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実行力を高めるマネジメントとは?

2022年5月 6日更新

実行力を高めるマネジメントとは?

企業間の競争力の格差は、実行力の格差に起因します。本稿では、実行力を高めるために現場のマネジャーがどのような行動をとるべきか、考察いたします。

INDEX

実行力とは? 実行力の定義と経営との関係

実行力とは「理念戦略に基づいてやり抜く力」と定義することができるでしょう。
『キリンビール高知支店の奇跡』(講談社α新書)の著者である田村潤氏(元キリンビール代表取締役副社長)によると、経営活動には次の3つの構成要素があると言います。

 経営を構成する3つの要素

(1)理念
何のために我々は存在するのか、誰に対してどのような価値を提供するのか。
事業(組織)の存在意義を示したもの。

(2)戦略
我々はどこで、どのようにしていつまでに何をしていくのか。
理念を具現化するための戦い方、行動計画を示したもの

(3)実行
  理念から導き出された戦略を実行すること

 

これら3つの要素は相互に影響を与えながら経営を下支えしているので、どれか一つでも欠けてしまうと活動が停滞してしまいます。
成果を上げるためには、[理念-戦略-実行]のループを回し続け、スパイラルアップ(継続的な向上)していくことが重要であると、田村氏は説きます。

「実行」の重要性が高まっている!

前述のとおり、3つの要素(理念、戦略、実行)はいずれも経営を行ううえで必要不可欠な存在ですが、昨今、特に重要度が増しているのが「実行」です。企業間の競争力の格差は、各組織における「実行」の度合いで決まります。立派な経営理念が掲げられ、すぐれた戦略が立案されても、それらが実行されなければ成果は出ないのです。

戦略のコモディティ化

「理念」や「戦略」は、文字やことばで表現される形式知なので、競争相手にも認知されやすい側面があります。成功した戦略は、競合相手に模倣されます。業界内のどの企業でも同じ取り組みがなされ、差別化ができにくくなります。この状態を「戦略のコモディティ化」と言います。
それに対して、「実行」と、それを下支えする個人の「思い」やメンバー間の「関係性」は、暗黙知に覆われている部分が大きいのが特徴です。したがって、「なぜあの組織は実行力がすぐれているのか」について、競合相手には理解ができないのです。
つまり、模倣されにくい「実行」力を高めることが、競争上の優位性を築くうえでとても重要な課題になるのです。

実行力の高い企業(事例)――レクサス星が丘

高い実行力が、企業の競争力の源泉になっている事例として「レクサス星が丘」をご紹介します。
名古屋市内でレクサス車の販売・整備を行う同店は、長年「日本一」と言われ続けてきました。日本全国にはレクサスの看板を掲げるディーラーが約160店あります。当然、販売実績やCSランキングなどの指標で、1位から160位までの序列があるのですが、星が丘店は総合的な観点から「日本一」と評価されています。

ここで考えておきたいのが、なぜ、レクサス店の間で格差が生まれるのかということです。経営を構成する3つの要素である「理念」はどの店舗も同じはずです。また「戦略」は、地域によって多少の違いはあっても根本的な考え方(富裕層をターゲットにする)に差はないはずです。「理念」「戦略」に差はないけれど、「実行」の差が、レクサス店の序列を生み出しているのです。

実行力を高めるために

では、実行力を高めるには、どうすればいいのでしょうか。
引き続き、レクサス星が丘を引き合いに出しますが、同店では、マネジメント層とスタッフ間、およびスタッフ同士の関係性を維持向上することに、かなりのエネルギーを投入しています。まさに「成功循環モデル(※1)」が説明しているように、[関係の質⇒思考の質⇒行動の質⇒成果の質]というプロセスを辿って、高業績を生み出しているのです。この事例から読み解けるのは、実行力を高めるためには、メンバー間の関係の質を上げることから始めるべきであるということでしょう。

ただし、関係の質を上げるといってもなれ合いの関係をつくることではありません。レクサス星が丘では、家族主義的な雰囲気でお互いを尊重しつつ、一方で同じミスを繰り返すスタッフには相応の処遇がされるなど、やさしさと厳しさの絶妙なバランスが担保されていました。
愛情と信頼を基軸にしながらも、成果を追求することに関しては妥協を許さない厳しさ、この両者の存在が個と組織の実行力を高めていくでしょう。

※1 マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授の主張する理論

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的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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