仕事での成長を阻む5つの要因とは?~若手社員へのメッセージ
2021年6月 8日更新
人材開発の世界では、「人は生涯成長し続けることができる」という考え方が主流でした。でも現実は、ある時点で成長が止まる人のほうが多いのではないでしょうか。
そこで本稿では、何が成長を阻害するのか、その要因を明らかにすることで、逆説的に「大人が成長するための条件」を考えてみたいと思います。
成長とは
経済成長、事業の成長戦略、子どもの成長、等々、日常生活で「成長」ということばはよく使われます。でも、そのことばの意味は使われる状況、文脈によって微妙に異なります。
広辞苑によれば、「成長」は「育って大きくなること」「育って成熟すること」と定義づけられています。この定義を見てわかるように、「成長」には、量的な側面と質的な側面の二つのとらえ方があるのです。大人の成長は、もちろん質的な成長のことを意味します。
成人発達理論の主張と現実
大人の成長に関する研究領域に「成人発達理論」という考え方があります。この理論が主張しているのは、簡単に言えば「人は成人した後も発達し続けることができる」ということです。つまり、人は生涯、質的な成長を続けることができるのです。
でも、すべての大人が成長し続けているでしょうか。成功体験を数多くもっている人や、地位や年齢が上の人の中には、保守的で、自分で自分の成長にブレーキをかけている人もいます。人は本来、死ぬまで成長し続けることができるにもかかわらず、それを阻害する要因によって退行することも多いのです。
成長し続ける人と止まってしまう人の違い
既に述べたように、成長の度合いには個人差があります。世の中には、「いくつになっても成長し続ける人」と「ある時点で成長が止まってしまう人」の2種類の人材がいます。筆者は長年、企業研修の現場で多くのビジネスパーソンを見てきましたが、現場の肌感覚からすると後者のタイプの人のほうが多いという印象をもっています。
ではなぜ、成長が止まってしまう人が多いのでしょうか。人の成長を阻害する要因として以下の5つが考えられます。
大人の成長を阻む5つの要因
(1)目的・目標があいまい
人生や仕事における目的や目標があいまいだと、前向きなエネルギーが内側から湧いてきません。現代人は、日々やるべきことが多くて忙しい毎日を送っていますが、「仕事を通じて何を得たいのか」「人生をかけて何を成し遂げたいのか」考えている人は少ないではないでしょうか
(2)過去のやり方にしがみつく
過去の成功体験は貴重な財産です。でも、世の中は絶えず変化するので、過去のやり方がいつまでも通用するとは限りません。基本ソフトを長年更新しなければ、パソコンの操作性は高まりません。同じように、自らの考えかたややり方を絶えず更新していかないと、時代の変化から取り残されてしまうでしょう
(3)自信がない
最近、「自己肯定感」の低い人が増えています。「自分にはできっこない」「無理」「難しい」という発想は、チャレンジする意欲を削ぎ、成長に歯止めをかけてしまいます。
(4)自分磨きをしない
「成長したい」と思うだけで成長できるならそれほど楽なことはありません。でも成長するためには、それなりの努力が必要です。農作物でも、土づくりや肥料、水やり、害虫対策などの営みをしなければ収穫はできません。自分磨きのための努力を日々継続しないと成長できないのは自明です。
(5)他責の考え方
人間には防衛本能がありますので、自分を守るために他責になりがちです。でも、うまくいかない要因を他にばかり求めていると、自分の誤りや課題に目を向けること(=自責)がなくなるので、結果として成長が止まってしまいます。
成長するために必要な他者からの支援
大人が成長するためには、5つの要因の逆のことを実践すればいいわけですが、自分一人で取り組むのは意外と難しいものです。だからこそ、他者(上司、先輩、家族、友人、コーチ)の力を借りて、フィードバックやコーチングを受けることが大切です。
そのために、まず自身の成長に力を貸してくれる人的リソースがどれだけ存在するのか、現状チェックから始めてみましょう。
的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所 人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。