社会人に求められるコミュニケーション力
2022年3月28日更新
社会人として豊かな人間関係を構築するとともに、取引や交渉を行う相手とのやり取りをスムーズに進めるためには、コミュニケーション力を高めていくことが必要不可欠です。新社会人には、まずは、好感をもたれる会話のポイントとビジネス文書の書き方をしっかりとおさえてもらいましょう。
INDEX
好感をもたれる会話のポイント
一人前の社会人になるには、相手のことをきちんと考えながら、好感を持たれる会話ができるようになることが大切です。好感をもたれる会話ができるようになれば、社内外で良好な人間関係が築かれ、ビジネスチャンスも広がっていくでしょう。新入社員には、まずは以下のポイントを教えておきたいものです。
- 要点をおさえて簡潔に話す
- 「イエス・バット法(後述)」で相手の話を肯定的に受け止める
- 正しい敬語を使う
- 早口にならないよう注意する
- 相手の反応を見ながら話し、相手にも話してもらうよう心がける
「イエス・バット法」とは何か
「イエス・バット法」とは、相手の考えに賛成できないと感じたときでも、いったん肯定的に受け止めたうえで、自分の考えを述べる方法のことです。最初から否定すると、相手の態度が硬化して会話が平行線になってしまう場合があります。「なるほど、......ということですね。例えばこういう考え方は成り立つでしょうか?」といった具合にやわらかく切り返すことで、お互いに接点を見つけようとする建設的な会話が可能となるのです。
尊敬語、丁寧語、謙譲語について
「相手を敬う気持ち」を表す敬語が正しく使えるように指導していくことも大切です。社会人らしい話し方を身につけることで、仕事上の会話がスムーズに運ぶようになります。敬語には「尊敬語」「丁寧語」「謙譲語」の3種類があります。それぞれの違いを確認しておきましょう。
(1)尊敬語
相手の動作を表す言葉に「~れる」「~られる」「お~になる」をつけることで、相手を敬う話し方。「来る→来られる」「答える→お答えになる」など。
(2)丁寧語
「です」「ます」をつけて丁寧に話すことで、相手への敬意を表します。「見る→見ます」「知っている→知っています」など。相手の名前には「様」をつけ、自分のことを「わたくし」というのも丁寧語です。
(3)謙譲語
自分がへりくだることで、間接的に相手に敬意を表す話し方。「いう→申し上げます」「行く→うかがいます」「見る→拝見します」など。
社内、社外の人の呼び方
新社会人が戸惑いやすいのが、自社の人と他社の人の呼び方です。他社の人と話すとき、自社の人間はたとえ社長でも呼び捨てにするのがルール。ビジネスの現場で他社の人と話すようになる前に、できるだけ早く習慣にしてもらう必要があります。
- 自分や自社のこと→「わたくし」「わたくしども」「当社」「弊社」など
- 相手の会社のこと→「貴社」「御社」「そちら様」「〇〇会社様」など
- 他社の人に自社の人のことをいう場合→「(呼び捨てで)〇〇が」「課長の〇〇が」など
- 他社の人のこと→「(役職名をつけて)〇〇課長」「〇〇様」など
- 自社内での上司の呼び方→「〇〇課長」「〇〇さん」など
- 自社内での先輩の呼び方→「〇〇さん」
ビジネス文書作成のポイント
仕事を始めると、さまざまなビジネス文書を作成する機会が出てきます。ビジネス文書の基礎をマスターしてもらうことも、新人教育の重要な課題といえるでしょう。ビジネス文書を書く際には、次のような点に注意する必要があります。
- ビジネス文書は横書きが原則。儀礼的な文書に関しては縦書きが一般的
- 一目で内容がわかるタイトルをつける
- 読んだ人が全員理解できる平易な言葉を用いる
- センテンスは短くまとめる。箇条書きも活用する
- 通常の文書はパソコンで作成するが、お礼状や見舞い状などは手書きで丁寧に
- 書き終わったあとに見直す習慣をつける
- 句読点を打って区切りを明確にする
