こんなときどうする?研修講師~困ったときのQ&A
2016年7月29日更新
研修講師はあらかじめ想定されるトラブルを列記しておくことで、心の準備ができます。起こりうるトラブルをご紹介します。
Q 研修の受講を拒否された
教育は、社員にとって権利であり、義務でもあると言える。消火対策と防火対策を。
消火:業務命令違反として、厳粛に対応
防火:規程、ルールの整備と運用
Q 参加人数が少なすぎるとき、多すぎるとき
基本的に、参加者個々人には、全体の人数と自身の学習は関係ない。少なければアットホームな雰囲気になる。多ければ、全体の盛り上がりを活用できる。それぞれのメリットを最大限に活かすこと。一方、デメリットのカバーにも配慮する(少ないときは例を活用して経験を補う、多いときはペアワークを活用して個に対応するなど)。
Q 反抗的な受講者への対応
反抗するにも訳がある。一喝しても何らメリットなし。意識的に視線を向けることから始めたり、比較的答えやすい質問を投げかける。その中から態度の理由がつかめる場合もある。なすべきことと失うもの、コントロールできることと、できないことを区別する。
Q 私語をする参加者
全員の中で注意すると萎縮される。私語をしている人のほうを向いて、質問を促す。
Q 居眠りする参加者
講師の責任も自覚する。全体の雰囲気を読んで、早めに対処することも大切。内容が難しすぎないかを確認し、参加型のインストラクションや、軽い体操、休憩を活用する。眠ってしまっている人には、その前後左右の受講者に簡単な質問をして、刺激を与える。寝ている人を露骨に注意することは、雰囲気を悪くすることがあるので要注意。参加者にガムを配付する講師もいるなど、講師はみな工夫している。
Q 時間が足りないとき
時間が余ることを恐れず、レッスンプランはゆとりをもって組んでおく。また、項目ごとに時間管理を行うようにしておく。最後には、大胆に話す内容を省略する(レジメに載せていない項目は、それが分からない)。
Q 時間が余りそうなとき
各項目のまとめの討議をうまく活用する。
Q 難しい質問に対して
疑問の質問にせよ、意見の質問にせよ、参加者の理解を深めるためになる質問は大切。質問への回答は基本的に、参加者全体に対して行うものである。しかし、対応が困難な場合は、つい質問者だけに対応しがちになるので注意すること。
・真意が不明な質問→よく問い直して、真意を明らかにしてから回答する
・調べる必要がある質問→即答できないことを伝え、後で調べて回答すると伝えるか、調べ方を伝える
・考える必要がある質問→参加者の意見を聴くのもひとつの手
・専門外の質問→専門外であると伝えて回答を断るか、専門外であると断ってから回答
・個人的な相談での質問→簡単に答えられそうにない場合は、別に機会を設ける
・批判的な質問→いったん受け止める、他の参加者の意見を取り入れるのもひとつの方法
※出典:『[実践]社員教育推進マニュアル』(2009年1月・PHP研究所発行)
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。 著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)
松下直子(まつした・なおこ)
株式会社オフィスあん 代表取締役。社会保険労務士、人事コンサルタント。 神戸大学卒業後、江崎グリコ(株)に入社。新規開拓の営業職、報道担当の広報職、人事労務職を歴任。現在は、社会保険労務士、人事コンサルタントとして顧問先の指導にあたる一方、民間企業や自治体からの研修・セミナー依頼に応え、全国各地を愛車のバイクで巡回する。「人事屋」であることを生涯のライフワークと決意し、経営者や人事担当者の支援に意欲的に向き合うかたわら、人事部門の交流の場「庵(いおり)」の定期開催や、新人社会保険労務士の独立を支援するシェアオフィス「AZ合同事務所」の経営など、幅広く人材育成に携わっている。著書に、『実践社員教育推進マニュアル』『人事・総務マネジメント法律必携』(ともにPHP研究所) 、『採用・面接で[採ってはいけない人]の見きわめ方』『部下育成にもっと自信がつく本』(ともに同文舘出版)ほか。