若手社員のための話し方と挨拶の基本
2021年3月17日更新
若手社員には、自ら進んで挨拶する習慣や、正しい話し方をきちんと身に付けてもらいたいものです。そうした社会人としての基本をマスターすることが、彼らのさらなる成長につながります。
なぜ挨拶が必要なのか?
新入社員の導入研修で、ビジネスマナーとしてまず教えられるのが「挨拶」です。ではなぜ挨拶が重要なのでしょうか。
そもそも挨拶は部下からするもの?
一説によると、挨拶はもともと「自分が相手に対して敵意を持っていないことを表すための言葉」だったそうです。そして本来は「立場が下の人間」から「立場が上の人間」に対して行うものです。人間同士という意味では平等ですが、社会には上下関係があります。基本的には「目下の人」が先に「目上の人」に対して挨拶をしなければなりません。若手社員には、まずそうした社会の原則を改めて理解してもらう必要があります。
また、仕事の経験が浅い若手社員にとって、上司の指導や先輩からの助力を得ずに課題を解決し、仕事をやり遂げるのはなかなか難しいものです。周りからの支援を得るためには、まず自らが職場で愛され、お客様に信頼されるような言動を心がけることです。その第一歩が「きちんとした挨拶ができる」であることは間違いありません。そういう意味でも、若手社員といわれる間に、自ら進んで挨拶をする習慣を身に付けることが極めて重要なのです。
上司の挨拶には大きな意味がある!
一方、上司から部下に挨拶をすることにも大きな意味があります。挨拶や声かけを通じて、上司がまずは部下の存在を認め、部下が「自分は認められている」「ここには自分の居場所がある」と思えることから人間関係が始まります。若手が挨拶をしているのに、上司のほうが反応もしないようでは、上司部下間の信頼関係の構築は難しいでしょう。やがて若手も挨拶をしなくなり、職場の雰囲気も当然悪くなっていきます。実際、強いチームをつくり、成果を上げている管理職ほど、自分から部下に挨拶をしているものです。
信頼される話し方
挨拶とともに大切なのが話し方です。特に目上に対する敬語や正しい言葉づかいができるかどうかで、その人の印象が変わってくるものです。若手社員には、日頃の話し方や言葉づかいについて、研修などの機会を設けて振り返ってもらう必要があるでしょう。
周りの印象を変える「きれいな言葉づかい」
正しくきれいな言葉づかいができれば、周りの印象も変わります。ただ、そう難しく考える必要はありません。たとえば、日頃使っている言葉を見直し、少し丁寧に言い換えるだけで、大きく印象が変わってくるものです。
具体的な言い換え例を、PHP通信ゼミナール『正しくきれいな話し方・書き方』のテキストからいくつか抜粋してご紹介しましょう。
「こっち」→「こちら」
「あっち」→「あちら」
「そっち」→「そちら」
「人」→「方」
「男」→「男性」
「女」→「女性」
「もらう」→「いただく」
「ちょっと」→「少々」
書き言葉と話し言葉を使い分ける
少し上級編になるかもしれませんが、同じ意味の言葉でも、書き言葉では「漢語」を使って簡潔に表現したり、話し言葉では「和語」を使って柔らかく表現したりする方法があります。ケースに応じて上手に使い分けたいものです。
漢語(書き言葉向き)/和語(話し言葉向き)
「ご配慮」 / 「お心配り」
「ご協力」 / 「お力添え」
「ご通知」 / 「お知らせ」
気を付けたい「失礼な表現」
日ごろ使っている言葉で相手に失礼な表現がないかどうかも要注意です。あからさまにいうと失礼にあたる言葉は、次のように言い換えます。
「業者の人」→「関係会社の方」
「下請けの人」→「協力会社の方」
「太った人」→「恰幅の良い方・ふくよかな方」
「やせた人」→「細身の方・スリムな方」
「仕事が遅い」→「緻密な・慎重な」
「クッション言葉」で印象をやわらげる
ビジネスの現場では、相手に何かをお願いしたり、あるいはお断りをしたりしなければいけないことがあります。そうした場合、適宜「クッション言葉」を使うことで、相手に与える印象をやわらげることができます。
「恐れ入りますが~」
「申し訳ございませんが~」
「お手数をおかけしますが~」
また、何らかの意見を相手に伝えたりする場合、次のような言葉を添えることで「押しつけがましさ」をやわらげることができます。
「ご承知のように~」
「ご承知と存じますが~」
「すでにお聞き及びと思いますが~」
「質問形」で丁寧に
先方に何かを依頼する際には、「質問形」にすることで丁寧に感じられ、相手にかかる圧力を弱めることができます。「質問形」には表現の仕方が何段階かあり、例えば「来てください」という依頼の質問形には次のようなバリエーションがあります。下に行くほど敬意が高まっており、最後の二つには「クッション言葉」も添えています。
「来てくださいますか?」
「お越しくださいますか?」
「お越しいただけますでしょうか?」
「ご足労をおかけいたしますが、お越しいただけますか?」
「ご足労をおかけして恐縮でございますが、お越し願えますでしょうか?」
相手に好感を与える話し方
同じ内容のことを伝えるにしても、後ろ向きな言葉を用いるか前向きな言葉を用いるかで、相手の受け取り方はまったく変わってきます。次の例文をご覧ください。
A「部長の印がないので手続きできません」
B「部長の印があれば手続きできます」
どちらも部長の印がないために、現時点では何らかの手続きができないことを話していますが、Aは否定的で冷たい感じがするのに対して、Bは相手を否定することなく解決方法をうまく伝えています。何を伝えるにしても、このように「前向きの姿勢」で話すことで、気持ちよくコミュニケーションとることができるのです。
新入社員、若手社員に求められる挨拶や正しい話し方について解説してきました。昨今、テレワークの導入などによって、コミュニケーションはますます難しくなってきています。人事部門としては、まずは若手社員に社会人としての基本を身に付けてもらい、周りに愛され、成長できるように、教育施策をデザインしていきたいものです。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『正しくきれいな話し方・書き方』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。