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ニューノーマル時代の新入社員とのかかわり方~変化に適応できる人を育てるには?

2022年3月 4日更新

ニューノーマル時代の新入社員とのかかわり方~変化に適応できる人を育てるには?

ニューノーマルといわれる時代にあって、私たちはどのように新入社員にかかわればいいでしょうか。変化に適応して成果を出せる人材に育てるための、育成担当者や上司のかかわり方のポイントを、長瀬夕祐子氏の講演からご紹介します。

INDEX

新入社員を取り囲む世界

「新入社員をどう育てるか」を考える前に、まずは新入社員を取り囲む世界について考えてみましょう。私たちはいま、激変する世の中を生きています。
まずは、企業を取り巻く状況です。今、特筆すべきは、不採算事業の整理やビジネスモデルの抜本的な見直しを迫られる企業が増え、産業構造の転換や事業ドメインの見直しをせざるを得ない状況が生まれているということです。それによって、「わが社(部門)は、何のためにあるのか」というミッション自体の見直しを求められるケースも少なくありません。
また、DXの進展やリスク管理の重要性が高まる中で、デジタル技術をどう利用するかが、業績に大きくかかわる状況になっています。
⼈材マネジメントで注目すべきことは「遠⼼⼒の高まり」です。労働⼒不⾜を背景に、働き方改⾰が進み、副業解禁の流れが加速し、リモートワークを前提とした対人関係を考慮せざるを得ない状況になっています。多様な働き方を認めない会社からは人が離れ、多様性(ダイバーシティ)と一体性(インクルージョン)のバランスをどう図るかが問われる状況になっています。

主体性のある人材が求められている!

激変する社会環境、経営環境のなかで、私たちはその変化に対応することを余儀なくされています。過去にとらわれない「素直な⼼」で現実を直視し、相互に絡み合う問題を協同して解決していくために、何よりも求められるのは「主体性」ではないでしょうか。誰かの指示を待っていては、問題解決はできません。
新入社員とて例外ではないでしょう。リモートワークが浸透するなかで、これまでのように、いつでも先輩や上司の手厚い指導を受けられる状況ではなくなってきています。新入社員にも、自分で自分を成長させていくことが求められているのです。

最近の新入社員の傾向

では、最近の新入社員の傾向をみてみましょう。私が感じる新入社員の傾向ですので、会社の採用基準によっても変わってきますから、一律ではありません。あくまで傾向とお考えください。

いいところ

●基本的に素直でまじめな取り組み姿勢がある
●新人同士のコミュニケーションでは、譲り合って上手に会話する。発表も比較的そつなくできる印象がある
●協⼒して役割分担する。声が大きい人が場を仕切るなどの傾向はあまり⾒られない
●討議では全員参加型。皆で話す平和な場を形成する。競争・対⽴よりも協調・共感を好む
●情報収集⼒が高い。必要に応じて自分から情報を取りに来る。⼀方、情報過多で処理しきれない⾯も散⾒される
●「貢献したい」という想いが根底にある

育成において気をつけて関わらなければいけない部分

●すぐに正解を知りたがる傾向がある。研修などでは、正解がわかった後に安⼼して振り返りや討議が浅くならないように、育成担当者が目を配る必要がある
●年上の育成者や上司とのリアルなコミュニケーションは、どちらかというと苦手。最初は遠巻きに様⼦をうかがうところがある
●非効率なことを避け、合理的に進めたがる。たとえば新入社員研修で、電話応対の練習を繰り返しやってもらうと、「またやるのか」という空気を出してくる。「なぜ、それをやるのか」を伝え、納得すると、しっかり取り組むようになる
●慎重なところがある。情報を集めてから発言したい傾向がある。失敗することを恐れる。研修などでは、全体のなかで手を挙げて発言するのを避ける。失敗しても大丈夫という環境をつくる必要がある
●「やる気があれば何でもできる」といった精神論に対しては冷めてしまう

新入社員が育ってきた時代

新入社員のこうした傾向には、育ってきた時代背景が大きく影響しています。新入社員たちは、8歳~12歳の間に東日本大震災を経験しています。青春時代はコロナ禍でした。授業はPC越し。常にマスク。自粛で羽目を外せない......。「孤独」「不安」「個人作業」がキーワードになるような、大変な環境をがんばって生きてきたのが今年の新入社員なのです。

具体的なかかわり方「3つのキーワード」

今年の新入社員とのかかわりで大切なことを、私は「あ・た・い」とまとめています。順にご説明しましょう。

あ:安心感
「居場所はここだ」という安心感の確立

た:対話
お互いの前提に触れる対話を生み出す

い:一緒に考える力
「一緒に考える力」の開発を心掛ける

安心感

下の図は、ダニエル・キムの成功循環モデルです。

ダニエル・キムの成功循環モデル

社会全体に景気がよく、結果が出る時代においては、人と人との関係の質が良くなりやすく、それが思考の質を高め、行動の質を高め、また結果を出すことにつながります。ところが、今は激変する経営環境のなかで、業界によっては結果が出にくい状況にあります。結果が出ないと上司と部下の関係の質が悪くなり、それによって思考の質が落ちる、という悪循環になりがちです。
そうした状況で意識しないといけないのは、「関係の質」をしっかりつくって新入社員を支えることです。「私のありのままを受け入れてくれる職場がある。だから、がんばろう」と思うことができれば、新入社員も勇気をもって行動できます。

そのために、まずは、職場の仲間と一緒に仕事をする充実感、一体感を体験してもらうこと。そして、上司や育成担当者が、たてまえではない本音でのかかわりをすることが必要になってきます。
具体的に育成担当者や上司側が工夫できる点は何でしょう。たとえば、笑顔、明るい声。「非言語」に気を配ることは重要です。また、話しすぎないように、何でも相談してもらえるよう⼼配りすること。傾聴・承認・問いかけを増やすというかかわりも必要になってくるでしょう。
オンラインでのかかわりも増えていると思いますが、オンラインでは「非言語」は3割増し。双方向を増やす。前向きな言葉を使う。そして、振り返りによる成長を促すなどに気をつけたいものです。

参考記事:ダニエル・キムの「成功循環モデル」~リモート環境で「関係の質」を高める方法とは?

