新入社員がミスをしても、怒ってはいけない!
2016年2月15日更新
新入社員の育成、早期離職の防止には、上司へのアンガーマネジメント研修が効果的です。
新入社員と上司はお互いにストレスを感じている
最近、新入社員の態度や言葉遣いにストレスを感じている上司が増えています。
どのような言動が上司を不愉快にしていると思いますか?
多くの上司が口をそろえて言う不満ベスト3は「指示されたことしかしない」「常識やマナーを知らない」「ミスしても謝らない」です。
一方、新入社員も上司にストレスを感じているようです。彼らの不満ベスト3は、「きちんと仕事を教えてくれない」「すぐに怒るので怖い」「話を聴いてくれない」です。
なぜ多くの職場でこのような問題が頻発しているのでしょうか?
先述のような上司の不満を聴いた際、私が必ずアドバイスしていることがあります。それは「絶対に怒らないでください」「怒鳴ると簡単に辞めてしまうので、感情をコントロールしてください」ということです。そして、「叱る」と「怒る」の違いを具体的にお伝えしています。
叱れない上司が増えている
「叱る」と「怒る」は決定的に違います。「叱る」というのは「相手の成長のための指導」のことで、「怒る」というのは、「その場の感情をぶつけてしまう」ことです。怒るだけだと、新入社員のやる気を削いでしまいます。叱る行為には「成長してほしいという愛情」がなくてはなりません。「感情的にならず、冷静に叱るように」と言われていると思いますが、実際に感情を抑えることはとても難しいと思います。期待しているにもかかわらず、期待を裏切る結果を出せば、どんな上司でも腹が立ちます。そこで大切なのが、噴き出してくる怒りの感情を上手にコントロールして、愛情を持って叱ることです。
職場や仕事に慣れない新入社員がミスやエラーをすることは仕方のないことです。しかし、同じミスを何度も繰り返したり、反省することなく生意気な態度を取ったりする新入社員も少なからずいます。そのような新入社員に厳しく指導したら「落ち込んでしまった」「逆ギレされた」ということがあり、「叱れない上司」も急増しています。さらに、叱ると「パワハラとして訴えられるかもしれない」「叱られたことを理由に退職してしまうかもしれない」と、上司も弱腰になってきています。また、「職場の雰囲気が悪くなるから」「嫌われたくないから」というような上司の逃げ口実もあるでしょう。
新入社員指導は「叱る」と「ほめる」を使い分ける
あなたの職場の新入社員は、叱られた後、落ち込んでいませんか? 入社して間もない新入社員は、叱られることはあっても、ほめられることはありません。上司も新入社員と同様に叱られて成長してきました。新入社員には多くの可能性があり、今後に期待しているから叱るのです。新入社員には、「『叱られ上手』になることは、上司からたくさんのことを教えてもらえ、成長できるチャンス」とポジティブにとらえることを教えてあげてください。
また、叱られた後に、反省して良い結果を出したときには、すかさずほめることも忘れないでください。新入社員の行動や態度をよく観察して、「叱る」と「ほめる」を使い分けることが、新入社員を一人前に育てる接し方と心得てほしいものです。
上司に求められるアンガ―マネジメントとは?
アンガーマネジメントは、1970年代にアメリカで生まれた、怒りの感情をコントロールする(上手に付き合う)ための心理手法です。アンガ-マネジメントは、怒ってはいけないということや、無理に怒りを抑えることではありません。「正しく制御し、エネルギーやモチベーションに変えること」が目的です。
それでは、叱るにあたって、上司はどのようなこと配慮したらいいのでしょうか? まずは怒りの感情をそのままぶつけては絶対にいけません。どんなに腹が立っても、まずは一呼吸おいて感情を落ち着けることが大切です。とても短気なある会社の社長は、「怒るな! まずは深呼吸」という紙を自分のデスクに張り付けて怒りの感情をコントロールしていました。
このアンガーマネジメントの手法を身につければ、新入社員を指導する場面で大いに役に立ちます。上司を対象にしたアンガーマネジメント研修を導入した企業からは、以下のような効果が出ていると聞いています。
・部下との人間関係が良くなった
・イライラを抑えることができるようになったので、周りに感情的になることがなくなり、職場の雰囲気が良くなった
・新入社員の定着率が上がった
・相性が悪かった部下とコミュニケーションが取れるようになった
・部下が報連相をしてくるようになった
・トラブルがあっても冷静に対処できるようになった
このように、上司がアンガーマネジメントを適切に行い、コミュニケーション能力を向上させることによって、職場の人間関係が改善し、生産性が向上し、さらには風通しのよい健全な職場づくりにもつながります。今や多くの企業が取り入れているアンガーマネジメント研修。新入社員を受け入れる職場の上司には、ぜひ実施したいものです。
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)