新入社員の主体性を奪うコミュニケーションとは?
2022年2月28日更新
入社当初は元気で溌溂としていた新入社員たちですが、数カ月の間にモチベーションが低下している。そんな状況はありませんでしょうか。彼ら彼女たちが本来もっている夢や希望、やる気を維持し、主体性をもって行動できる人材に育てるための方策を解説します。
「主体性のない人材」を育てるのがうまい会社
先日、ある大手電機メーカーの人事担当者から「当社は主体性のない人材を育てるのが得意です」という自虐的な話を聞きました。その会社は、学生の就職人気ランキングで常に上位に名を連ねていて、毎年優秀な人材を採用しています。それにもかかわらず、入社後数カ月の間に新入社員の元気がなくなって、言われたことしかやらない人材に「変身」するというのです。
この会社では、官僚主義的なマネジメントスタイルが長年続き、「上司の指示・命令は絶対」という文化が醸成されてきました。いきおい、新入社員が何か発言しても、上司がそれを受け容れなかったり、否定したりすることが多いそうです。
「上司の考えと異なる意見は受け容れられない」ことを理解した新入社員たちが、「言われた通りに行動しよう」「余計なことは言わないでおこう」という受け身のスタンスを選択するのは至極当然の結果かもしれません。
上司と部下のコミュニケーション
コミュニケーションの構成要素に「受容」と「共感」があります。
受容とは、相手をあるがままに受け容れることです。相手の考え方や思いの内容がどのようなものであったとしても、無条件に「あなたはそう考えたのですね」「そういう気もちになったのですね」という反応を示すことが受容です。
もう一方の共感とは、相手の意見や感情などに「そのとおりだ」と感じることです。相手の感情に寄り添い理解しながら、「私もそう思う」「それはつらいね」「腹が立つ気もちは理解できる」という反応を示すのが共感です。
共感、受容、やる気の連鎖
対人関係に大きな影響を与える受容と共感について、その定義を確認しました。次に両者の関係性が人のやる気にどのような影響を与えるか考えてみましょう。
パターン(1):[共感〇 ⇒ 受容〇 ⇒ やる気〇]
例えば、上司のもつ意見と同じ内容の意見を部下が言った時、上司は共感できるので、その後の展開も「そうだよね」というように容易に受容することができます。上司も部下も共にハッピーな気分になれます。
パターン(2):[共感× ⇒ 受容× ⇒ やる気×]
もう一つのパターンがやっかいです。上司のもつ意見と異なる意見を部下が言った時です。その時、上司は共感できませんので、「その意見は間違っている」と返してしまいがちです。つまり、共感できないので、即座に受容をしないという反応を示すのです。こういう対応をされると、部下は頭ごなしに否定されたという思いをもって、やる気と主体者意識が大きく低下してしまいます。
パターン(3):[共感× ⇒ 受容〇 ⇒ やる気〇]
したがって、上司と部下の意見が異なった場合(共感×)でも、まずは「君はそう考えたんだね」と受容したうえで、相手の話をじっくり傾聴することです。
人間の本質に立脚したマネジメントを
人は、自分の意見や考えを他者に受容してもらいたいという欲求をもっています。
上記パターン(3)で示したように、上司とのコミュニケーションの過程で「きちんと意見を言えた」「受容してもらえた」という感覚があれば、最終的に自分の提案が採用されなかったとしても、部下はさほど不満を感じないものです。
上司(先輩)は、こうした人間の本質を理解したうえで、部下(後輩)と向き合い、対話を重ねる必要があります。こうした地道な取り組みが、相手のやる気を高め、自分の発意で行動しよう、提案しようという主体的な社員の輩出につながるのです。
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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部兼人材開発普及部部長
1990年慶應義塾大学商学部卒業。同年PPHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士