女性管理職の課題――やりづらい?やりたくない? 強みを生かしたマネジメント術とは
2016年7月22日更新
女性の活躍推進が叫ばれるなか、女性の管理職の割合も徐々にではありますが上がってきています。女性管理職の課題と、その強みを生かしたマネジメント術を、アドラー心理学に学びます。
女性の活躍推進のむずかしさ
アベノミクスでは経済成長戦略が取り上げられがちですが、「人材の活躍強化」も重要テーマのひとつ。その中でも「国・地方公共団体や従業員が300人を超える民間事業主に対し、女性管理職の割合などの数値目標を設定し、女性の活躍に向けた取組を盛り込んだ行動計画を公表するよう義務づけるなど、女性の活躍推進に向けた取組を強化します!」(首相官邸webサイトより)と鼻息が荒かったのはご存じの方も多いでしょう。
ところが、当初は2020年までに公務員の管理職に占める女性の割合を30%に増やすと意気込んでいたはずなのに、昨年12月、その目標は7%へと大幅に下方修正されました。とてもひっそりと。民間企業の指導的地位に占める女性の割合の目標値についても、15%へと引き下げられています。なんだか「トホホ」と言いたくなるような政策転換ですが、それですら、達成には困難があるとみられています。ちなみに2015年12月現在で国家公務員の管理職に占める女性の割合はわずか3.5%。ここまで来るのでさえ、10年の月日を必要としました。
女性管理職の悩み
さて、現実問題として、皆さんの職場での女性管理職の割合はどのくらいでしょうか。そして女性管理職の皆さんは、いきいきと働いていらっしゃいますか?
「部下や後輩をもつようになったけれど、男性の多い職場のなかで組織としての力をフルに発揮しきれていない」「管理・監督職とはいえ、家に帰れば家事をし、子どもの世話もしなくてはならない。その切り替えがとても難しく感じる」。そんな声は聞こえていないでしょうか。
男女雇用機会均等法実施から四半世紀、大幅改正のあった1999年からも17年経つ現在、当時と比べたら当然女性管理職は増えていますが、同時に責任が増すことに心の負担を感じている女性社員も少なくありません。全国いろいろな地域で研修をさせていただいていますが、都市部よりも地方での女性の悲鳴を耳にすることが多いと感じます。いわく、「夫は理解してくれているけれど、お姑さんや実母から『母の役目は? 嫁の役目は?』というプレッシャーがかかる」「家や地域の行事などを『仕事があるから』と断るときに、何とも言えない圧力を感じてしまう」などなど。
また、気負うあまりに部下に対して高圧的に接してしまいがちな方もいれば、言いたいことや仕事の適切な指示を部下に出せずに、黙って仕事を背負い込んでしまう方なども女性管理職には見受けられがちです。「女だからといってナメられたくない!」「年上男性部下がどうにも扱いにくい……」というのもよく聞く声。
目標やノウハウのない単なる叱咤激励やかけ声では、部下の心を開くどころか、職場が疑心暗鬼になり、部下の離反すら招きかねません。また、仕事を無制限に背負い込んでしまっては、心と体が疲弊してしまい、メンタル不調を起こし、さらには休職に追い込まれかねません。実はこれ、筆者が過去にやらかしてしまった失敗の数々そのものです。
そうは言っても管理職に登用された女性は、それなりの経験を積み、昇任試験に合格するなど実績のある人たちのはず。優秀な彼女たちのやる気や能力を最大限に引き出し、責任ある仕事をまっとうしてもらうことが痛切に求められているにもかかわらず、何かのブレーキがかかっていませんか。
女性管理職の望ましい注意の仕方(叱り方)
上記にあげたように、女性が管理職として働く際に特有な悩みはさまざまありますが、とくに具体的に苦手とされているのが、「注意の仕方」ではないでしょうか。注意をしたり叱ったりというのは、やり方を一つ間違えると見事に反発されてしまうものです。以下に女性がとくに心しておきたい注意の仕方(叱り方)の望ましいスタイルをあげます。
【大前提として】
感情的にならない
いきなり叱るのではなく言い分を聞く
100点満点を求めない(不完全を認める)
部下・後輩を子ども扱いしない
結果だけでなく、プロセスを確認する
「本人に」自己評価をさせる
【男性部下に対して】
余計なことを言わず、その時発生した事案にのみ注意を
他人と比べない
大声でヒステリックに叱らない(冷静に)
ネガティブなことを言わない(建設的に)
期待をかける言葉を添える(「あなたなら」)
年上男性部下の場合、相談・提案の形でも
【女性部下に対して】
叱られ慣れていない女性が大半であることを心得る
大勢の前で叱らない
理詰めで責めない
頭ごなしに否定も賛同もせず共感し、正す
「フォローする姿勢」を前面に出す
「みんな仲良く」を求めない
男性だから、女性だからとステレオタイプでくくることはもちろんできませんが、女性ならではの強み、というものがあるのなら最大限発揮したい・させたいものです。その強みとは何か。それは“共感力”“受容力”“サポート力”ではないでしょうか。硬軟取り混ぜて、というのであれば、「軟」の強みであり、折れないしなやかさ。
違いはあるけれど、補い合うことができ、対等である。それが男女ではないかと思います。よりよい、強いチームをつくるために今こそ必要なのが、このような女性の強みを生かした組織づくりではないでしょうか。
永藤かおる(ながとう・かおる)
(有)ヒューマン・ギルド研修部長。心理カウンセラー。1989年、三菱電機(株)入社。その後ビジネス誌編集、海外での日本語教育機関、Web 制作会社など、20年以上のビジネス経験のなかで、人事・採用・教育・労務管理等に携わる。どの現場においてもコミュニケーション能力向上およびメンタルヘルスケアの重要性を痛感し、勤務と並行して学んだアドラー心理学を生かして現在㈲ヒューマン・ギルドにてカウンセリング業務および企業研修を担当。著書に『「うつ」な気持ちをときほぐす 勇気づけの口ぐせ』(明日香出版社)、PHP通信ゼミナール『リーダーのための心理学 入門コース』(監修:岩井俊憲、執筆:岩井俊憲・宮本秀明・永藤かおる、PHP研究所)などがある。