松下幸之助の組織開発~衆知を集めた全員経営の実践方法
2023年7月10日更新
松下幸之助は松下電器(現パナソニック)の成功要因の一つとして「衆知による全員経営」という考え方を挙げています。そしてそれが実効性を伴うには、経営者自身の姿勢や態度、「打てば響く」組織風土、自主責任経営などが重要であると考えていました。この記事では幸之助がどのように「全員経営」を実践してきたのか、具体的な取り組みについてご紹介します。
松下幸之助の「全員経営」
松下幸之助は、「全員経営」を「衆知による経営」と捉え、それこそが企業の持続的な繁栄の鍵であると考えていました。
これは、単なるトップダウンの経営ではなく、社員全員の知恵を結集し、それを企業の成長に活かす経営です。
たとえば、1955年度の経営方針発表会では、アメリカに匹敵する繁栄を築きつつあるカナダを例に挙げ、同国が民主主義に基づいて衆知を集めて国家を運営していることに言及しました。そして、松下電器の経営も同様に、社員一人ひとりが知恵を出し合い、経営に参画することが必要であると説いています。
当時、家電ブームの到来によって売上が伸びていたにもかかわらず、幸之助は自らの経営に慢心することなく、「衆知による経営」によって自社のさらなる発展を目指し、邁進しました。
提案制度による衆知の結集
松下電器では、1950年に「提案運動委員会」を設置し、社員からの提案を積極的に取り入れる制度を導入しました。
1970年度の経営方針発表会では、年間42万件もの提案が社員から提出されたことが報告されています。さらに、1985年度にはその数が660万件を超え、一人当たり年間約90件もの提案が出されるという驚異的な結果を生み出しました。このように、松下電器では社員全員が経営に関与し、積極的に意見を出せる環境が整えられていました
この提案制度が活発に機能した背景には、松下電器の組織風土が大きく関係しています。松下電器では、経営トップと社員の距離が近く、どのような立場の社員でも自由に意見を述べることができる環境が築かれていました。幸之助自身も、社員の意見を直接聞くことを重要視し、たとえ新入社員であっても適切な提案には耳を傾ける姿勢を持っていました。
ガラス張り経営による自主責任の確立
松下電器の「全員経営」を支えたもう一つの要素が、ガラス張りの経営です。幸之助は、会社の経営状況を社員に広く公開し、経営への関心を高めることで、自主責任経営を推進しました。
幸之助は、個人商店を営んでいた時代からどれだけ会社が大きくなろうとも、売上や利益の状況をすべての従業員に公開していました。これにより、社員は経営の実態を把握し、自分たちの働きが企業全体の業績にどのように貢献しているのかを理解することができました。この透明性のある経営が、社員の意識を高め、積極的に提案や改善活動に関与する動機づけとなったのです。
経営者の姿勢が「全員経営」を支える
「全員経営」を実現するには、経営者の姿勢も重要です。幸之助は、衆知を集めるためには、経営者自身が社員の声に耳を傾ける姿勢を持たなければならないと考えていました。
彼は著書『実践経営哲学』の中で、「経営者が日頃から従業員の声を聞き、自由に意見を言える空気をつくることが大切である」と述べています。
また、衆知を集めるだけでなく、最終的な意思決定を下す主体性も求められます。経営者は、集めた情報をもとに最適な判断を下し、責任を持って経営を進めていく必要があります。幸之助は、このバランスを重視し、「経営者としての主座をしっかり保ちつつ衆知を活かすことが大切である」と語っています。
「全員経営」を支えた人間観
松下幸之助が「全員経営」を重視した背景には、幸之助独自の人間観がありました。幸之助は、自らの学歴の不足を認識しながらも、経営は知識だけではなく実践と経験に基づくものであると考えていました。
そして、「どれだけ優れた人間でも、一人の知恵には限界がある」とし、社員全員の知恵を結集することの重要性を説いています。人間は偉大な存在であるものの、個人の力だけでは繁栄を実現することはできません。だからこそ、互いに協力し合い、知恵を出し合うことで、企業全体としての成長が可能になると考えていました。
また、衆知を活かすことで働く人にも仕事のやりがいや喜びが生まれてきます。会社の業績を向上させることも重要ですが、「全員経営」の根底には社員一人ひとりに生きがいをつかんでほしいという幸之助の思いが込められていたのです。
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