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社会人後半のやりがいあるキャリアをつくるには~イントレプレナー養成のすすめ

2016年7月21日更新

社会人後半のやりがいあるキャリアをつくるには~イントレプレナー養成のすすめ

65歳の定年制への移行とともに、50代以降の、本来もっとも充実すべきベテランが、その能力を発揮できないという状況が、ますます多くなりそうです。社会人後半を充実させるための手立てはあるのでしょうか? 海老一宏氏の解説です。

 

*   *   *

 

前回「雇用延長 社会人後半の人生設計~なかなか言えない不都合な真実」では企業における50代以降のリアルについて、あえて少しシニカルな視点で書かせていただきました。「そんなことはない、うちはベテランの知見を活かしてもらえるよう最大限の努力をしますし、本当に期待していますよ!」と、熱心な経営者の方や人事担当者からのお叱りの声が聞こえてきそうです。

しかし、日々の仕事を通じて切羽詰まった当事者の皆さんに対峙している私から言わせていただければ、ことこの問題に関しては日本的な曖昧さや普段は称賛される真綿にくるむ優しい言い回しは、できるならモラトリアムに逃げ込みたい気分の当事者には何らプラスに働かないと感じています。

 

「定年退職目前セミナー」で教えること

こんなことを言っていると、また違うところからこんな声が聞こえてきそうです。「雇用を守るのが先決、慣れた会社で社員(今は嘱託社員になることが多いようですが)として働き続けられることこそが大事でしょう。もう贅沢言う気もないし、そろそろのんびり仕事しますよ」。

 

現に、役職定年や定年退職目前セミナーと称する企業内研修では、「老後は趣味をもちましょう」「地域社会と積極的にかかわりましょう」「健康に気を使いましょう」という内容がメインになっています。しかし、のんびりしたい……と言っていた方々も、本当にそういう環境に置かれると三日で飽きてしまい、「耐えられない」と音を上げてしまわれます。暇な時間とともに白髪が増え、元気がなくなりどっと老け込まれてしまう場合もあります。

視野を広げれば、本気でベテランを求めている会社も活躍の場もあるのに、本当にもったいないと思います。

もっと本音で建設的な話をしなければ、企業も人も先に進めないのです。

 

先日、某(世界的に知名度の高い)大企業から役職定年予定者(直前の方々)向けのセミナーを依頼されました。セカンドキャリアで活躍し続けるための建設的な情報提供を目指したカリキュラムに、私は「さすがだな、ずいぶん進んだ企業だ」と感心しました。しかし、その打ち合わせで担当者とざっくばらんに話し合った際に出たのは「本当の現実はもっとシビアだしこのタイミング(50代)では本当は遅い」という共通認識でした。

 

イントレプレナー(社内起業家)養成のトレーニングの提案

では、若い頃から必死で仕事に取組み、専門知識や困難を乗り越えてきた経験を生かしてやりがいのある社会人後半のキャリアを作るにはどのような準備(ここではトレーニングと表現しておきます)をしたら良いのでしょうか?

 

前回提案させていただきましたが、企業サイドでぜひ提供してほしいトレーニングメニューは「新規事業セミナー」です。

これはプロジェクト形式でも、セミナー形式でも、組織化して正式任務にする形でも構いませんが、いきなり業務として「何か新しい事業を考えろ」と言われるのはハードルが高いかも知れませんので、まずはイントレプレナー(社内起業家)養成のトレーニングを受けてもらうのです。

ベテランの方にとっては、ばらばらだった知識の隙間を埋め、ゼロから1を生むために全方位で事業判断する基礎を身につけるプロセスになります。

 

新規事業は、会社経営と同じような側面があります。そこには想定外の困難が(大きなやりがいとともに)存在します。

どのようなビジョンで何をやるかのアイデアをもとに市場を分析し、攻める分野と手法を決めます。リスクマネーと資金調達方法、できれば創業期の顧客や人材の手配、もちろんリーダーは、起業時には管理・企画・営業・資金調達・顧客対応……すべてに携わらねばなりません。

 

事実、(自分の経験も含めて)会社員から起業された社長さんは、「わかったような気になっていても、いかに経営の一部分しか見ていなかったかを思い知った」と口を揃えておっしゃいます。

 

自分の人生は自分で判断し掴み取る

これは「肩たたき」「再就職あっせん」といった、一時代前に問題になった後ろ向きで排斥的なアクションとは一線を画します。起業するにせよ、転職するにせよ、今の会社に残るにせよ、自分の人生は自分で判断し掴み取るファイティングスピリッツを持っていただくためのトレーニングです。

 

当事者のプライドも傷つけず、しかし、これが本当の厳しさかも知れませんが、決して甘い内容ではない(大企業病に侵され勘違いしているベテランにとっては厳しい自己改革を迫られる内容になる)のですから、結果的に、会社から見ても大いに意味のある社員教育機会になることは間違いありません。

 

さて、これまで社会人後半を充実させるための「中盤」からの準備について書いてきましたが、実はこのトレーニングを成立させるのに「さらにその前=社会人前半の人事制度」における絶対外せない重要なポイントがあります。

ある意味、俯瞰的に見た人材育成という面では最重要なことですが、これについては、また別な機会で述べたいと思っています。

 

 

 

 

「大転職時代の人材論」一覧はこちら

 

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【著者プロフィール】
海老一宏 (えび・かずひろ)
人材紹介コンサルタント。キャリアカウンセラー。アクティベイト株式会社代表取締役社長。
1957年、宮城県仙台市生まれ。中央大学卒業後、東証一部上場企業 品川白煉瓦株式会社(現、品川リフラクトリーズ)に入社。人事、経理、営業に携わる。1992年に起業し、レンタルビデオ・CDショップを開業。1店舗からのスタートで、FC本部の経営まで事業を拡大。2000年に人材紹介会社に入社し、トップエージェントとして活躍。2005年に独立し現職に。財団法人みやぎ産業振興機構のビジネスプロデューサーも務める。エージェント歴は15年。面談者は6000名以上。エン転職コンサルタントで6年連続利用者評価NO.1(当社調べ)。
著書に『40歳からのサバイバル転職成功術』(ワニブックスプラス)、『一流と言われる3%のビジネスマンがやっている誰でもできる50のこと』(明日香出版社)。

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