。
入社後の導入教育での視聴はもちろん、内定者研修や若手社員のフォロー研修での視聴など、さまざまなシーンでの活用できる動画教材です。そして、本DVD教材を通して「社会人としてのあり方」を見つけ、育んでいただくことができます。
社会人の土台作りは、早ければ早いほうがいいでしょう。のちのちの仕事人生に良い影響を与えます。また、固定観念が強くない若いうちのほうが、土台作りがしやすいでしょう。4月は教育内容を見直すいい機会です。スキルやテクニック以外の内容も充実させた教育プログラムをご検討いただきたいと思います。
(PHP研究所 産業教育制作部)