中堅社員が果たすべき役割とは?
2023年3月 1日更新
中堅社員とは、おおむね20代後半から30代くらいの社員を指す場合が多いでしょう。ある程度経験を積んだ中堅社員には、与えられた仕事をこなすだけではなく、主体性を確立して自らどう行動すればいいのかを考え、上司の期待に応え、後輩や部下の指導も担っていくという役割を果たすことが期待されます。
INDEX
中堅社員は何年目から? 求められる役割は経験とともに変わる
中堅社員とは、一般的に入社3年目以降の役付前社員を指します。中堅社員になると、組織における役割は少しずつ変化していくものです。変化が現れるポイントとしては、次のような状況が考えられます。
- 後輩の面倒をみるようになった
- 上司から「どうするべきか考えてくれ」といわれるようになった
- 「君はどう思う」と意見を聞かれるようになった
- 「その件は君に任せるよ」といわれるようになった
- 他の部署の人と話す機会が増えた
- 同僚から仕事のやり方を相談されるようになった
中堅社員の退職は企業にとって大きな損失
中堅社員は、業績向上・組織活性化の実質的な担い手であり、企業の成長エンジンともいえる重要な存在です。近い将来のリーダー、管理職候補として、これまでとは異なる役割も求められるようになります。この時期にいかに主体性を確立するかが、今後のキャリア開発に大きな影響を与えます。こうした変化を中堅社員本人がしっかりと自覚し、経験に応じた役割を果たしていくことが大切です。
一方で、伸びる人材と伸び悩む人材の格差が顕著になるのもこの時期です。この時期に、マンネリに陥ってやりがいを感じられなくなったり、今後のキャリアに不安を感じたり、あるいは人間関係がうまくいかずに退職するケースも少なくありません。中堅社員がやりがいをもって仕事に取り組めるよう、一人ひとりの状況をしっかりと把握し、人員配置や教育などで支援をしながら定着につなげることが、人事部門の仕事といえるでしょう。
中堅社員の役割は「2軸」で考える
仕事における役割は、「仕事の内容」と「仕事の進め方」という2つの軸で捉える必要があります。
「仕事の内容」とは文字通りの意味であり、誰でも就業年数を重ねるとともにいろいろな仕事を経験し、できる仕事の幅が広がっていきます。職場では、さまざまな役割を果たせるようになるということです。
一方、「仕事の進め方」においては、「自分の仕事をしながら、同時に後輩の指導も行う」とか、「仕事のやり方自体を自分で考えて行う」といった具合に、より大きな役割を担いながら仕事に取り組むということが求められるようになります。
「役割を広げる」とはどういうことか
中堅社員には、組織やチームにおいて自分の役割を広げていくことが求められます。繰り返しますが、役割には「仕事の内容」と「仕事の進め方」という2つの意味があります。ですので、「役割を広げる」とは、「仕事の内容を広げる」ことと「仕事の進め方をレベルアップする」ことになります。
言い方を換えれば、いろいろな仕事ができるようになり、後輩の指導もできるようになり、仕事のやり方も自分で工夫できるようになり、他の部署との協力や調整もできるようになった人を「中堅社員」と呼んでいるわけです。
そして、中堅社員の役割を着実に広げていくことが、その会社の実力向上につながるわけです。
役割(職務)は、どのように決まるのか
中堅社員に自らの役割について考えさせるときに、そもそも組織における個人の役割はどのように決まるのかについて説明しておくといいでしょう。
組織とは「役割の集合体」であるといえます。役割は「職務」と言い換えることもできます。会社には通常いくつもの部署があり、それぞれが担当する役割(職務)を果たし、それらが連携することによって組織が成り立っているというわけです。
個人の役割が決まるプロセスは次のようになります。はじめに会社の目標があり、それをもとに各部門の目標が決められます。これによって各職場が受け持つ目標と職務が具体化し、その中で個人が分担する役割(職務)を決めていくわけです。この関係性を把握すれば、一人ひとりの役割や、その仕事をする意味・意義も理解しやすくなるでしょう。
「貢献対象」とは何か
すべての役割(職務)には、その人が行う仕事の結果や成果を提供する「貢献対象」が存在します。もっと簡単にいえば、その人の仕事の後工程が、その人の貢献対象です。
貢献対象は、同じ組織の中でもそれぞれ異なってきます。その人の仕事の後工程が上司や同僚なら、上司や同僚が貢献対象です。その人の仕事とつながっている他の部署の担当者が後工程なら、他の部署の担当者が貢献対象です。当然、販売や営業部門の人にとっての貢献対象は、商品を販売するお客様・取引先ということになります。
「貢献内容」とは何か
「貢献内容」とは、その人が貢献対象に提供している仕事の成果の中身のことです。要するに、その人の日々の仕事そのものを指します。後工程の人に貢献するためには、必要十分な品質の仕事を提供するのはもちろん、相手のニーズを把握し、相手が期待するものを提供するという姿勢が求められます。
「能力」とは何か
仕事における「能力」とは、「貢献対象」が求める「貢献内容」を提供するために必要な力であるといえます。具体的には、「業務上の知識やスキル」「提供するものについて分かりやすく説明する力」「問題発生時に素早く連絡し、対策を考え、必要に応じて協力を得ながら解決する力」などが挙げられるでしょう。
中堅社員ともなれば、それなりの能力を身につけ、貢献対象に十分な品質の貢献内容を提供していく役割を、着実に果たしていくことが重要だといえます。
中堅社員の役割自覚と役割期待とは?
中堅社員が自らの役割を果たすためには、自分の立ち位置を正しく知り、自分の役割を正しく認識しておかなければなりません。
役割認識の3つの側面
「役割自覚」とは、個々の社員が自分の役割だと思ってやっていることを指します。中堅社員には、本人が自覚している役割に加えて、上司や他の部門から期待されている役割(新たな工夫等)や、部下や後輩から期待されている役割(適切な指導等)なども考え合わせた3つの側面から真の役割を認識することが求められます。
人事教育部門や上司は、中堅社員を育成するうえで、そうした役割認識ができるように指導していくことが大切なのです。
「役割自覚」と「役割期待」との間にもしもギャップがあった場合、その社員は十分な役割を果たすことができません。上司からは「安心して仕事を任せられない」と思われ、後輩からは「説明が足りなくて何をすればいいのかわからない」と思われる可能性があります。
このギャップを埋めるためには、前述の「貢献対象」と「貢献内容」、「能力」を把握するとともに、それぞれの「仕事の内容」と「仕事の進め方」をレベルアップしていくことが必要です。その結果、中堅社員一人ひとりが組織における「役割」を果たせるようになるのです。
※本記事は、PHP通信ゼミナール『[新版]中堅社員パワーアップコース』のテキストを抜粋・編集して制作しました。
PHP通信ゼミナール
『[新版]中堅社員パワーアップコース』
自分自身の役割を正しく認識し、その役割を広げ、周囲と協働して問題解決する手法を学びます。
森末祐二(もりすえ・ゆうじ)
フリーランスライター。昭和39年11月生まれ。大学卒業後、印刷会社に就職して営業職を経験。平成5年に編集プロダクションに移ってライティング・書籍編集の実績を積み、平成8年にライターとして独立。「編集創房・森末企画」を立ち上げる。以来、雑誌の記事作成、取材、書籍の原稿作成・編集協力を主に手がけ、多数の書籍制作に携わってきた。著書に『ホンカク読本~ライター直伝!超実践的文章講座~』がある。