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ポピュレーション・アプローチ~ストレスチェックによるセルフケアの促進

2016年7月25日更新

ポピュレーション・アプローチ~ストレスチェックによるセルフケアの促進

ストレスチェック制度と総合的なメンタルヘルス施策を連携させるためには、全従業員に働きかけるポピュレーション・アプローチが重要です。小西喜朗氏の解説です。

実態と乖離しやすい高ストレス者対応

ストレスチェックを実施した結果、面接指導の申出は全体の0.5%にも満たず、その後の職場環境の改善にも活用されないケースが多くの組織で発生しています。

これでは何のためのストレスチェックなのか分からない、手間ひまと費用をかけたけれど......、そんな声が聞こえてきます。

一方で、「仕事や職業生活に関する強い不安や悩み、ストレス」を感じる人はここ何年も約6割(厚生労働省)という現実があり、健康管理室で把握している調子を崩している従業員が2?3%に及び、80時間以上の過剰労働者も3%程度といったケースが多いでしょう。しかし、予防として実施しているストレスチェックでの反応が0.5%しかなければ、何の効果があるのかという疑問が出てきます。そして、逆にどのようにすればストレスチェックを活用できるのか、という疑問も出ます。

ワークスタイルを見直すためのストレスチェック

まず、「テストや検査」と聞けば、多くの人たちは「合否判定をするもの」だと考えるでしょう。しかし、ストレスチェックはそうではありません。年に1回の受検ではありますが、受験勉強でいえば学習確認テストのようなものです。定期的に試験を受けることで、自身の得意なところや苦手なところなど、日常の学習状況を確認するためのテストなのです。そして、テストの結果から勉強の仕方を見直すわけです。

つまり、日頃のライフスタイルや勤務状況を自身で確認することがストレスチェックの目的となります。自分の場合は仕事の量が多すぎるかもしれない、あるいは周囲との人間関係を改善していくことが大切だ、上司にもっと相談したほうがいいのかもしれないといった課題を認識するためのテストです。

そして、こうしたテスト結果をもとに、ワークスタイルを改善していくことは、誰にとっても大切なことです。

求められるポピュレーション・アプローチ

疾病予防では「ハイリスク・アプローチ」に加え、「ポピュレーション・アプローチ」が重要だと言われています。生活習慣病の予防の場合も、健康診断の結果に課題があり、ライフスタイルが乱れているハイリスク層に健康指導を行うことで、効率的に予防をしようとします。その一方、健康的な食事や運動など、生活習慣について広くプロモーションすることで、全体としての発症率を低下させるのがポピュレーション・アプローチです。

ストレスチェック制度では高ストレス者への面接指導がハイリスク・アプローチです。もう一方のポピュレーション・アプローチは、ストレスチェックをきっかけに、全従業員に向けて、ストレスへの気づきと対処法について教育する機会を提供することになります。

いくらテストを受けても、その結果に基づく学習をしなければ、成果はまったくあがりません。ストレスチェックをセルフケアの促進機会として捉えることがとても重要になります。

ストレスチェックは健康教育のツールである

そのためには、まずはテストの意味を従業員が理解していることです。そして、結果の活用方法を伝えることが必要です。

安全配慮義務の観点から、職場のストレスが過剰にならないように配慮する必要があります。この点は各職場の集団分析の結果をもとに、産業保険スタッフや管理職が取り組む必要があるでしょう。

その一方、従業員には自らの健康づくりに努力する自己保健義務があり、この健康増進についての教育責任は事業者にあります。

事業者には安全配慮義務とセルフケアに関する教育が求められ、こうした健康づくりについての環境整備のもと、従業員にしっかりと自己保健義務を伝えていくことがストレスチェック制度のなかで重要となるでしょう。このことがストレスチェック制度と総合的なメンタルヘルス施策を連携させるポイントです。

小西喜朗 (こにし・よしろう)
ウェルリンク株式会社顧問、産業カウンセラー、教育カウンセラー。
1984年、京都大学卒業後、編集者、ジャーナリスト等を経て、2000年にウェルリンク株式会社設立に参画。累計130万人以上が利用する「総合ストレスチェックSelf」を開発する他、メンタルヘルス研修およびコンサルティングを行う。メンタル法律問題研究会理事、日本マインドフルネス学会理事等を歴任し、職場のメンタルヘルスケアをリードする。
共著に『自分で治すがん』(朝日新聞社)、『リラクセーションビジネス』(中央経済社)、「メンタルヘルス・マネジメント」(PHP研究所)、『ポジティブ心理学再考』(ナカニシヤ出版)など。

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