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新入社員に求められる心構え、仕事の心得

2022年11月17日更新

新入社員に求められる心構え、仕事の心得

新入社員に求められる心構えや仕事の心得について、さまざまな視点からご紹介します。新入社員の時期には能力やスキルを伸ばすことも重要ですが、それ以上にメンタル・人間性、ものの見方・考え方といった人としての「土台」を培ってほしいものです。

INDEX

新入社員としての心構え

現代社会はさまざまな問題を抱えています。政治、経済、教育、福祉、医療など、社会の課題は多岐にわたっており、ともすれば「政治家が悪い」とか、「官僚が悪い」とか、「学校が悪い」といった責任論が取り沙汰されることもあるでしょう。
しかし、野球の試合結果が監督やコーチだけの責任ではなく、選手一人ひとりのプレーに原因があるように、社会における諸々の問題についても、社会を構成する一員である私たちに責任の一端があるのではないでしょうか。
大事なのは、私たち一人ひとりが「社会に貢献すべき社会人の一員である」という自覚をもち、社会に対する責任を果たしていくことです。まだ社会に出たばかりの新入社員に対しても、そうした自覚を促し、一人前の社会人に育てていくことが大切であるといえます。

仕事の心得~人間関係はすべての基本

新入社員には、社会人としての常識や礼儀、マナー、誠実さを身につけさせることが重要です。なぜなら、それらは周りの人たちとの良好な人間関係を構築する、コミュニケーションの土台となるからです。そうした良識を身につけるためには、社会生活の中で多くの人と関わりをもちながら、体験的に、謙虚に学ぶことが不可欠です。
そもそも人は他人と関わらずに生きていくことはできません。その中で、例えば部下と関わることで自分が上司であることを自覚したり、自分より優れた人と関わることで自分を高めようと努力したりするわけです。新入社員には、誠実さや思いやり、社会人としての良識を身につけ、豊かな人間関係を築いていってもらいたいものです。

人は一人では生きられない

仏教の教えに、「地獄と極楽とは何が違うのか」を表現したお話があります。地獄も極楽も、同じように大きなテーブルにご馳走が並び、そこにいる人の手には長い長いしゃもじがくくりつけられていました。地獄にいる人たちは、しゃもじが長すぎて「自分の口」に食べ物を運ぶことができずにやせ細っています。これに対して極楽にいる人たちは、長いしゃもじを使ってお互いに「他の人の口」に食べ物を運んであげているので、みんな健康に笑顔で暮らしています。
この説話にはいろいろな意味が考えられますが、ひとつには、「人は相寄ってともどもに力を合わせ、助け合っていくのが人間本来の姿である」という教えが表現されているのではないでしょうか。大勢で助け合って生きることで人間の生活は向上し、一人ひとりの幸せも増大していきます。言い換えれば、「人間は一人では生きていけない」ということです。仕事においても同様です。そこには必ず相手がいて、さらにその相手にもまた別の相手がいて、お互いに助け合うことで仕事が成り立っているのです。
実際、衣食住に必要なものはほとんどすべて、自分以外の人がつくってくれたものを利用して生きています。医療、教育、警察、消防、交通機関、各種インフラ、放送、出版、通信などのサービスなども必要であり、基本的にはすべて自分以外の人たちの仕事によって与えられています。それらの分野で仕事をしている人自身も、自分以外のたくさんの人がいなければ、仕事そのものが成立しません。

