まず経営理念を確立すること~松下幸之助『実践経営哲学』に学ぶ
2021年10月28日更新
パナソニックを一代で築いた松下幸之助も、最初から経営がうまくできたわけではありませんでしたが、正しい経営理念を確立したことによって会社は飛躍的に発展したといいます。この記事では松下幸之助の著書『実践経営哲学』から、経営理念を確立することの重要性について解説します。
経営の根本は経営理念をもつこと
経営の根本は、正しい経営理念――自社の存在意義や経営の目的・使命に関する基本的な考え方――をもつことです。人も技術も資金も、経営理念が根底にあるからこそ生かされるのです。
私は60年にわたって事業経営に携わってきた。そして、その体験を通じて感じるのは経営理念というものの大切さである。いいかえれば"この会社は何のために存在しているのか。この経営をどういう目的で、またどのようなやり方で行なっていくのか"という点について、しっかりとした基本の考え方をもつということである。
事業経営においては、たとえば技術力も大事、販売力も大事、資金力も大事、また人も大事といったように大切なものは個々にはいろいろあるが、いちばん根本になるのは、正しい経営理念である。それが根底にあってこそ、人も技術も資金もはじめて真に生かされてくるし、また一面それらはそうした正しい経営理念のあるところから生まれてきやすいともいえる。
だから経営の健全な発展を生むためには、まずこの経営理念をもつということから始めなくてはならない。
正しい経営理念をもつ
正しい経営理念をもつことで、強固な信念が生まれ、言うべきことを言い、なすべきことをなし、力強い経営ができるようになります。
一つの経営理念というものを明確にもった結果、私自身、それ以前に比べて非常に信念的に強固なものができてきた。そして従業員に対しても、また得意先に対しても、言うべきことを言い、なすべきことをなすという力強い経営ができるようになった。また、従業員も(中略)、いわば使命感に燃えて仕事に取り組むという姿が生まれてきた。一言にしていえば、経営に魂が入ったといってもいいような状態になったわけである。そして、それからは、われながら驚くほど事業は急速に発展したのである。
正しさを見きわめられる見識を養う
経営理念は、"何が正しいか"という人生観、社会観、世界観に立脚していなければなりません。そしてその人生観、社会観、世界観は、社会の理法や自然の摂理にかなったものであるべきです。
経営理念というものは、"何が正しいか"という、一つの人生観、社会観、世界観に深く根ざしたものでなくてはならないだろう。そういうところから生まれてくるものであってこそ、真に正しい経営理念たり得るのである。
だから経営者たる人は、そのようなみずからの人生観、社会観、世界観というものを常日ごろから涵養していくことがきわめて大切だといえる。
さらにいえば、その人生観、社会観、世界観は、真理というか、社会の理法、自然の摂理にかなったものでなくてはならない。もし、それに反するようであれば、これは真に正しい人生観、社会観、世界観とはいえないし、そこから生まれてくる経営理念も適切さを欠くということになってしまう。
結局、ほんとうの経営理念の出発点というものは、そうした社会の理法、自然の摂理というところにあるのである。そこから芽生えてくる経営理念は、その活用の仕方にはその時々の情勢によって多少の変化はあるであろうが、その基本においては永遠不変といっていいと思う。
自社の経営理念は真に正しいか、社員にきちんと浸透しているか、あらためて考えてみましょう。
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