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成長したいのにできない若手社員を自律行動型の人材に育てるには?

2021年11月24日更新

成長したいのにできない若手社員を自律行動型の人材に育てるには?

昨今、若手社員の育成は企業の重要課題の一つとなっています。自己肯定感が低く、成長実感がもてない傾向にある彼らの成長を、どのように促していけばいいのかについて解説します。

INDEX

企業も個人も「必要とされる存在」かどうかが問われる時代

2020年から長く続いたコロナ禍によって、世の中は大きく変わりました。特に産業界では「仕事観」が著しく変化したように思います。すなわち「エッセンシャルワーク」なのか、そうではないのかという価値基準で、あらゆる業種が2つのグループに分類されてしまったのです。エッセンシャルワークとは「社会生活を維持するうえで、あるいは人々が生きていくうえで、なくてはならない仕事」という意味です。具体的には食料の生産販売、医療製薬関連、マスク等衛生用品の製造販売、さまざまな物資を運ぶ物流業、ネットビジネスを支える通信関連などがあげられます。

世界が変わった影響でエッセンシャルの度合いが低くなってしまった業種については、変革し、イノベーションを起こしながら、再び「社会に必要とされる存在」になっていくことが求められています。また会社だけでなく個人レベルでも、「市場価値の高い人材」に成長し、「あなたがいないと困る」といわれるような存在になることが、ビジネスパーソン一人ひとりに求められているといえるでしょう。

若手社員の「成長志向」と「成長実感」にはズレがある

「必要とされる人材」になるためには、当然その人自身が成長していかなければなりません。しかし「成長したい」と思っている人が、必ずしも「成長した」という実感をもっているわけではないようです。『働く10,000人の就業・成長定点調査2021』(パーソル総合研究所)によれば、8割強の就業者は「成長したい」と考えていますが、自分の「成長を実感」している人は5割強にとどまっています。つまり3割近くの人が「成長したいのに成長できない状態」にあるという調査結果が出ているのです。

私が日々、社員教育の現場で若手社員に接していて感じることは、成長したいのに成長できないという若手社員には、次の5つの問題点があるということです。

1)目的・目標があいまいで、何となく今日一日を生きている。
2)過去のやり方や自分の考え方に固執し、新しい方法や考えを取り入れることができない。
3)自己肯定感が低く、自信がないので一歩が踏み出せない。
4)スキルアップの勉強に取り組むこともなく、自分磨きをしていない。
5)うまくいかない原因を自分以外の誰かや社会のせいにする「他責」の考え方をもっている。

「自分経営者」とは?

それでは「必要とされる人材」とは、具体的にどのような人をさすのでしょうか。私どもPHP研究所では、そうした人材を「自分で自分を経営できる人」であると定義づけています。自分の人生を他人任せ、会社まかせにするのではなく、雇用された会社員であっても、自営業者のような感覚をもって、自分の責任において仕事を遂行するということです。こうした人材を「自分経営者」と呼びたいと思います。

松下幸之助は、このような考え方を「社員稼業」という言葉で表現しました。

『社員稼業』という言葉は、あるいはききなれない言葉かとも思うが、その意味するところ、一言でいうなら、会社に勤める社員のみなさんが、自分は単なる会社の一社員ではなく、社員という独立した事業を営む主人公であり経営者である、自分は社員稼業の店主である、というように考えてみてはどうか、ということである。(中略)そうすれば、単に月給をもらって働いているといったサラリーマン根性に終わるようなこともなく、日々生きがいを感じつつ、愉快に働くこともできるようになるのではないか

出典:『社員稼業』松下幸之助著(PHP研究所)

つまり「一人ひとりの社員は、社員という独立した事業を営む主人公であり、誰もが経営者である」という考え方です。会社に所属している限り、今やっている仕事は会社から「与えられたもの」かもしれません。しかし気持ちとしては、その与えられた仕事を、お客様から注文を受けた自営業者のつもりで取り組むのです。そうすることで仕事に「やりがい」が生まれ、同時に「やらされ感」という苦痛から解放される、という考え方です。

「自分経営者」になるための5つの原則

上記の「成長したいのに成長できない若手社員」の5つの問題点を解決することで、「自分経営者」に近づいていけると考えています。すなわち「目的をもつ」「柔軟性をもつ」「自分の強みを知る」「自分の強みを強化し続ける」「自主責任で考える」ということです。これをもとに、次の「『自分経営者』になるための5つの原則」をご紹介します。

一、使命を正しく認識すること
これは「目的を明確にする」ということです。自分のキャリアにおける目的、日々取り組む仕事の目的などを明確にすることで、自分の内側から前向きなエネルギーを引き出していきます。