共存共栄の心を育む

また人間には、「他の人たちとの心の通い合い」も必要です。つまり私たちは物心両面で、他の多くの人たちのおかげで生活し、活動しているわけです。だからこそ、自分のことだけを考えて生きるのではなく、他の人たちと力を合わせ、心を合わせていかなければなりません。
人間の社会は、さまざまな複雑な問題を抱えながらも、その歴史を振り返ると、これまで刻々と進歩発展してきたことがわかります。家庭、学校、企業、地域社会などで社会生活を営みながら、人それぞれの働きが自他ともに益に結びつくような制度やルールをつくり、社会の発展はもちろん、国家や世界人類の共存共栄を図ろうとしています。また人間だけでなく、他の動植物や地球環境にまで考えを及ぼしているのです。
いろいろな場で、それぞれの人が持ち味を生かし、助け合い、知恵と力を寄せ合って、社会生活を向上発展させていくところに人間本来の姿があるといえます。だからこそ、自分ひとりだけの向上発展にとらわれず、他の人とともに向上していこうという「共存共栄」の心を育んでいくことが大切なのです。

受けたサービス以上のサービスを返す

繰り返しますが、私たちは一人では生きていくことができません。お互いに力を寄せ合い、それぞれの「働きの効果」を交換し合うことによって、それぞれが生活していくことが可能となるのです。言い換えれば、社会生活を送っている私たちは、必ず「他の人々からさまざまなサービスを受けている」ということです。
仮に、誰もが「10」のサービスを他者から受けているとして、その誰もが「9」とか「8」しか社会にサービスを提供しなかったら、社会全体としての「サービスの総量」がだんだん少なくなってしまいます。つまり社会が徐々に衰退していくということです。
したがって、お互いに自らの生活や人生の向上を望むのであれば、自分が受けるサービス以上のサービスを社会に提供していくことが不可欠です。「10」のサービスを社会から受け取っているなら、「11」のサービスを社会にお返ししていくということです。その結果、社会全体の「サービスの総量」が増加し続け、回り回ってお互いの生活の向上や社会の発展につながっていくのです。

自分の仕事に責任をもつ

古代において、人間は「分業」という方法を編み出し、生活を豊かにしていったと考えられます。一人ひとりが生活物資をすべて自分で調達していた非効率の状態から、「ある人は食べ物をつくる」「ある人は着る物をつくる」「ある人は道具をつくる」といった具合に、種々の仕事を「手わけ」して行うやり方を生み出したのです。これにより個々の技術も生産性も上がり、創意工夫も生まれて、豊かな地域社会が形成されていったのでしょう。
「分業」するということは、各々が自分の仕事に責任をもたなければなりません。「ある人はより美味しい食べ物をたくさんつくる」「ある人はより質の高い衣服をたくさんつくる」「ある人はより優れた道具をたくさんつくる」ことで、その社会全体の需給バランスが保たれるからです。誰かが仕事をさぼれば、他のみんなに迷惑がかかります。
「分業」という英知を得たことで、人間は互いに助け合いながら、また相互に社会的責任を果たしながら、これまで進歩発展してきたのではないでしょうか。これはまさに、長いしゃもじで「食べる」ことと「食べさせる」ことを分業し、お互いに食べ物を与え合ってきた成果であるともいえます。

能力を磨くことが大切

社会人としての自覚と責任をもち、共存共栄を目指し、受けたサービス以上のサービスを提供して社会を発展させていくためには、一人ひとりが能力を向上させていくことが重要です。日本では、狭い国土に1億2000万人の人口を抱え、天然資源に恵まれていないにもかかわらず、GDP世界第3位の経済大国として豊かな生活が築かれています。これが実現したもとは何かといえば、長きにわたる日本の歴史・伝統・文化に加えて、国民一人ひとりが実力を発揮した成果だと考えられます。今後も生活の維持・向上を図っていくためには、それぞれがさらに能力を高め、国全体の実力を高めていかなければならないのです。

天分を見い出し、天分に沿った仕事に就く

一人ひとりがのびのびと能力を向上させ、本業を通して前向きに社会生活の向上に貢献していくためには、その人の「天分」に沿った仕事に就くことが重要です。
PHP研究所の創設者・松下幸之助(パナソニック創業者)は「天分」について次のように述べています。

