電話応対の研修では何を教えるべきか
2017年7月31日更新
電話応対の研修では何を教えるべきでしょうか。企業の第一印象・イメージが1本の電話で決まり、それが企業の売上・利益にまで結びつきます。電話応対の重要性を、スキルとともに入社時にしっかり意識づけしておきたいものです。
電話応対時の心構えを教える
電話では相手の姿は見えませんが、笑顔、姿勢や態度は声の感じや話し方に表れて相手に伝わります。目の前にお客様がいると思って、姿勢を正して明るく応対します。
具体的には、受話器を取る前には、「ニコッ」と笑顔をつくります。声のトーンは女性であれば「ドレミファソ......」の音階の「ソ」音で発声すると明るく聞こえます。滑舌をよくするためにも、口の開閉をしっかり行い、口角を上げて話します。これらを習得するためには、見本となる応対例の映像や音声に習って練習してもらうと上達が速くなります。自分の応対も録音して、客観的に聞いてもらった後、指導者からフィードバックをして、トレーニングを重ねてもらうようにしましょう。
お客様との人間関係をよくする電話応対
お客様が名乗られたら、「〇〇様、いつも大変お世話になりまして、ありがとうございます」と、相手の名前を呼んで挨拶をします。また、知っているお客様の場合は、自分宛ての電話でなくても挨拶をして名乗ると、そこからちょっとしたコミュニケーションが図れます。「〇〇様、こんにちは。Aでございます。ご無沙汰しておりますが、お変わりございませんか」などです。お客様との関係を深めるためには、こうした一言を積極的に活用することを教えておきましょう。
お客様の担当者がいる場合は、「〇〇様、いつも私どものBがお世話になりまして、ありがとうございます」と、担当者の代わりにお礼を述べます。定型的なご挨拶ではなく、特別な存在として意識している気持ちが伝わり、日頃の感謝の気持ちが相手に届きやすくなります。
さらに、「〇〇様、昨日はBがご無理を申しまして、申し訳ございませんでした。〇〇様のお陰でよいものができたと、Bも喜んでおりました。どうもありがとうございました」など、既にお礼を申し上げていたとしても、再度お礼を述べることで、相手との人間関係がよくなります。
ほんの少しのことですが、こうした応対の積み重ねが、お客様との人間関係、信頼関係のパイプを太くし、売上・利益につながることに気づかせておきましょう。
指名された人が不在時の気配り電話応対
不在時応対の「お詫び+帰社時間のご連絡」の後、「いかがいたしましょうか」と、お客様の意向をお聞きする応対は、お役立ち精神やお客様第一の姿勢ではありません。
お客様が安心して用件を話せるように、承る人は名前だけでなく、所属部署や立場も伝えます。「〇〇様、私、??課の(Bのアシスタント)のAと申します。私でよろしければ、代わりに承りましてBに申し伝えましょうか」
お客様が直接本人と話したい様子なら、次のように応対します。「すぐにBに連絡します。連絡が取れ次第、直接Bから〇〇様にご連絡をさせていただきましょうか」「すぐに連絡が取れない場合は、私から再度、状況をご連絡いたします」「お差し支えなければ、ご用件をお伺いしてもよろしいでしょうか」と、さりげなく用件をお聞きしておくことも仕事のうちです。
どのような場合でも「お客様の負担を軽くする」という発想が大切です。お客様の心の声や気持ちを察して、こちらから気配りを言葉で表現することを教えておきましょう。
「さすが」と言われるワンランク上の電話応対
指名した人が不在で、お客様が電話をしてほしいとおっしゃった場合は、データベース化した顧客リストで連絡先を調べたうえで、「ご連絡先は、〇〇番でよろしいでしょうか」とこちらから電話番号を確認します。
お客様も出先で、再度ご自身から電話をするとおっしゃった場合は、「お手数をおかけいたしますが、よろしくお願いいたします」と申し上げるだけでは不十分です。「かしこまりました。〇〇様からお電話をいただける旨、Bに申し伝えます」と伝えます。
伝言を受けた場合は、すぐにその内容を本人に連絡します。電話で伝えた後も、伝言メモは本人のデスクに置いておきます。電話を受けた人の仕事は、ここまでと思われがちですが、そうではありません。本人が帰社後、伝言内容の対処について失念がないか、さりげなくフォローをすることまでが電話応対者の責任範囲であることを教えてください。
「電話応対の素晴らしいAさんはどんな人か、一度会ってみたい」とお客様から言われるような応対上手な社員に育てたいものです。できることなら実際の電話応対を録音して、毎日それを確認してもらいましょう。顧客視点に立った応対ができているか、心がこもっているか、客観的に振り返ることで成長を促すことができるものです。
増谷淳子 (ますたに・じゅんこ)
株式会社ソフィアパートナーズ 代表取締役。日本航空(株)の客室乗務員として培ってきたおもてなしの心とコミュニケーション力を活かし、企業の人材教育企画、指導、育成に従事。2006年、株式会社ソフィアパートナーズ設立。「人間力教育」により「使命感」「気配り」「感謝の心」を育み、組織に貢献できる社員に導くことを使命とする。教育に関する問題解決のため、「ひと」のマインド&スキルアッププログラム提案、カスタマイズされた誠実な教育には定評があり、リピート依頼も多数。