新入社員が辞めたくなる前に人事部や上司がすべきこと
2015年12月 9日更新
入社して3カ月が経ったころ、新入社員はうまくいかないことに耐えられるかどうかの限界が来ます。辞めたいと言い出す前に、人事部や上司がどう対応するのか。茅切伸明氏の解説です。
入社して3カ月が経ったとき、新入社員は...
あなたは、仕事を辞めたいと思ったことがありますか? 仕事をしていると必ずといっていいほど、壁にぶつかります。そんな時、新入社員に限らず誰しも会社を辞めたくなるものです。特に、新入社員ほど「どうせ辞めるのなら早い方がいい」と考える傾向があり、ますます早期離職に拍車がかかっています。
「入社して3カ月後あなたはどのように感じていますか」という意識調査を実施したところ、「思った以上に厳しい」と感じる新入社員がほとんどです。さらに、「それはどんな時に感じたのか」を質問してみたところ、「失敗したとき」、「叱られたとき」、「人間関係が難しいと感じたとき」と続きます。3カ月過ぎた頃、うまくいかないことに耐えられるかどうかの限界が来るため、会社や上司がしっかりサポートする必要があります。
新入社員フォローアップ研修の早期化
最近、私は人材開発担当者に新入社員フォローアップ研修は入社6カ月後の実施では遅いと言っています。入社6カ月後のフォローアップ研修の前に、入社3カ月後にもフォローアップ研修を実施することをおすすめしています。
人材開発担当者は新入社員から退職願いが出る前に何に悩んでいるのかをつかむ必要があります。入社してから3カ月間を振り返るワークをさせて、心の変化を折れ線グラフで表現してもらいます。すると彼らの心の変化が手に取るようにわかります。
新入社員にとって、入社して3カ月間は毎日新しいことの連続です。新しいことに取り組んでいると、悩みが重なり、6月頃にストレスが溜まってきて、梅雨に入ると同時に気分が滅入ってしまいます。どんどんモチベーションが低下し、ひいては早期離職に至ってしまうのです。
フォローアップ研修で彼らの話を聴いていると、職場の人間関係において、「自分をわかってくれる」「ありのままを受け入れてくれる」ことを望んでいます。しかし、直属の上司が厳しく指導すると、「自分のことを理解してくれない」「叱られることが怖い」「理不尽だ」といった被害妄想に見舞われます。そうならないために、フォローアップ研修では新入社員の上司を招いた懇親会を開くことをおすすめしています。できるだけ上司と交流して理解し合える場をつくることが必要です。
新入社員の不安を解消するためになすべきことは?
私がアパレル企業に勤めていたとき、新入社員に職場での出来事や悩みをノートに書かせ、私がアドバイスを返す「交換日誌」を続けていました。こうした取り組みは、新入社員の不安を解消するためにも3ヶ月くらい続けるといいでしょう。
さらに、小売業のある会社では5~6月頃、新入社員の自宅に家庭訪問をしています。店長や人材開発担当者が家庭を訪問して、本人と家族に仕事内容や経営方針を説明しながら、「仕事や職場の悩みはないか?」といったことを伺っているようです。会社と新入社員との絆づくりが狙いで、誕生日や賞与支給日には一人ひとり直筆の手紙を添える徹底ぶりです。
今の新入社員は心が弱くなっているので、辞めたくならないようにここまで「心のケア」をしっかりしてあげないと定着しなくなってきています。
新入社員が辞めたいと言ってきたときの対応法
退職を相談してくる新入社員のほとんどは、すでに「辞める」という意思決定をしています。しかし、「自分の気持ちを理解してほしい」「退職を止めて欲しい」という気持ちを持っているケースも多いものです。
退職の相談をしてきた時には、上司としてどのように、対応すればよいのでしょうか?
その時は、「辞める気持ちに至った不満をしっかり聴いてあげる」「不安な気持ちを受け止めてあげる」ことが重要です。それらを相手に伝わるように表現するためには、しっかり目を見て相槌をうったり、うなずいたりしてください。そして、話が落ち着いたところで話を要約して、あいまいなところは適宜質問をし、辞める気持ちに至った不満を正確に把握することが大切です。決して話を聴く前から「説教・否定・言い訳をする」「引き止める」ことはしてはいけません。
ちなみにひとつ注意が必要なことがあります。それは新入社員が上司との人間関係で悩んでいる場合です。その時は、給与や仕事内容の不満を理由として話します。それを真に受けて、給与などの会社の待遇や仕事内容の改善を図っても何の問題解決にもなりません。本音を聴き出せる雰囲気をつくることが大切です。
新入社員のキャリアや人生の視点からアドバイス
上司は、上司・会社の立場で退職の問題を解決しようとしてはいけません。あくまでも新入社員のキャリアや人生の視点から一緒になって悩みを聴いてあげることが必要です。
その上で新入社員の気持ちに寄り添ったアドバイスをすることがベストです。気持ちに寄り添ってあげることで、退職を思いとどまることもあります。
PHP研究所では、新入社員の導入研修・教育のほか、フォローアップ研修、受け入れ側の先輩社員(メンター)・上司の教育や社内講師研修もあわせてご提案しています。ぜひご検討ください。
【著者プロフィール】
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)