人にはおのおのみな異なった天分、特質というものが与えられています。私は、成功というのは、この自分に与えられた天分を、そのまま完全に生かしきることではないかと思います。それが人間として正しい生き方であり、自分も満足すると同時に働きの成果も高まって、周囲の人びとをも喜ばすことになるのではないか

引用元:『人間としての成功』PHP研究所

会社においても、社員が実力を発揮するために、適材を適所に配置できるよう配慮していくことが大事になってくるでしょう。
その一方で、本人が自分の「天分」を見出す努力をしていくことも大切です。例えば「自分の天分を見つけたい」という強い願いをもって日々生活することで、何かのきっかけでふと天分に気づけることもあるはずです。あるいは「私心にとらわれず、物事のありのままの姿を見ることができる『素直な心』」で毎日の仕事に取り組むうちに、天分が見つかることもあるでしょう。社員教育を通して、そうした意識づけを行っていくことも、社員の成長には欠かせないといえるのではないでしょうか。

給料をくれるのはお客様

いまの社会では、大半の人が、企業など組織の一員として働き、そこで収入を得ています。では、月々の給料はいったい誰がくれるのでしょうか。形のうえでは、自分が所属している会社や団体からもらっているように見えます。しかし、そのお金はもともと、例えばモノづくりの会社なら、自分たちつくったものを売って得た「売上げの一部」が給料として配られているのです。つまり、本当の意味で給料を払ってくださっているのは、提供する商品やサービスを買っていただいたお客様だといえるわけです。言い換えれば、私たちの給料は、私たちの会社が社会に奉仕していることに対して、世間の人々から与えられた報酬の一部なのです。
給料をいただく限り、一人ひとりが自分の仕事に責任をもち、ふさわしい働きをしなければなりません。企業など組織体において、一人ひとりの仕事は密接につながっており、みんなが怠りなくやっていくことが大切です。そうすることで消費者や世の人々の生活が向上し、私たちも給料を得て暮らしてくことができるのです。

なぜ税金を払うのか

働いて給料をもらうと、その一部が税金として国や地方公共団体に納められます。私たちが税金を払う目的についても、一度確認しておく必要があるでしょう。世の中にはさまざまな仕事がありますが、お互いに奉仕し合うべき社会において、各々の会社がそれぞれ独自のやり方で仕事をすると、利害がぶつかって社会全体が混乱したり、異なるルールとルールがぶつかってうまく機能しなくなったりする可能性があります。
そのため、人間の社会という巨大な組織において、それぞれの活動が円滑に行えるように、「間に入って調整する役目」を担当する人がどうしても必要になるのです。この社会の「調整役」が、いわゆる「政治」や「行政」であり、それにたずさわる公務員の方々ということになります。例えば10人のうち1人の人に調整役になってもらい、残りの9人が調整役の給料や経費を負担するわけですが、この負担分が「税金」だと考えればいいでしょう。

人の役に立つことが自分の幸福感を高める

人生とは「人が生きていく」ということです。もっといえば「人として歩むべき道」を歩んでいくことです。また、「他の人とともに生きていく」ことでもあり、「他の人のために生きる」ことでもあるといえるでしょう。
人は「喜び・満足・幸福」を追求するように生まれついています。自分一人で感じる喜びもある一方で、人の「喜び・満足・幸福」を徹底して追求していくと、「他の人との関わり」が重要になってきます。世界価値観調査によれば、親子関係、友人関係、職場の同僚との人間関係が良好な人ほど、幸福度が高いのだそうです。これはつまり、「人は人間関係を通じて自分の存在価値を実感している」ということなのでしょう。
どんな職業でも、どんな目標でも、その行いを通じて「世のため人のため」になることが成功の鍵だといえます。つまるところ、「人生の目的」とは「人の役に立つこと」であり、それを通して自分の満足感や幸福感を高めていくことではないでしょうか。

※本記事は、PHP通信ゼミナール『社会人・企業人として大切なこと』のテキストを抜粋・編集して制作しました。

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森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。

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