経営者意識のある課長を育てていますか?
2017年7月13日更新
経営者意識のある課長。自ら周囲に本気で仕事をしていることを背中で語れる課長。御社ではそんな課長を育てていますか?
課長は経営者意識を持たなければならない
当然、仕事をしている本人というのは本気でやっています。もともと適当に不真面目でいい、などという社員はいないものと信じたいです。
が、課長となってきますと、周囲から見られていることは忘れてはなりません。これは、上の役職者と部下との間で悩みも増える「サンドイッチ症候群」と呼ばれた時代から変わらないことです。
下からは「課長のあのやり方でいいのかな?」と仕事の進め方を見られる。あるいは、もっと上からは、「あいつこのごろ手を抜いているのではないか?」などという仕事への取り組み方を見られることもあります。
はたして、その眼に耐えうるだけの力が御社の課長には備わっているでしょうか。
また、下からあがってきた要望と、上からの指示が相反していた時に、双方が満足・納得いくような人間関係の調整ができているでしょうか?
人間関係を改善しようとアレコレとスキルを学んだり、調整に頭を使う前にするべきことがあります。これは、課長に限りません。
どんなビジネスパーソンにも共通していること。それは「本気度」を上げることです。
わかりやすく言いますと、まずは経営者意識を持つことです。課長にその意識を植え付けたり、持たせることを御社では考えているでしょうか?
事例にみる「経営者意識」の有無
私が実際に体験しました、身近な例をひとつ。二週間ほど前のことです。所用が早くすんだので、美味しいコーヒーでも飲みながら仕事をしようとコーヒーの専門店に入りました。ちょうど午前の早い時間でしたので、店内は客もまばらで、仕事もはかどるなと思いました。荷物もあったので、テーブル席に座ると、バイトらしき若い店員さんが「カウンターにお願いします」というのです。一人の客はカウンターと指示されているのでしょう。
「荷物もあるし、仕事の資料もあるからテーブルでいいかな? 20分くらいだから」というと、何と「だめです」というのです。客のコーヒー代が自分のバイト代になることもわからず、状況を見て「混んできましたら移動してもらってもいいですか?」と一言言えば済む話です。
店長がたまたま席を外していたようですが、このやり取りをみたらどうしたでしょうか?
店を経営していたら、経営者の意識がある筈です。「だめです」と言って客を追い帰してどうするのでしょうか。
私は店名を明かさず、少し悪い事例で書くくらいですが、経営者意識が全くないと、客には帰られ売上をなくし、しかもクレームの種をまくことにもなるのです。
これは、コーヒー店のみならず、社内の課長他、全てに通じることでしょう。
「自分が経営者ならどうするか?」という視点で考えれば、それほど見当はずれなことにはなりません。それは課長の本気度を高めるためにとても役立つことなのです。
課長は、背中を見られている意識を常に持つ!
課長だからといって、肩書だけでは仕事ができないのは言うまでもありません。もちろん、肩書で信用度が対外的に上がることはあるでしょう。しかし、それだけでは不十分です。
一番の土台は、繰り返していますように本気になって仕事の取り組むことです。
そのことで、あなたの周囲は「課長は真剣に仕事とむきあっている」と感じるのです。
大切なのは百の説教より、自分の本気で仕事に取り組む姿勢、いわば後姿を部下に、周囲の人間に見せることです。
そういう意識を、貴社では課長に持たせているでしょうか?
あえていいますと、仕事のスキルはとても重要です。この能力なくしては成果が出ないでしょう。ただし、その大前提として、本気を出して仕事に取り組むのです。
本気度を高める「二割増しの仕事ノルマ」
私はもう30年にわたって人材育成に携わっています。そこから、多くの方はまだまだ本気を出してはいないと感じます。簡単にできるのは、今よりも二割増しの仕事上のノルマを設定してしまうことです。たとえば課長として同行セールスを月に五回していたなら二割増しの六回。自分でプレイングマネージャーとして訪問件数が週に十件なら十二件にしてみる。
そう二割増しというのは決して無理な数字ではないのがわかるでしょう。数値化できなくても、たとえば納期が来週いっぱいだったら、週の前半にしてしまうように、今よりスピードをあげていくようにしますと、結果としては本気にならざるを得ません。もちろん時短の世界になっていますから、同じ時間内で仕事量を増やしたり、成果を上げることになります。このことで、嫌でも本気にならざるを得ないのです。
経営者意識のある課長。自ら周囲に本気で仕事をしていることを背中で語れる課長。
御社ではそんな課長ばかりですか?
松本幸夫(まつもと・ゆきお)
人材育成コンサルタント。1958年、東京生まれ。「最短でできる人をつくるプロ」として、最前線を走り続けている。マスコミや流通、通信、製薬、保険、電気、金融、食品といった業界で指導を行い、営業をはじめとするあらゆる職種のプロを育成することに定評がある。年間220回の研修、講演活動を行い、そのリピート率は92%を超える。NHKなどのテレビ出演も精力的にこなす。主な著書に『とにかく短時間で仕事をする!コツ』(スバル舎)、『仕事が10倍速くなるすごい!法』『人を動かす質問力&聞く力』(三笠書房)、『アガリ症を7日間で克服する本』(PHP文庫)などベストセラー多数。「呼吸法で人生が変わる」がモットー。