- 5W2H(When、Who、What、Why、Where、How、How much)で内容を確認する
報告書の具体例
ポイント
(1)日付のないものは文書とは言えない。忘れず書く
(2)他部署の人への報告なら、〇〇課など相手の部署名も書く
(3)必ずタイトルをつける
(4)箇条書きを使うため"記"の形式で書く
(5)相手のことを書く場合は「役職名」「氏名(苗字と名前)を書く
(6)最も重要な報告部分。決定事項と、未決定だが今後の検討事項を分けて書く
(7)報告者の判断であり、今後の仕事の進め方を示す。結果とは分けて記述する
社外文書作成の基本パターン
社外に向けた文書を作成する際には、本文の冒頭に「拝啓」などの「頭語」を、最後に「敬具」などの「結語」を書きます。さらに頭語に続いて「時候のあいさつ」、「前文」、「感謝の言葉」を述べたのち、本題となる内容を書くのが一般的なパターンです。
(1)「頭語」と「結語」の組み合わせ例
・通常の場合→「拝啓+敬具」
・丁重な場合→「謹啓+敬白・謹白」
・返信の場合→「拝復+敬具」
・簡略の場合→「前略+草々」
(2)「時候のあいさつ」の例
・新年の場合→「新春の候、年頭にあたり謹んでごあいさつ申し上げます」
・4月の場合→「陽春の候、すっかり春めいてまいりましたが」
・7月の場合→「盛夏の候、急に暑さが増してきましたが」
・10月の場合→「秋冷の候、日ごとに秋の深まりを覚えるこの頃ですが」
(3)「前文」の例
・会社宛→「貴社におかれましてはますますご発展のこととお慶び申し上げます」
・個人宛→「皆様におかれましてはますますご清祥のこととお慶び申し上げます」
(4)「感謝の言葉」の例
・会社、団体、個人宛→「平素は格別のお引き立てを賜り厚くお礼申し上げます」
社外文書の具体例
ポイント
(1)部署ごとの文書番号。会社によってはつけない場合もある
(2)株式会社を(株)と省略しない。自社の場合も(株)と省略しない
(3)役職名、氏名を書く。氏名は、苗字と名前を書く。役職者名は文書に責任を持つ部署の代表者名(部長・課長)で書く
(4)文書のタイトルを書く
(5)頭語と結語。謹啓―軽白など。結語は1字分あげる
(6)前文と感謝の言葉を書く
(7)要点を箇条書きにする
Eメール送信時の注意点
ビジネスにおける日常の連絡では、社内社外を問わずEメールが多用される時代となりました。電話と違って送信相手の「手を止めない」という利点があるため、緊急の用事でなければ、Eメールだけでやり取りを済ませることもあります。Eメールのマナーについても、新入社員育成の初期の段階でしっかりと指導しておくことが大切です。 新入社員には、以下のような項目をEメールの注意点として伝えるとよいでしょう。
- 文章作成後、送信する前に読み返し、内容は明確か、誤解を招くような表現はないかを確かめる
- 受け取ったメールに返信する際、元のメールの引用は必要最小限にとどめる
- 読んだ人が全員理解できる平易な言葉を用いる
- 件名は用件が簡潔に伝わるように工夫する
- 文章の区切りとなる箇所は1行あけると読みやすい
- 特殊な記号など送信先で文字化けする可能性がある「機種依存文字」は使用しない
- 文書の最後に「署名」をつけるのが一般的。内容は社名、部署名、氏名、住所、電話番号、Eメールアドレスなど
- 急ぎの場合は、Eメール送信後に電話をして相手に確認してもらう
※本記事は、PHP通信ゼミナール『<新版>めざせ!プロ社会人。』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
PHP通信ゼミナール
『<新版>めざせ!プロ社会人。』
会人としての考え方や仕事に必要な基本スキルを学習し、「プロ社会人」としての自覚を植え付けることで、入社後の早期戦力化を図ります。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。