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「成功循環モデル」とは? 注目を集める背景や成功のポイントを解説

2022年6月13日更新

「成功循環モデル」とは? 注目を集める背景や成功のポイントを解説

「成功循環モデル」が、業績と組織風土の関係性を明確に説明した理論として注目を集めています。しかし、理屈はわかるけれど実際にそれを運用するのは難しいと言われます。そこで本稿では、「成功循環モデル」とは何か、注目される背景や、現場でどのように運用すればいいのか、ポイントを解説します。

INDEX

「成功循環モデル」とは?

「成功循環モデル」は、組織が成果を上げ続けるために必要な要素とプロセスを明らかにしたもので、サイクルの回し方によって、グッドサイクルとバッドサイクルの2種類に分類されます。

成功循環モデル

グッドサイクル

グッドサイクルは、組織を構成するメンバー相互の「関係の質」をまず高めることから始めるアプローチです。「関係の質」を高めるためには、メンバーの相互理解や相互尊重を深めたり、一緒に考えること、すなわちコミュニケーションを促進します。そうすると、気づきを得たり面白さを感じることができ、「思考の質」が向上して、自発的・積極的に行動するようになり、「行動の質」が向上。その結果、「結果の質」が高まって、「関係の質」がさらに向上するというように、プラスの循環が続いていくのです。

バッドサイクル

一方のバッドサイクルは、結果を追い求め、目先の業績を向上させようとするところから始まります。そうしたやり方には無理があるので、強制力や指示命令の行使、やらされ感の高まりによって「関係の質」が低下します。「関係の質」の低下は、「思考の質」と「行動の質」の低下につながります。自発的・積極的に行動しなくなるので、成果が上がらず、「結果の質」の低下、職場のさまざまな問題の発生というマイナスの循環にはまり込んでしまうのです。

つまり、このモデルが主張しているのは、生産性を上げたり、職場の問題を解決する大前提が「関係の質」の向上であり、そのためにコミュニケーションのあり方を見直すべきだということなのです。

「成功循環モデル」が注目される背景

「成功循環モデル」が注目される背景には、日本企業が抱えるコミュニケーション不全の問題があります。

コミュニケーション不全の問題

コミュニケーションのあり方に起因する職場のさまざまな問題は、実はリモートワークが普及して始まった話ではなく、日本企業がずっと抱えてきたものです。
例えば、2017年の米国ギャラップ社の調査では、日本人従業員のエンゲージメントの低さは国際的に見ても際立っていましたし、職場のメンタル不調者の数やハラスメント事案の発生件数もここ数年ずっと高止まりして推移しています。
そして、これらの問題が発生する原因の大半がコミュニケーションにあるというのが、多くの専門家の一致した見解です。

求めれば求めるほど、遠ざかる成果 

業績の悪い組織ほど、短期的な成果獲得を求めてメンバーに強いプレッシャーをかけ続けます。そして、期待していた成果が得られないと、さらにプレッシャーのレベルを上げて一人ひとりを追い込んでいきます。
こうなると、人は成果獲得のためなら手段を選ばず何でもやるようになります。その行為が「コンプライアンス違反になるかもしれない」とわかっていても、強力なプレッシャーから逃れたい一心で、違法行為に手を染めてしまうのです。

数年前に、強引な手口で顧客に金融商品を購入させて問題になった某金融機関などでも、上記のような状況が現場で起きていたのではないでしょうか。
業績向上に強いこだわりと責任感をもつリーダーのもとで、組織全体が成果を求めれば求めるほど、逆に成果が上がらなくなるというのは皮肉なものです。

関係の質を高める「傾聴」のコツ

では、関係の質を高めるために、具体的にどのようなコミュニケーションをとればいいのでしょうか。コミュニケーションの構成要素はいくつもありますが、現場の上司・先輩・指導員の方がたが、手っ取り早く取り組めるのが「傾聴」です。
傾聴とは、相手の話を途中でさえぎらず最後まで聴くことです。また相手のことばの奥にある本音までも理解しようと意識を傾けて聴く態度でもあります。効果的な傾聴にはいくつかポイントがあります。

1)アイコンタクト
相手と時々、視線を合わせて話を聴く

2)リアクション
うなずき、あいづちなどを加えながら聴く

3)ペーシング
相手の話し方(速さ、高低等)にペースを合わせる

4)要約
相手が話し終わった後に、要約する

なかでも大切なのが要約です。例えば、「今のあなたの話は、法人営業という仕事で成果を出すことに自信がないということなんですね」というように、相手の話を要約して返してあげるのです。そうすると、「自分の思いを受け止めてもらえた」という感覚になり、たとえ解決策が得られなくても心理的な満足感は得られるのです。

「成功循環モデル」の落とし穴

「成功循環モデル」が主張しているのは、関係の質を高めてグッドサイクルを回していくのが遠回りのように見えるが、実は確実な業績向上の方法であるということです。

しかし、往々にして組織責任者が陥りやすいのが、関係の質を高めるということの意味の誤解です。良好な関係をつくるためには、意見が対立したり、怒りの感情が職場で起きてはいけない。だから、上司は言いたいことがあってもぐっとこらえないといけないし、メンバーを叱責してはいけない、相手が過ちをおかしても大きな度量で受け容れなければいけない、等々。つまり、関係の質を高めるためには、組織責任者はやさしさと寛大さを発揮しないといけないと誤解してしまうのです。

こうした職場は関係の質が高いわけではありません。単なる「ゆるい職場」として、個人の成長も組織の業績も上がることは決してないでしょう。

参考記事:「心理的安全性」とは?「ぬるま湯組織」が若手社員の成長を阻む

「成功循環モデル」を成功させるポイント~目的の共有によるストレッチ

したがって、「成功循環モデル」を成功させるポイントとは、職場の関係の質を高めつつ、相応の努力をしないと達成できないようなストレッチ目標を一人ひとりにもたせることです。つまり、心理的安全性を確保しつつ、仕事に対する緊張感を感じさせるような硬軟のバランスの取れた職場風土を構築するのです。

そして、ストレッチ目標に向き合っていくためには大義名分が必要です。

  • なぜ、それをやるのか?
  • それに取り組むことで何が得られるのか?

仕事や組織のパーパス(目的)を明確にし、一人ひとりがそれを「自分ごと化」できれば、ストレッチ目標に向かってチャレンジする意欲が内側から生まれます。
こうした地道な取り組みで土壌(組織風土)を耕しておけば、「成功循環モデル」が自走し始め、勝ち続ける組織へと進化していくでしょう。

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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