二、素直な心になること
偏った考えに固執せずに「柔軟性をもつ」ということです。変化の激しい世の中で、過去のやり方や自分の考え方にこだわりすぎると、判断を誤る可能性があります。何にもとらわれない「しなやかな心の状態」で、物事を見て考えていくのが理想です。

三、人間観をもつこと
近年は自己肯定感が低い若者が増えていますが、自分自身の「強み」を知ることで、自分を肯定できるようになるはずです。「肯定的な人間観をもつ」ことも、前向きなエネルギーにつながります。

四、自然の理法に従うこと
自然の理法とは、「人間の力を超えた大きな力によって世の中が支配されている」という意味です。例えば「当たり前のことを当たり前にやれば(=凡事徹底)物事はうまくいく」というのも、自然の理法の一つ。凡事徹底で自分の強みを強化し続ければ、人は必ず成長し、やがて「必要とされる人材」になれるはずです。

五、自主責任意識をもつこと
「自分の人生は自分の責任で歩んでいく」という覚悟と自覚のことです。「本気スイッチ」を入れて課題に取り組むことで自己成長が図られ、「自分経営者」に近づいていくことができます。

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使命を正しく認識すること

上記の5つの原則のうち、3つを抜粋して、もう少し詳しくご説明しましょう。
はじめに「使命を正しく認識すること」について、松下幸之助は、「人にはそれぞれ使命があり、それを素直な心で見つけて自覚することが大事」ということを強調していました。また元スターバックスコーヒージャパンCEOの岩田松雄さんは、「企業のミッション(使命)は世の中をよくしていくこと。個人にとってもミッションは大事であり、それは個人が生かされている意味である」ということをおっしゃっています。本当の意味で生きがいのある生活、やりがいのある仕事、日々成長できている実感をもつためには、自分自身の使命を知ることが不可欠です。
また、組織には組織のミッションがあり、個人には個人のミッションがあります。価値観多様化の時代において、組織のミッションを個人に無理に当てはめようとするのではなく、両者の接点を見つけるための「すり合わせ」を行っていくことが大切です。

人間観をもつこと

内閣府の令和元年版の「子ども・若者白書」によると、「自分は役に立たないと強く感じる」という問いに対して、17.7%が「そう思う」、34.0%が「どちらかといえばそう思う」と回答したそうです。つまり約52%の若者が「自分は役に立たない」と感じており、この自己肯定感の低さは先進国の中でも際立っているそうです。これでは社会や人に対してアクションを起こそうとする動機づけが不十分になり、難しいことにチャレンジしようという意欲ももてないのではないでしょうか。しかし、どんな人にも必ず何らかの強みはあるはずであり、それに気づいて伸ばしていくことが非常に重要です。

松下幸之助は次のような「人間観」をもっていました。

  • 人間は磨けば輝く「ダイヤモンドの原石」のような存在である。
  • 役に立たない人は一人もいない。
  • 人にはそれぞれ異なる天分が与えられている。
  • 人は、自分の能力、天分を発揮できれば、やりがいと感じる。
  • 人は、自主的に事に当たる場合にやりがいを感じる。

若手社員がこのような人間観をもつことができれば、たとえ今は未熟であっても、自己肯定感の低さから抜け出し、何事に対してもモチベーションを高めていけるのではないでしょうか。

自主責任意識をもつこと

もうひとつ重要な要素は、仕事や人生はもちろん、自分自身の成長についても、自主責任意識をもって取り組んでいくということです。社会に出ると、学校とは違って、必要な物の考え方や知識などを懇切丁寧に教えてもらえるわけではありません。成長は人から与えられるものではなく、「自分で自分を成長させていく覚悟」をもち、自分の意志で課題に取り組むことが肝要です。

上記の「『自分経営者』になるための5つの原則」について、若手社員に一人で考えてもらおうとしても、難しかったり、限界があったりするでしょう。そこで大切になってくるのが「伴走者」の存在です。すなわち、1on1を通して上司や先輩から若手社員にフィードバックを行っていくということです。会社ぐるみでこうした取り組みを進めることで、若手社員の成長は大いに促されるはずです。

※本記事は2021年10月19日に開催されたPHPカンファレンス「1on1の失敗学」個別セッションでの講演内容から作成しました。

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PHP通信ゼミナール『仕事のやりがいを高め、自律的に成長するための「5つの原則」』はこちら

的場正晃(まとば・まさあき)
PHP研究所人材開発企画部部長
1990年、慶應義塾大学商学部卒業。同年PHP研究所入社、研修局に配属。以後、一貫して研修事業に携わり、普及、企画、プログラム開発、講師活動に従事。2003年神戸大学大学院経営学研究科でミッション経営の研究を行ないMBA取得。中小企業診断士。

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