対話

新入社員とのかかわりで、心掛けたいことの2つめが対話です。なぜ対話が大切なのか、考えてみましょう。
皆さんもお気づきのように、今、新入社員の内側にある「そもそも考えていること」が多様化し、しかもそれが表⾯化しにくくなっています。また、「個性を尊重する」というところが強くなって、お互いの関係性は浅く、踏み込まないコミュニケーションが主流になっています。
新入社員の内側が見えにくいなかで、研修や上司・先輩に教えられたことが実は腹に落ちていない、納得していないという状態のまま現場に配属され、そこで本人たちが違和感を覚えるようになると、なかなか修正ができません。そして、早期に離脱ということにつながります。そうした事態を回避するためにも、4~6月の早い段階で、新入社員に違和感を出させるような対話をしていくことが大切になってくるのです。

そこで、新入社員との対話でポイントとなる「質問」のスキルを具体的にご紹介していきます。
たとえば、導入研修で「ビジネスパーソンは身だしなみを整えることが大切」と講師が説明したとします。新入社員は内側でどのように考えるでしょうか。

Aさん
社外の人に会う機会が少ない部署に配属される自分には、あまり関係ないもんな

Bさん
僕が尊敬しているカリスマYoutuberは「むしろカジュアルで行け」「スーツの人が正しいというのは頭が悪い」って言ってたけどな

Cさん
身だしなみって大切よね。なんとなくだけど

質問スキル1:前提に問いかける質問

そこで、まずは「そもそもの前提に問いかける質問」をします。
「身だしなみってテキストに書いてあるけど、ほんとうに大事なのでしょうか」
「仕事そのものができたら必要ないのではないですか」
このような前提に問いかける質問で、新入社員に協同の思考を生み出すきっかけをつくります。前提に問いかける質問について自分なりの答えを導き出そうとすることで、新入社員に主体的に考える姿勢をつくってもらいます。

質問スキル2:追加質問~横に展開する

ここでCさんが「ビジネスマナーや身だしなみって重要だと思います」と発言したとします。このときに有効なのが「縦に深める質問」です。
「なぜビジネスマナーって必要なのでしょうか」
この質問で、一人ひとりに、さらに思考を深めてもらいます。

質問スキル3:追加質問~横に展開する

ここでCさんが「周りからの信頼を得て人間関係も円滑になるからです」と答えたとします。次に講師は、横に展開する追加質問をします。
「Cさんの意見を聞いて、みなさんはどう思いますか?」
「Aさんどうですか?」。

こうした質問を投げかけ、「思考の枠組み」に触れる機会を増やすことで得られることはたくさんあります。
・相互理解が深まる
・思考⼒が⾼まる
・主体性が育つ
・思考の枠が柔軟になり変化に強くなる
育成担当者や上司が質問することで、新入社員は主体的に考えるようになり、成長が加速します。研修だけでなく、会話のなかでも問いかけによって成長を促すことが大切です。

参考記事:問いかけの効果~イノベーションを促進し、部下を育てる

一緒に考える力

新入社員と関わるうえでポイントになること。その3つめが、一緒に考える力の開発を心掛けることです。
激変する社会のなか、私たちの前に現れてくる問題の原因は複雑に絡み合っています。問題を解決し、結果を出すには、問題の本質をとらえる力が必要です。何が重要なのかを、周りと一緒に考え、解決していく力を養っていく必要があります。
一緒に考える力を身に付けると、以下のような利点があります。
・視点が拡がる、視座が上がる
・転用力・応用力がみにつく
・絡み合う問題を俯瞰してみる力が備わる
・ダイバーシティ&インクルージョンの促進(多様性を受け入れられるようになる)

一緒に考える力を養うためには、「経験から学ぶこと」が大切です。育成担当者や上司は、彼らに振り返りの機会を与えることを心掛けるといいでしょう。振り返りの量は成長の量に比例します。研修だけでなく日頃から意識して新入社員の振り返りを促すことが大切です。

まとめ

新入社員とのかかわり方まとめ

コロナ禍以前であれば、一通りのビジネスマナーや、業界ごとの一年目で学ぶべき知識をインプットしておけば、なんとかオンボーディングできたものです。しかし今は、知識のインプットに加えて、変化に適応できる力をつけていくためのかかわりが必要です。
安心感、対話、一緒に考える力。この3つを心掛け、新入社員を育てていきたいものです。

※本記事は、2022年1月28日にオンライン開催された「2022年度 PHP新入社員研修説明会」長瀬夕祐子講師の講演を抜粋編集して作成しました。

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長瀬夕祐子(ながせ・ゆうこ)

長瀬夕祐子

航空会社勤務後、教育業界に転職。外国語専門学校の講師を経て、日本最大手コーチ養成機関にて後続コーチの育成クラスを担当。日本アクションラーニング協会にてメイン講師を担当、また医療従事者向けコーチ養成機関にてコーチ養成講座を担当。これまで、約1300回の組織の問題解決支援を経験。"人が育ち元気になる研修"を提供し続けている。現在、PHPゼミナール講師。

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