メール、Facebook、Twitter......内定者フォローでどう使う?
2018年1月15日更新
内定者フォローのためにメールやSNSを使って、どうコミュニケーションをとればよいのか。事例をもとにご紹介します。
内定辞退防止は採用担当者のキーワード
「内定辞退防止」が、人事の採用担当者でキーワードになっています。内定を与えた学生に、新年度の4月に無事入社してもらうために、ITを使う中小企業が増えています。特にメールやFacebookは盛んに活用されています。そのねらいは、接触頻度を高め、会社を正しく理解してもらうことです。そこで、私が取材した企業の事例を、ツールごとに具体的にご紹介します。
メールで忘年会の様子を伝える
メールでの内定者フォローは、15年以上前から行なわれているようです。
採用担当者は、内定者に、会社の近況などを知らせています。その内容は、たとえば、営業部員を多数集めた会議や社員研修などの様子です。社員が活き活きと活動している様子が伝わってきます。
また、この10年ほどは、メールの内容が変わってきました。大手旅行代理店の子会社(社員数150人)では、「楽しい職場」を感じさせるための工夫がされています。たとえば、忘年会の準備から会の一部始終を写真をまじえて、ドキュメンタリー風に伝えます。
特に楽しめるのが、準備の様子です。5~6名の社員が会議室で打ち合わせをしたり、催しのリハーサルをしたりする様子を写真で見せます。そこには社員の笑顔や感想も盛り込みまれていて、雰囲気が伝わってきます。
「楽しさ」「おもしろさ」を強調するためのポイントは、「プロセス」と「裏側」です。忘年会で言えば、準備から終了までの経過や、事前準備で皆が話し合っている姿などです。
メールマガジン形式でコミュニケーション
社員数200人ほどの教材制作販売会社は、メールマガジン形式で定期的に内定者とコミュニケーションを図っています。会社の様子を伝える内容の下にリンク先のURLを貼り付けます。クリックすると、内定者と採用担当者、一部の社員だけが見られるサイトに飛びます。そのサイトでは、テキストと写真で会社の様子を紹介しています。
私が取材した大手旅行代理店の子会社や教材制作販売会社では、メールに必ず質問を書いています。内定者がそれに答えるためにメールで返信をします。意思疎通を図るきっかけにしているのです。
社員数160人の清掃会社では、メールに毎月1回発行の社内報のPDFデータを添付しています。入社までに、5~6回は送ります。そして、そのメールには、採用担当者が内定者の近況を尋ねる質問があります。これも、接触頻度を高めて内定辞退を防ぐ試みです。
Facebookで現場の様子を伝える
この5年ほどで増えているのが、Facebookを使って内定辞退を防ぐ会社です。
社員数500人ほどの建設会社では、工事の様子を撮影した写真を、1週間から10日ごとにアップしています。写真には、作業員の仕事の様子や、それを監督する役員、管理部の部長などが写っていて、採用担当者のメッセージが添えられています。内定者の数人が、その投稿に感想などをコメントしていました。このFacebookは、内定者と採用担当者、総務・人事部員、一部の管理職しか見ることができないように設定されています。
この建設会社では、内定者に「必ず、コメントするように」「毎日、Facebookを見るように」といった指示はしていません。採用担当者は、「内定者に『この会社で仕事をしたい』と感じ取ってもらうことに力を入れている」と話していました。
Twitterで商品情報や職場の様子を伝える
前述の社員数200人ほどの教材制作販売会社は、内定辞退のためにTwitterも使っています。
内定者は、この会社を選んだことが本当によかったのだろうか、と迷っています。その迷いを断ち切り入社してもらうためには、「安心してもらうための情報を大量に提供すること」だと採用担当者は考えているのです。
たとえば、主力商品である教材の学習会や社員の懇親会、忘年会、新年会、クラブ活動などをつぶやきます。これらは、次年度以降、新卒採用試験にエントリーする学生に向けたものでもあります。「学生に関心をももってもらうためにつぶやくのですが、内定者の迷いを解消するものでもあります」と採用担当者は話していました。
また、教材の学習会について何かつぶやくときには、自社のホームページで紹介している教材のページにリンクさせています。これは、内定者があらためて教材について関心をもち、きちんと理解して「この会社を選んだことは正しかった」と感じてもらうためです。
内定辞退防止のために、どんなメッセージを伝えるのか
どのツールを使うにせよ、大切なことは、内定した会社とのコミュニケーションを「楽しい」「おもしろい」と感じてもらい、入社することへの期待をふくらませてもらうこと。そして、会社について正しい知識を得て、不安を解消してもらうことです。
そして内定者とのコミュニケーションの前に、採用担当者が考えなければならないのは、「なぜ、入社をしてほしいのか」「なぜ、あなたに内定を与えたのか」「会社としてどのようなことを期待しているのか」「ほかの会社と比べてどこがよいのか」ということについて、どういうメッセージを伝えるか、です。これらについて、採用担当者がはっきりとした考えをもっていないと、それは入社内定者にも伝わり、かえって不安を与えてしまいます。内定辞退防止の戦略を講じる前に、ぜひ確認しておきましょう。
吉田典史(よしだ のりふみ)
1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006年以降、フリーランスに。特に人事・労務の観点から企業を取材し、記事や本を書く。人事労務の新聞や雑誌に多数、寄稿。著書に『封印された震災死その「真相」』(世界文化社)、『震災死』『あの日、負け組社員になった...』(ダイヤモンド社)、『悶える職場』『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『会社で落ちこぼれる人の口ぐせ 抜群に出世する人の口ぐせ』(KADOKAWA/中経出版)など。