セクハラ・パワハラ部長「そんなつもりはなかった」と言う前に、教育すべきこととは?
2017年5月11日更新
あなたの職場に、セクハラ・パワハラで嫌われている部長はいませんか? 起きてしまったことへの対処も必要ですが、発生しないよう教育することが重要です。
あなたの職場にセクハラ部長はいませんか?
数多くの職場で問題になっているセクシュアルハラスメント(セクハラ)。最近は「身体を触る」「性的関係を強要する」といった直接的なセクハラ行為はかなり少なくなってきました。しかし、上司の立場を利用することから泣き寝入りする女性も多いのです。
なかでも多いのが飲み会でのセクハラ。お酒が入ると、少しくらいハメを外してもいいだろうと油断したり、気が緩んだりしてしまいがちです。上司の横に座ることを強要したり、帰りのタクシーに一緒に乗り込んだり、帰り道で送っていくことは、セクハラと言われても仕方がありません。
また、「結婚はまだなの?」「子どもはいつつくる予定なの?」といった言葉も、相手が不快に思えばセクハラになります。
あなたの職場にパワハラ部長はいませんか?
あなたは上司からパワーハラスメント(パワハラ)の被害にあったことはありますか? 理不尽なことで怒鳴られたり、達成不可能なノルマを押し付けられたり、時には殴られたり……上司のパワハラに悩んでいる人は年々増えています。
「ホントお前は役に立たないな!」「転職したほうがいいんじゃない?」「君の親はどんな育て方をしてきたのか疑うよ」「口で言ってわからないなら体罰を与えるのは当たり前だろ!」といった人格否定の発言や暴力はこれに当たります。上司の立場では叱咤激励しているつもりでしょうが、部下はそうは受け取りません。本当に上司に愛情があれば、部下もパワハラだと感じないものです。
私が入社した会社でも、このようなパワハラは日常茶飯事でした。営業会議で灰皿が飛んできたり、上司から平手打ちをされたり、蹴られることもありました。昔はこのような体罰もパワハラにはならなかったのですが、今では時代錯誤としか言いようがありません。
知らず知らずにハラスメントの加害者になっている?
上司はわざとセクハラ・パワハラをやっているのでしょうか。多くの場合、本人にはハラスメント行為をしたという自覚がありません。「そんなことはしていない」とか「そんなつもりはなかった」と無実を主張することがほとんどです。
セクハラ・パワハラ研修では、上司の立場の人から「どこからがセクハラですか?」「どんな行為がパワハラですか?」という質問をよく受けます。しかし、こういう発想が最も危険です。本質がわかっていません。セクハラ・パワハラは、相手が「セクハラされた!」「これはパワハラだ!」と思った時点でアウトなのです。ハラスメント行為にあたるのか、そうでないかを決めるのは、自分ではなく相手であることを、上司の方はしっかり認識する必要があります。
セクハラ・パワハラが起こらない環境づくり
人材開発担当者としては、「自分がハラスメント行為をしているつもりはなくても、相手が嫌がればこれに当たる」ということをしっかり研修で教育する必要があります。
知識だけを教えるのではなく、過去の判例や実際の事例を解説して、その対策を受講者同士で考えさせる研修が有効です。最近では、わかりやすく解説したDVDやWEB動画も整備されているため、それらを活用するのもよいでしょう。
さらに大切なことは、日頃の関係性です。コミュニケーションがうまくいっていれば、相手が何を不快に感じるか、何を言われたら嫌かを理解できるため、上記のような問題が起こることはありません。また、たとえパワハラやセクハラ的な行為があっても大きな問題になることはありません。そのため、コミュニケーション研修や社員同士が仲良くなるようなイベントを企画するのもよいでしょう。
また、近年は、お悩み相談室をつくる企業も増えてきました。人材開発部門が悩みを聞く、もしくは窓口となって、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントなど、お悩み相談のプロと契約をして、セクハラ・パワハラが起こらない環境、または起こりそうな状態を早く察知する仕組みを整備することも必要です。
人材開発部門としてなすべきことは?
最近、セクハラやパワハラの研修の副作用も出てきています。たとえば、パワハラが怖くて叱れない上司、セクハラが怖くて女性社員とコミュニケーションをとれない上司が増えてきました。この傾向は、適切な部下指導や組織の健全なコミュニケーションを阻害しています。
このような事態を招かないためには、根本的原因に立ち返って考えなければなりません。そもそもセクハラやパワハラはなぜ起こるのか? その原因は、上司と部下の信頼関係の欠如にあります。
パワハラ・セクハラがある職場は、「上司と部下のコミュニケーションが少ない職場」と言われています。信頼関係がなければ、部下は上司の言動を、嫌がらせやいじめと受け取りやすくなります。
信頼関係を築くためには、報連相やアサーション、チームビルディング、アンガーマネジメントなどのコミュニケーション研修を実施して、日頃のコミュニケーションをよくすることが必要です。
茅切伸明(かやきり・のぶあき)
株式会社ヒューマンプロデュース・ジャパン 代表取締役。
慶應義塾大学商学部卒業後、(株)三貴入社。 その後、(株)日本エル・シー・エー入社。 平成1年3月 住友銀行グループ 住友ビジネスコンサルテイング(株)(現SMBC コンサルティング(株))入社。セミナー事業部にて、ビジネスセミナーを年間200 以上、企業内研修を50以上担当し、他社のセミナーを年間50以上受講する。 平成18年4月 (株)ヒューマンプロデュース・ジャパンを設立。「本物の教育」「本物の講師」「本物の教育担当者」をプロデュースするという理念を掲げ、現在まで年間500以上、累計8,000以上のセミナー・研修をプロデュースするとともに、セミナー会社・研修会社のコンサルティング、セミナー事業の立ち上げ、企業の教育体系の構築なども手掛ける。
著書に、『実践社員教育推進マニュアル』、通信教育『メンタリングで共に成長する新入社員指導・支援の実践コース』(以上、PHP研究所)、『だれでも一流講師になれる71のルール』(税務経理協会)